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音質テスト | |||||||||||||||||||||||||||
| 試聴ソフト
試聴機材 | |||||||||||||||||||||||||||
XA160.5 ・ X600.5 | |||||||||||||||||||||||||||
| PassのフラッグシップモデルX200.5とと入れ替わりにXA160.5とX600.5が届けられた。プリアンプは引き続きXP-20を使ったが、CDプレーヤーはAIRBOW SA15S2/Masterに入れ替えた。最初にXA160.5から鳴らしてみたが、電源を入れてから暖まるまでには1~2時間程度かかるようだ。電源投入直後は音が硬く冷たいが、徐々に柔らかく色彩が豊富になって行くことでウォーミングアップの状況が聴き取れた。 XA160.5 まず、最初に古いJAZZから聞いてみた。 + 最近展示機として導入した、Musikelectronic 「ME25」の追加テストをかねスピーカーとの価格の釣り合いが取れないのを承知で聞いてみるとこれが実に良かった。まるでオーディオ機器が存在しないかのように古いJAZZが生々しく鳴る。レコードを超えると行っても過言ではないほど、温かく滑らかで艶っぽい音が出る。スピーカーが小さいにもかかわらず、重心が十分に低く中域にも驚くほどの厚みが感じられる。高域も濁らずに、すっきりと澄み切っている。とても心地よいバランスで往年の名演奏が聞ける。 ビリーホリデイの声には張りと透明感があり、実に良い感じで朗々と鳴る。シンバルはキリリと伸びやかで、凜としっかり響く。金管はまろやかで厚みがあり、ちょっと木管楽器のように鳴る。XA160.5とME25が醸し出す穏やかな時間の流れに身を置くと、まるで録音が行われた時代まで時間が戻ってしまったかのように錯覚するほど体の芯から穏やかになる。古いJAZZは良い。戦争から解き放たれた気持ちが大きく弾け、自由を謳歌できる喜びに満ちた時代の香りがする。実にお洒落で、実に艶っぽい。生きている喜びが伝わってくる。生きにくい今の時代にこそ、1960年代のJAZZを聴くべきなのかも知れない。今回テストしたこの組み合わせは、当時の音楽とマッチングが素晴らしく、いつまでも聞き惚れていたい気持ちになった。 + 続いてモノラル録音のクラシックを聴いてみる。1952年に録音されたフルトベングラー指揮、ウィーンフィル演奏の「田園」は、私が特に好んで機器の試聴に用いるソフトだ。 私が逸品館を始めた当初は私もまだそれほど本格的な音楽を聞いたことはなく、聞いているのはもっぱらPOPSが中心でたまにJAZZを聞く程度だった。その頃、気に入っていたスピーカーはDIATONEで組み合わせるアンプはAccuphase、CDプレーヤーはSONYだった。今ならそれがとんだ勘違いだと分かるが、当時それが最高と信じて疑わなかった。経験不足から来る無知とは、怖いものだ。 当時はこの古いソフトやRogeras LS-3/5aのようなレンジの狭いスピーカーが、なぜ高く評価されるのか全く理解できなかったことを今も良く覚えている。当時は自分が理解できないものを否定し、攻撃したりもした。若気の至りと言ってしまえばそれまでだが、正しい経験を積めばやがて理解が広がる。分からなかったものが何であるのか?分かるようになる。それが成長だ。Pass XA160.5とMusikelectronic ME25の組み合わせでフルトベングラーを聞いていると、そういうオーディオ遍歴が脳裏をよぎる。やっとたどり着いた音、たどり着けた世界が目の前で鳴っている。 ピアニシモでは空間が小さくなり、フォルテでは空間が大きく広がる。音場は丸く大きく広がり、ソフトがモノラルであることを微塵も感じさせない。弦の音は滑らかで温かく、フルートやピッコロの音は実にキュートだ。田園に日が差して夜が明け、生き物たちが目を覚まし、静かな朝が始まって行く。その一連の風景がまるで目に見えるように感じるほど美しく優雅な演奏。オーディオを趣味とするならば、いつかはこういう世界に気づいて欲しいと心から願ってやまない。 + XA160.5の試聴の締めくくりに最新型のスピーカーを組み合わせ、レンジの広い最新録音のソフトを聞いてみた。 音が出た瞬間の第一印象は「普通」。HEGELのように驚くような音は出ない。LUXMANの高級プリメインアンプで鳴らしていると言われれば、納得してしまいそうな「普通」の音だ。 高域は少し丸くまろやか。低域もすごく低いところまで伸びているのではなく、適度な部分から消えて行く様な感じ。