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表面電位が低いのに静電破壊している

トラブル内容

フィルムをロール搬送するときに、ローラーとフィルムの間で静電気放電が発生する。放電が原因でフィルムにピンホールができる場合がある。しかし帯電を確認するためにローラー上でフィルムの表面電位を測定するが低い値しか示さない。

同様に、表面電位計で測定すると低い値なので帯電していないと思い、電子回路基板を持ち上げると放電して、基板に実装されているICが静電破壊する。ICチップをダイシングテープからリフトアップするときも同じような現象が発生する。ウエハーを表面電位計で測定しても測定値はゼロ付近であることが多い。しかしリフトアップすると放電しICチップが静電破壊している場合がある。

静電気の発生と帯電

搬送ローラーとフィルムは剥離帯電によって帯電する。搬送するフィルムにかかるテンションが大きいほど、フィルムがローラーに強く押し付けられるので帯電量が多い。また駆動ローラーではフィルムとローラーがスリップ(シート速度とローラーの周速が異なること)していることが多いため摩擦帯電も発生している。図5-124にロール搬送で帯電したフィルムが送り出されるモデルを示す。ローラーに密着しているフィルムは帯電しているが、表面電位計で測定してもゼロボルトに近い値を示す。

基板がトレイから離脱するときに剥離帯電が発生する。トレイが導電性樹脂など静電気対策されているものであれば、表面電位計で基板の電位を測定してもゼロボルトに近い値を示す。

帯電物の位置により電位が変化する静電気現象

帯電物の位置によって電位が変化する現象を説明するために、図5-126に示したような平行平板コンデンサを考える。電極の面積をS、電極の間隔をd、真空の誘電率をε0として、平行平板コンデンサの静電容量は式(5-16)で表わされる

このコンデンサに電荷Qが蓄えられているとする。電極間の電位差Vdは式(5-17)で表わされる。

式(5-16)と式(5-17)から電位差Vdを電極の間隔d で表わすと式(5-18)となる。

電荷Qを持った平行平板コンデンサの電極間の電位差Vdは電極間隔dに比例している。電荷Qが蓄えられた平行平板コンデンサの電極間隔を大きくすると電極間の電位差Vdは大きくなる。

平等電界の場合、放電が発生する電位差VSと電極間隔dの関係がパッシェンの法則で示されている。パッシェンの法則の火花電圧VSと電荷Qをもった平行平板コンデンサの電極間電位Vdを表すと図5-128のようになる。電極の面積Sは1m2、電荷Qを10-9C、気圧は760Torrとした。
平行平板コンデンサの電極間隔が小さいときはV d <>Sであるので放電しない。電極間隔が大きくなって電位差Vdがパッシェンの法則の火花電圧VSと交わるところで放電する。

ロール搬送では、ローラーから送り出されたフィルムはローラーから離れるにしたがってフィルムの電位Vfが上昇する。電位Vfがパッシェンの法則の火花電圧VSをこえると放電する。図5-129にローラーから離れるフィルムと放電のモデルを示す。

ICチップを吸着パットでダイシングテープからリフトアップするときも同じ現象が起きる。吸着パッドでリフトアップした瞬間のICチップの電位VCは低いが、ダイシングテープから離れるにつれ電位VCが上昇し、火花電圧VSをこえると放電が発生する。図5-130、図5-131にICチップをリフトアップするときの放電のモデルを示す。

除電方法

ロール搬送ではローラーからフィルムが離れるとすぐに電位が上昇する。ICチップもダイシングテープから離れるとすぐに電位が上昇する。静電破壊を防ぐためにはパッシェンの法則の火花電圧Vsを越える前に除電しなければならない。したがって除電時間の短い除電器が必要である。イオンバランスは、スイング電圧を含めてパッシェンの法則の火花電圧以下にする必要がある。
除電器の設置は放電が発生する場所をねらってイオンを送り込む。ロール搬送であればフィルムがローラーから離れる瞬間であり、ICチップであればダイシングテープからリフトアップする瞬間である。

対策例

除電器の形状は対象とする製品や部品によって異なる。ここではロール搬送によるフィルムの除電、ダイシングテープからICチップをリフトアップするときの除電、セル生産での電子回路基板の除電の3つについて対策例を説明する。

<フィルムのロール搬送の除電>
放電が発生する部分は、ローラーとフィルムが離れた瞬間である。フィルムの幅の範囲を除電するため除電器はバータイプを用いる。ローラーとフィルムが離れる場所までの距離が近ければ(概ね100mm以内)イオンの搬送方法は気流搬送でも電界搬送でもよい。距離を近づけることができないようであれば気流搬送を用いる。理想的な除電器の設置場所は図5-132のような位置である。

図5-132のような位置に設置できないようであれば図5-133のように反対面から行うことも可能である。薄いフィルムであれば帯電している面の反対面にイオンを当てても効果はある。フィルムは絶縁体であるが抵抗値は無限大ではない。わずかに電気を通すので帯電している電荷と付着したイオンはある程度の時間で中和する。イオン量が不足する場合は表面と裏面の両方から除電を行う。

<ICをリフトアップするときの除電>
放電が発生するのはICチップがダイシングテープからリフトアップした瞬間である。除電範囲はICチップの周辺で局所的になるので除電器はスポットタイプを用いる。ICチップ自身が静電気に対して弱いことが多いので除電器のイオンバランスは良いものを選ぶ。
除電器が発生するオゾンが問題となる場合がある。吸着パッドはゴム製でありオゾンに弱い材質である場合が多い。オゾン発生量の少ない除電器を選定する必要がある。

<セル生産の電子回路基板の除電>
放電の発生する可能性がある場所は作業台全体である。広範囲の除電ができるブロアタイプ除電器を用いる。エアの配管が必要なく、作業台上に置いて自立できるので設置の自由度が高い。

除電器設置の注意
電池やコンデンサに用いられるような導電パターンがついたフィルムの除電には注意が必要である。特にイオンを電界搬送する除電器を用いると問題が発生する恐れがある。図5-136に導電パターンのついたフィルムの例を示す。

ロール搬送しているフィルムの除電ではローラーの近くではなく、ローラーから離れたところで除電器を当てるのが除電効率が高い。これはローラーから離れた位置ではフィルムの電位が上昇するため、除電器からイオンを供給しやすいからである。除電器の取扱説明書には設置位置の例として図5-137のような記載がある。

導電パターンのついたフィルムでも図5-138のようにローラーとローラーの中央が最も除電効率が高い。しかし導電パターンのついたフィルムの除電には注意が必要である。電界搬送の除電器をフィルムの近くに設置をすると、フィルムの導電部は除電器によって電位が上昇する。ローラー付近では図5-139のように導電パターンとローラーが近づくために放電が発生する。放電が発生するとフィルムにピンホールができてしまう。図5-140に放電が発生する瞬間の様子を、図5-141に放電でできたピンホールの例を示す。このように除電器の電圧に誘導されてフィルムの電位が上昇することがある。電界搬送する除電器を距離50mm以下で設置すると特に上昇は大きい。導電パターンのついたフィルムの除電には、イオンを電界搬送するタイプではなく、気流搬送する除電器を用いる。

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