しかし、オーディオ的な歪みは、全く感じられない。良い音を出すアンプではなく、嫌な音を出さないアンプと評価すればよいのだろうか、実に良く躾けられた製品だ。出しゃばるところはなく、それでいて主張すべき部分はしっかりと主張する。 耳で聞ける範囲を探っても、価格を納得させるほどの「驚き」は感じられない。しかし、音楽のストーリーは実にうまく展開する。サントラを聴いているとまるで映画を見ている気分で、脳裏にシーンが浮かんでくるようだ。時間の流れのコントロールに優れると言えばいいのだろうか?雰囲気の再現性に優れ、音楽のストーリー性と雰囲気が体に伝わってくる。音楽を聞くという行為が、何かとてつもなく贅沢なことをしているような気分にさせられる。あまり体験したことのない、不思議な音だ。 XA160.5 総合評価 このアンプが届けられ音を出したときに、入れ替わりに返却した「XA200.5」よりも音が素直で好ましいと感じたが、その印象は最後まで変わらなかった。XA160.5の音からは、280万円という超弩級パワーアンプを鳴らしているという感覚はあまり感じられない。粛々とそして淡々と音を出す。車に例えるなら、10Lの12気筒エンジンをアイドリングで回転させ、アイドリングのまま車を時速100キロで路面を滑走させるような感覚と言えばいいのだろうか?とにかく贅沢な感覚だ。この感覚は、きっと高級なアンプでなければ出せないのだろう。その高級かつ重厚で行き届いた素晴らしくケアフルな時間を手に入れられると考えれば、このアンプの存在価値は非常に大きいと言える。少なくとも私はその世界を否定できない。
XA600.5 + ソフトはそのままにして、パワーアンプをXA160.5からX600.5に入れ替える。 X600.5は、通電直後から澄み切ったレンジの広い音を聞かせXA160.5とは違う音色をアピールする。しかし、時間が経過する共に温度感が上昇し、徐々にXA160.5の音色に近づいて行く。変化を聞き取りながら音が安定するまで、タイタニックを2回リピートして試聴を開始した。 XA160.5が雰囲気の深い、どちらかと言えば「わかりにくい高音質」だったのに対し、X600.5はわかりやすい高音質に仕上がっている。アンプが暖まり温度感が上昇しても、高音の澄み切った感じや切れ味の鋭い感じは失われない。低音もリジッドに深く鳴り、大型のパワーアンプの音だと瞬時に分かる。しかし、XA160.5もX600.5も基本的な音調はほとんど変わらず、Pass Labらしい安定した音でスピーカーを駆動する。大きな癖もなく、やはり嫌な音は全く出さない。必要にして十分。前回聞いたXA200.5との比較では、回路が単純なためか音の濁りがより少なく、反応も早いように感じられる。 出力が低下したことによる「マイナス点」がほとんど感じられないことから、XA200.5よりもX600.5がお薦めかもしれない。至極普通の音でThe Musicが軽やかに鳴る。HEGALは癖がありそれが面白く感じたが、Passは癖が少なく上品な音で、組み合わせるスピーカーや鳴らすソースを選ばないように思える。また、今回のテストではケーブルや電源は「最低限」のものしか使っていないので、アクセサリーを奢ることで性能はまだまだ高められるだろう。緻密で癖が少ない高性能なアンプという印象が残った。 + 今度はスピーカー入れ替えず、The Musicのままで「田園」を聞く。 鳴り方が少し現代的になるが、このソフトの持つ温かさやオーケストラレーションの美しさは十分に再現される。音の広がりも十分で滑らか。スィートな音でシンフォニーがウィーンフィルらしく鳴る。もちろん、大型パワーアンプらしいスケール感も感じられる。クラシック系のソフトの再生は、全く問題ないことが確認できた。 + ここでXA160.5との違いを聞くために、スピーカーをMusikelectronic ME25に変える。 再生周波数レンジは狭くなるが、もともとソフトのレンジがそれほど広くないので、スピーカーのサイズの違いほどの差は感じられない。ただ、細かい音の分解能力や音の広がりは随分と減少してしまった。 XA160.5とME25の組み合わせでは、オーディオ機器の介在が全く感じられない自然な音が聞けたが、X600.5はその能力に限りのあるME25を無理矢理それ以上の音で鳴らしている感じがする。もちろん、悪い音ではないのだが、先ほどのマッチングが絶妙に優れていたこともあり、弦の音が少し硬くなる、ホールの響きが少し硬質になる、管楽器の音が少し平面になる(丸い音から直線的な音に変化する)など、どうしてもオーディオ機器の存在が伝わってくる部分がある。 XA160.5は柔らかくまろやかな音で、X600.5はそれよりも広帯域で解像度が高いが、それがソフトとのマッチングで時には「背伸びをさせている」と感じられることがあるようだ。優劣ではなく、好みで選ぶべきだ。それぞれに、それぞれの良さがあった。 + Compact JAZZ Omnibus X600.5の試聴ではビリーホリデイを聴かず、同じCompact JAZZのオムニバスアルバムを聴いてみた。 「田園」を聞いたときにも感じたことだが、X600.で古いソフト(レンジの狭いソフト)を鳴らすと「スピーカーが無理をしている」ように感じられる。「ソフトの粗が出ている」と言い換えても良いが、すべてを一定の枠の中で見事に音楽的に再編成してソフトを鳴らしたXA160.5に比べ、X600.5はその枠を広げすぎて破綻している部分が表面化しているように聞こえることがある。 古いソフトやTannoyのような昔ながらのスピーカーを鳴らすには、XA160.5がマッチし、新しいソフトやMAGICOのような現代的なスピーカーを鳴らすには、X600.5がマッチするように感じられる。また、アルバムに収録された音楽を「音楽的」に鳴らしたのがXA160.5で、それぞれの録音状態の違いを明らかにしたのがX600.5だった。やはり優劣ではなく、好みの問題だろう。 + Compact JAZZ Omnibus 最後にソフトはそのままにして、スピーカーをThe Musicに変えてみた。 ME25では聞こえなかった細かい音が聞こえるようになり、一つ一つの音の分離も大きく向上した。低音の量感や厚みもグンと良くなる。スピーカーのサイズや価格が全く違うのでそれは当然のことなのだが、Passのパワーアンプが良くできていると思うのは、スピーカーを変えても楽器の音色がほとんど変わらないことだ。 通常はスピーカーを変える、あるいは組み合わせるアンプを変えることで、同じ楽器とは思えないほど音色が変わってしまうことがある。例えば[A]という装置では、ヤマハの音に聞こえたピアノが[B]ではカワイに聞こえるというようにだ。しかし、XA160.5/X600.5は、スピーカーを変えても楽器の音色がほとんど変わらない。もちろん音は変わるのだが、この音色が変わらないというのは音楽を正しく再現するための非常に重要なポイントになる。なぜならば、コンサートで座席を変えれば音は変わるが音色は変わらない。座席位置によって同じピアノの音が、ヤマハになったりカワイになったりすることはあり得ない。そういう意味でPassの音は音楽的に非常に信頼できる。 今回はMusikelectronic ME25という小型スピーカーとVienna Acoustics The Musicという大型スピーカを使ってそれぞれのアンプを試聴したが、スピーカーを変えても2機種のパワーアンプの基本的な音は全く変わらなかった。スピーカーの性能に比例してアンプの性能が発揮され、「よりよい音」が聞けるのがX600.5だ。現代的な高性能アンプをお探しならX600.5が最適だ。しかし、XA160.5のビンテッジ的にまろやかで温かい音も捨てがたい。Passは悩ましく製品を作り分けるメーカーだ。 | |||||||||||||||||||||||||||
XA100.5 ・ X260.5 | |||||||||||||||||||||||||||
| XA160.5とX600.5を返却し、入れ替わりにX100.5とX260.5が届けられた。出力画小さくなるに比例してアンプの重量は軽くなる。それでもまだ約30kg強あるが、やっと一人で動かせる重さに減量された。今回届いた2モデルのアンプは発売が新しく、エージングもまだ十分ではないとのことだったので、24時間以上音出ししてから試聴した。また、試聴スケジュールの都合からXA100.5とX260.5試聴の前にLuxmanの新製品L-550AXの試聴を挟まざるを得なかった。そのためXA160.5X600.5との厳密な聞き比べができていないかも知れないので予めご承知頂きたい。 XA100.5 + Luxman L550AXを試聴したのと同じCDプレーヤーとスピーカーを使い、アンプだけ入れ替えてXA100.5+XP-20の試聴を開始する。直前まで聴いていたL550AXは実売で30万円を切り、つなぎ替えたXA100.5+XP-20の価格は300万円を超える。第一印象では、10倍になった価格に見合う情報量や音質は得られていないように感じられる。しかし、しばらく聞き続けていると、雰囲気の良さがじわじわ伝わって来た。 このアンプには良い意味で、高級品らしい主張がない。とても自然で耳あたりよく音楽を奏でてくれる。解像度もそれほど高く感じられないが、じっくり耳を澄ませて聞けば「隠れなければならない音がうまく隠されているだけ」だと分かる。ハッキリとは聞こえなくてもそこに音があるのが分かる。聞こえないわけではなく聞きに行かなければ聞こえない、いわゆる「ちょっとだけよ」の世界だ。聞こえるか聞こえないかの狭間にある音は、自分の想像で美化できるから、「生」以上に「美しい音」で聞くことができるのだ。想像(思い込み)以上に美しい音など、このようには存在しない。 XA100.5は、現実と空想の狭間の世界を再現する。高い実在感を持っているが、「下卑た音(汚い音)」は一切出さない。ある種のゆとりを感じるのだが、この音を言葉に代えるのは難しい。真の高級感とは、こういう感覚なのだろか?もちろん、こういう音には好き嫌いはあるはずだが、それぞれの素材を強く主張させることなく見事にまとめ上げる「割烹料理のように完成した美(バランスの取れた旨味)」をその音に感じる。 春風のように柔らかく、体と心を包んで癒してくれる音。聞いていると幸せになれる音。いつまでも浸っていたくなる音。XA100.5は、今回テストしたPassの中で一番のお気に入りになった。 + 美しい。これほど美しく優しい音でこのCDを鳴らしたアンプはこれまでになかった。 お酒であれ、料理であれ、突き詰めると「まろやか」になるが、その最上級の「まろやかさ」と「旨さ」、「深さ」をこのアンプは持っている。CDプレーヤーやスピーカーとの相性も良いのだろう。体の芯から癒されるような素晴らしい音だ。生演奏から「灰汁」を抜き、「味わい」だけを残したような音。確実に「生演奏」を超える、この美しい音なら万人が「良い」と思うだろう。 弦は優しくすべるように滑らかだが、時折鋭く心にすっと切れ込んでくる。主旋律と副旋律の再現性や絡みも抜群で、対比するメロディーが実に鮮やかだ。ヒラリー・ハーンのバイオリンは軽やかに宙を舞う。ベースラインの音は、地の底からわき上がるようなゆとりと力を持つ。静かに、雄大に、たおやかな時間が流れていく。思わず仕事を忘れて、聞き入ってしまった。 + こういう激しいソフトはこのセットには合わないだろうと思い、ちょっといたずらで掛けてみた。 ところがどうだろう?これがなかなか悪くない。確かにこういうソフトに相応しい「BAD」な感じはない。音に汚れがなさ過ぎるのだ。柔らかい音だが高音はしっかりと切れ味があってハイハットが空を切る。低音もパンチがあって、腹にずしんと響く。自然に体が動き出すような楽しい音。底抜けに明るく、毒がない音。人生に何の苦しみも、悩みもなく、100%の幸せに恵まれた人たちが集う、底抜けに陽気で楽しいパーティー。美しく滑らかなこの音からは、ハイソでゴージャスなパーティーが連想される。マイアミの温かさと、ラスベガスのゴージャスさを合わせたような、大人のためのワンダーランド。思わず、そんな夢の世界を思い浮かべてしまった。 + スピーカーをThe Musicに変えて、ソフトを逆の順で試聴する。 すごい!BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)とは、世界がまるで違う。低音の量感/力感とパンチ力。高音の切れ味の鋭さと繊細さ。動きの鮮やかさ。ドーンと来てキラキラと消える、打ち上げ花火のような鮮やかさでダンス・ミュージックが鳴る。 低音がきちんと出るけれど鈍い音ではない。大型アンプならではの底力を感じさせるエネルギー感を持ち、膨らみやすいThe Musicの低音をきちんと前に押し出し、無駄な余韻なくきちんと止める。ごりごりとした硬い音ではなく、弾力とパンチ力を兼ね備えた低音だ。大型アンプにありがちな「鈍さ」を全く感じさせないのが素晴らしい。 高音は滑らかだが、切れ味は鋭い。ボーカルは濁りがなく透明で、すっきりと美しい。引き込まれるような楽しい音。弾けるようなパワー感と、すかっとした切れ味が両立する理想的な音だ。 SST Ampzzila+Ambrosiaの組み合わせに感じる「イタリア系の底抜けに明るく鮮やかな鳴り方」とは少し違う。もう少し湿り気があり、雰囲気も柔らかい。適度な響きも心地よく、ゆったりとしたテンポでダンス・ミュージックが鳴った。 + スピーカーを変えても音調は全く変わらない。それは他のPassパワーアンプにも共通する美点だと思うし、回路設計の優秀さの証拠だろう。 BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)で聞いていたのがCDで、スピーカーをThe Musicに変えるとそれがSACDに感じられるほど一気に情報量が増加する。低音の響きは部屋を満たし、バイオリンは甘く切なくメロディーを奏で、クリアで美しい旋律に心が翻弄される。とても美しく甘美な音だ。 最初にこのアンプを聞いたときには、情報量はL550AXの10倍にはならないと評価したが、The Musicで鳴るこの音を聞いているとその評価を取り消したくなる。雰囲気だけではなく、情報量もかなり多い。まるで生演奏を聴いているような気分でSACDを聞くことができる。このアンプはすごい。BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)がその情報量をきちんと再現することができなかっただけだと、The Musicが教えてくれた。 + BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)で聞いていたときはBGM的に心地よかったが、スピーカーを変えると演奏にすごみとメリハリが出る。より本格的な演奏に変化したこの音は、BGMとして聞き流せない。 X100.5の美点は「自然で無理のない音が出る」ことだが、それは今回テストしたPassのアンプの中でも群を抜いている。あらゆる音にストレスがなく、あるべき音があるべきタイミング、あるべき音質で確実に出てくる。その安心感は絶大で、リスナーを音楽に引き込む強い力を持っている。 最近聞いたセパレートアンプでは、SST Ampzilla 2000とAmbrosia 2000が気に入ったが、XP-20とXA100.5のセットもそれに劣らず素晴らしい。この音を聞かされれば、300万円を超える高価な価格も納得できる。XA100.5のクリアで美しく、滑らかだけれど切れ味の良い「シルキーな高域」は、とても好みに合う。 + XA100.5と1028BEの組み合わせもなかなか良い。 BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)に比べるとメリハリが出て、音の芯がしっかりする。ウッドベースの音程がハッキリして、ピアノのアタックの衝撃も響きの厚みもきちんと再現される。ノラ・ジョーンズの声にも張りが出る。全体的に柔らかな音であることは変わらないが適度なメリハリと厚み、豊かさが加わって演奏の実在感と深みや躍動感が大きく向上する。それでもノラ・ジョーンズがなぜかパリジャンヌのように感じてしまう所にFocalの素性が現れる。決して濃すぎることはないが、フランス料理のようにこってりとして味わいが深い。 + BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)やThe Musicと比べると空間に少し濁りが感じられる。Vienna Acousticsのあの透明感は、ウィーンの音なのだろう。 1028BEは中低音に厚みがあって、温かく濃い。チーズやクリームのようなこってりと脂ののった音だ。バイオリンの音も少しクリーミーで、Vienna Acousticsのようなすっきりと透明な音ではない。もちろんそれは傾向の違いでしかなく、十二分に素晴らしい音でヒラリー・ハーンのバッハが鳴る。 同じ楽譜を異なる楽団が演じているような雰囲気。どちらもレベルはすごく高いが、その解釈には明らかな違いが聴き取れる。同じソフトを「異なるバージョンで再現できる」という音楽の聴き方、オーディオの楽しみを知ってしまうと「原音」とは何だろう?と考えさせられる。でも、そんなことはどうでもいい。楽しく音楽が聴けることが、一番なのだから。 + こういう打ち込みが主体の音楽では、、1028BEのベリリウム・ツィーターの良さが生きてくる。 エッジが鋭く、透明感が高く、澄み切った高音が高価な装置で音楽を聞いているという満足感を与えてくれる。低音もリズム感があって、密度も高い。ボーカルの表現力、表情は豊かで、中音にはFocalらしい適度な甘さと厚みが感じられる。まろやかでセクシーな声だ。 The Musicでは体が動かずにいられなかったが、1028BEはそれよりやや落ち着いた音でダンス・ミュージックを鳴らす。体で感じるのではなく、鑑賞できる音でダンス・ミュージックが明るく楽しく鳴る。弾け切らずに適度な理知を残し、傍観者でいさせてくれるこういう鳴り方も悪くないと思った。
オーディオ機器にかかわらず、工業製品は全般的に性能が上限に近づけば近づくほど価格と性能が直線的な比例関係ではなくなってしまう。絶対とは言えないが、「中堅機」のコストパフォーマンスが高い。Passの製品もその例に漏れず、100.5と260.5の音が良い。このテストを行っている時、エレクトリから電話があって「今までの結果」を伝えたところ、100.5と260.5の設計が最も新しいと言うことだった。最新モデルの音質が、従来モデルよりも音質がブラッシュアップされていることも十分に考えられる。実際試聴した感じもその透明感の高いすがすがしい音に「新しさ」が十分感じ取れた。 XA260.5 + XA100.5と比べるとX260.5は、幾分音がさっぱりしている。XA100.5が精細に描かれた油絵なら、X260.5はアクリル絵の具で描かれた絵画のようだ。どちらにも良さがあり、甲乙は付けがたい。 X260.5もPass製品の例に倣い、音は非常に自然で無理な誇張が感じられない。音楽を弄らないこういう自然体の「高級感」は、心と体に心地よい。低音はゴリゴリせず、十分低い周波数まで伸びている。スピーカーを無理させずにしっかりと低音を出している感じだ。中音は濁りが少なく、すっきりとしている。 XA100.5では少しお姉さんに感じられたノラ・ジョーンズはジャストの年齢で再現され。「若鮎」のフレッシュな魅力に満ちている。ピアノの音は適度な厚みと鮮やかな音色が兼ね備わって、音としては美しい。しかし、それがボーカルより前に出ることはない。ウッドベースやドラムもそれぞれの音は明瞭に再現されるが、やはりボーカルより前には出ない。主役と脇役の描き分けがきちんと行われた音楽的に安心できるこの音作りは、Passというメーカーの長い歴史を十分に納得させるものだ。その点でPassはオーナーや技術者が変わってしまったMark-Levinsonなどの「名ばかり」になってしまった数多のメーカー製品とは一線を画している。X260.5の音には、初代Thresholdのテイストが感じられた。長い時間を掛けて練り上げられてきた音には、好き嫌い以前の聞く価値がある。 + 低音の量感をもっと出せるパワーアンプはあると思う。しかし低音を出しながら、同時に中高域の透明感と音色の鮮やかさを感じさせる大型パワーアンプはそう多くない。X260.5は大型アンプのパワー感と小型アンプの透明感を兼ね備え、双方のいいとこ取りで音が作られている。 高域も低域も完全には伸びきらないが、両端がほんの少しだけロールオフしたバランスが、中域の厚みや滑らかさ、艶っぽさを実にうまく醸し出してくれる。コンサートマスターだけにスポットが当たるような鳴り方をせず、時には伴奏が主役となり、脇役と主役のそれぞれがうまく入れ替わり回転しながら、一つのテーマに向けて音楽が進行して行く。テンポが速くなり、再び遅くなり、その躍動の流れが実に鮮やかで心を揺るがす。 山頂に落ちた雨粒がやがて集まって小さな流れとなり、小さな流れが大河となり海に注ぐような、ドラマを音楽に宿らせる音だ。収録された音のすべて音楽に変換され、聴き応えのある素晴らしいバランスで演奏を堪能できた。 + BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)の素性なのか?あるいはX260.5とのコンビネーションなのか?ベースラインが遅れてやや重い。ボーカルの表情は豊かだが、切れ味が不足する。 ただ、絶対的な情報量や再生周波数帯域は十分に多く広いので、ケーブルを変えるなどのチューニングで好みの音に変えるのは、さほど難しくないと思われたので、プリアンプの電源ケーブルをAET Evidenceに変え、電源タップにAIRBOW PS-Stream4を奢ってみた。 音が細かくなったが、スピード感に欠ける傾向は完全には消えない。パワー感が出たと言うよりは、細かい部分が更に繊細になったという感じだ。そこでプリアンプの電源ケーブルを元に戻し、パワーアンプの電源ケーブルをAET SCR-EVO(旧モデル)変えてみた。音の切れ味が大きくアップし、細部の見通しや解像度もグッと良くなった。音の移動量も大きくなり、かなりPOPSらしい弾ける音に変化した。ただし、それでも音がやや重い傾向は変わらず、やはりX260.5自体がそういう「ややまったりとした音」に仕上げられていることが分かった。 最後に付属してきたNordostのWireWizard Magusを試してみた。細部の見通しが良くなったが低音が少し軽くなった。今回試した電源ケーブルでは、意外なことに「最安のAIRBOW KDK-OFCとの相性」が最も良かった。プリアンプの電源ケーブルに対する反応が鈍いのは、電源がセパレート化されている(電源ケーブルから回路までの距離が遠い)ことと電源部とプリアンプ本体を繋ぐケーブルが、あまりにも「普通」過ぎるためかも知れない。 XP-20やX260.5は「吊し」の状態で、十分に良くチューニングされている。ケーブルによるチューニングでは、その「持ち味」を損なわない慎重さが求められるようだ。 + BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)で感じられたさっぱりとした音調はそのままに、高域の切れ味や明瞭度が増加する。低音の圧力も増大し、ベースの響きが腹に響くようになる。しかし、スピーカーの価格差の約4倍ほど、音質が劇的には変わる感じはない。 じっくりと聞いていくと、X260.5は耳に聞こえる派手な部分よりむしろ、ボーカルの子音やギターの弦をリリースする瞬間のタッチや、ベースのアタックやタッチ、ドラムの金属的な音の美しさなど細部の明瞭さ克明さをThe Musicとの組み合わせで大きく改善することがわかる。ボーカルは、まるで耳にかかる吐息を感じるほど艶めかしくなった。 全体像を作り変えるのではなく、静寂の中の静寂、穏やかな表情の中の深み、そういう細部までが完成されたPassの音にはある種の美的感覚がある。質よりも量をよしとするアメリカ製品にあって、Passは例外的に量よりも質を重んじる。その音はまるで「モナリザの微笑み」のように優しく深く、心が癒される。音楽を聞いて良かったと感じる時間を持てるこの音こそ、Passという高級機の名前に相応しい。 + スピーカーを変えると演奏の「真実味」が増加する。 オーケストラのスケール感や楽団員の構成に変化は聴き取れないが、演奏の細部が限りなく美しくなる。ノラ・ジョーンズでも感じたことだが、バイオリニストが弦を操作するデリケートさ、主旋律と伴奏の絡みの完璧さ、演奏の隅々までの完成度、音楽性がそのものが「頂点」に向かって一糸乱れず昇華する様を感じさせられる。 どっしりと、時には軽やかに、変幻自在に音がリスニングルームを舞う。絶対的な音質こそ、それほどすごいわけではないが、醸し出される雰囲気は「一流」以外の何ものでもない。この音は、音楽ファンにこそ相応しい。 + 他のソフトでは顕著に感じられなかったが、このソフトでは「再生周波数レンジの拡大」が明確になる。ベースは腹にずしんと響き、高音は切れ味良く宙を舞う。細部の表現力も抜群で、とてもJ-POPとは思えないほど細かい音までしっかりと再現されることに驚かされる。 しかし、それでも「ウエット」な傾向は変わらない。細やかさに驚嘆し、十分鑑賞に値する音だがこういうソフトは少々雑でも良いから、もっと弾けるようにパワフルに鳴らしたい。 + 1028BEのサイズはBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)よりも少し小さいが、量感のある引き締まった良質な低音が出ることに驚かされる。バスレフだが低音は膨張せず、ベースラインがしっかりと前に出る。ボーカルは明瞭度を増し、やはり一歩前に出る。声量を上げたときのエネルギー感も良好で、メロディーを押し出した部分がより鮮やかに強くなる。ピアノも響きよりは、アタックを聞く感じに変化する。ドラムのブラシワークもハッキリする。 BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)の試聴時にメリハリを強くしようと、電源ケーブルを変えた時は全体のバランスが損なわれた。しかし、BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)から1028BEにスピーカーを変えると、バランスが崩れずに高音の明瞭度が増加して、メリハリがうまく出た。 一貫して感じる「温かさ」はPassが持っているもののようだが、それを「スピーカーの持ち味」として再現しアンプの個性とは感じさせない。スピーカーとアンプが完全に同化してしまうような、この特殊な鳴り方はPass独特のものだ。低刺激だが、主張する部分はしっかりと主張する。メリハリがなさそうだが、じっくり聞くと奥が深い。 良い意味でオーディオや電気の存在を感じさせない「有機的な雰囲気」でノラ・ジョーンズが色っぽく、明るく鳴った。 + 弦が少し金属的になり、ハーモニーに少し乱れが感じられる。低音の量感は確実にアップするが、中高音に少し濁りが生じた。 JAZZでは情報量(音数)が増えたように感じられたが、響き(余韻)が少なくなるためかこのソフトでは逆に情報量が少なくなったように感じられる。また、ホールの響きにも若干の違和感が生じた。直前にあまりにも完璧なThe Musicの音を聞いたせいか、1028BEの音はほんの少しだけ「雑(乱れて)」に感じられた。 + このソフトには1028BEの音が合う。 ベリリウム・ツィーターの金属的な響き、少し雑味を感じさせる余韻が「いかにも」というパワー感とチープさをうまく演出する。芯のある高音が、パーカッションのリズム感を向上させる。 高音の切れ味の向上に負けずにボーカルも明瞭度が増加し、音が全体的に一歩前に出る感覚でダンス・ミュージックらしいテンポ感とパワー感が生み出される。こういう鳴り方が、J-POPにはより相応しい。
試聴の最後にプリアンプをXP-20からXP-10に変更し、聞き比べてみました。パワーアンプはX260.5です。 XP-10 + + XP-20では、深みと落ち着きのある大人の演奏に聞こえた。プリアンプをXP-10に変えると、それが少しさっぱりとする。カタログデーター上のチャンエルセパレーションが、95dBから85dBへ10dB低下しているが、前後左右への音の広がりが小さくなり、中央に体が集中することでそれが感じられる。音も少し前に出てくる。 ボーカルと楽器それぞれの音がきちんと描き分けられ分離し、個々の音の明瞭度ではXP-20を上回る様に感じられるが、ライブ会場や演奏の空気感、雰囲気の濃さが後退する。全く同じ音質でグレードダウンするのではなく、よりフレッシュでオーディオ的にわかりやすい音に変えられている。明確な音の作り分けにPassの高い技術力が感じとれる。XP-10は悪くない。しかし、価格がかなり違うので比べるのは酷かも知れないが、プリアンプはXP-20が良いと感じた。 + + オーケストラが少し小さくなり、空間にも濁りが生じる。絶対的には決して悪い音ではなく、グレードは十分に高いが直前に聞いたXP-20との比較となるとXP-10はやはり分が悪いようだ。 バイオリンの音は素直だが、弓と弦がこすれる部分の音が少しおおざっぱに感じられる。ベースラインとの絡み具合も悪くないが、チェロとコントラバスが少し混じってしまう。 価格を考えるとスピーカーのグレードをBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)に落としても、プリアンプにはXP-20を使いたい。それほどXP-20には独特の魅力があったようだ。 + + XP-20ではややウエットに感じられたParty MIXだったが、プリアンプをXP-10に変えるとこれが実に上手く鳴る。 高音は繊細になりすぎず、線が太くしっかりとした芯がある。金属系のパーカッションの切れ味も鮮やかだ。ボーカルは少し抑えめに感じるが、その「わざと冷静な感じ」が逆に音楽のテンポ感を引き立てる。時折挿入される、シンセサイザーの効果音も「それらしく」て魅力的。低音は完全には伸びきらないが、前に出てパンチがある。 XP-20ではやや大人しく地味に聞こえた演奏が、ほどよく派手になり元気な音で鳴る。全体的な質感や細やかさではXP-20に及ばないが、こういうさっぱりした鳴り方もこれはこれで魅力的だ。 | |||||||||||||||||||||||||||
| 後書き | |||||||||||||||||||||||||||
| 今回テストしたXA100.5/X260.5は設計が新しく、時代に見合った「フレッシュな音」が出る。 柔らかく温かなその音調はLuxmanに似ているが、Passはより自然で違和感が少ない。 中域は濃く、みっちりと詰まった感じ。低音はやや遅く膨張して感じられることがあるが、それは高音の隈取りが少ないせいで、ウーファーのドライブ能力は十分に高い。 高音は立ち上がりが緩やかで、刺激が少ない。そのためスピーカーから離れた位置まで「音を飛ばす」のはあまり得意ではなく、スピーカーからあまり離れると細かい音が聞き取りにくくなることがあった。 電源ケーブルによるチューニングを試みたが、本来あまり得意としない「高音の切れ味」を無理に改善しようとすると、全体のバランスが損なわれ逆効果になった。PassのアンプはTannoyのように、まったりと鳴らす方が能力を発揮する。アクセサリーによるチューニングは、「オリジナルの持ち味」を十分に理解した上で行うことが大切だ。 逸品館お薦めのセパレートアンプ「Ampzzila+Ambrosia」は目鼻立ちのハッキリした西洋美人で、「Pass」はそれぞれのパーツは控え目だけれど全体が美しく、肌がきめ細かい純日本的美人のように感じられる。 高級レストランのテーブルの上には「調味料」は置かれない。それが何を意味するか?高級オーディオの味わい方も、また同じだと思う。このクラスの良品は、優劣ではなく好みで選ぶべきだ。 | |||||||||||||||||||||||||||
2011年 2月 清原 裕介 | |||||||||||||||||||||||||||