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 世界中を騙した「チョコレートダイエット」論文なるものがあったそうです。ただ、私は聞いたことありませんでした。


●世界を騙したチョコレートダイエット論文

 既に削除されたという可能性はあるものの、今古い記事を検索してもあまり見つかりませんね。記事だけではなく、ブログへの転載などもほとんどありませんので、日本ではおそらくほとんど話題にならなかったものと思います。

 そんな数少ない日本の記事としては、IRORIO(イロリオ)のチョコレートはダイエットの味方?ドイツの研究所による調査結果 - IRORIO(イロリオ)(2015年03月31日 12時00分 宮城 保之)がありました。

 ただ、IRORIOは騒動の発覚後、何食わぬ顔で「チョコレートがダイエットに効果的」は嘘、甘い話に世界中が騙される - IRORIO(イロリオ)(岩藤健 2015年05月29日 10時00分)というのも出していました。嘘論文ですから騙されること自体は仕方ないと思うものの、以前の記事に一切触れていないところは素直にクズだと思います。

 とりあえず、その騙されていた方の記事を見てみましょう。
チョコレートはダイエットの味方?ドイツの研究所による調査結果 - IRORIO(イロリオ)(2015年03月31日 12時00分 宮城 保之)

興味深い調査結果を表したのは、ドイツ・マインツの「ダイエットおよび健康研究所」である。

調査実験への参加者は2つのダイエット・グループに分かたれた。一方のグループでは、参加者は低炭水化物によるダイエットを行う。他方のグループでは、それに加え1日当たり40グラムのビターチョコレートが与えられる。

その結果、チョコレートを与えられたグループは1週間後に体重の減少を見せ、その後、明らかにチョコ無しのグループより速いテンポで痩せ始めた。さらに血液値は向上し、総じてチョコ無しグループより良い状態を示した。

チョコレートグループのほうがより効果的に体重を落とせたことに、調査チーム代表のヨハネス・ボハノン博士は驚きを隠さない。「ですがはるかに重要なのは、彼らがさらに痩せ続けたことです。もう一方のチョコ無しグループはまた反動で太り始めているというのにですよ」。

カカオ含有量の多いチョコレートはダイエット効果を加速させるのでは、というのが博士の仮説だ。

出典元:Wer Schokolade isst, bleibt schlank! - Bild(3/28)

●研究者ですらなかった論文執筆者

 上記でお名前が出ていたヨハネス・ボハノン博士、実はそもそも偽名だったようです。

 ただし、まるっきり嘘だったわけではなく、"チョコレートを食べた場合の体重変化と食べなかった場合の体重変化は、実際に実験を行い確認された"とのこと。データは本物です。

 では、何がマズかったのか?と言うと、"少数のサンプルから、有意義なデータだけを抜き出した結果であり、とても科学と呼べるものではない"という点。読み返してみると、最初の記事では一切人数に関する話がありませんでした。

 そういえば、サンプルが少ないって話だけだと、血液型診断の祖・古川竹二さんの論文もそうですね。
 
  ■血液型診断の祖・古川竹二の論文が予想以上にひどい 根拠以前の問題


●お前が言うな!になっているIRORIO

 間違い記事では訂正すれば良いだけだと思うんですけどね。IRORIOの2つ目の記事は自身のことを棚に上げて、以下のように書いていました。
科学の要件を満たしていない論文を、いい加減な学術誌に投稿し、掲載されるや「ダイエットおよび健康研究所」の急ごしらえなWEBサイトでリリースを発表した。

これをドイツ最大の日刊紙『ビルト』が裏付けも取らず掲載(現在は削除・謝罪済み)し、世界20カ国のメディアがセンセーショナルな見出しで報じる。

デタラメな論文がどれだけ大きな見出しになるかを調べたジョンの調査は、これ以上ないほどに成功した。

 この他に、"ライバルに先んじてセンセーショナルな見出しが欲しいメディアも同様の間違いを犯すのだろう"というありがたいお言葉もありました。

(なお、ドイツの『ビルト』は大衆紙であり、大したことないレベルです。日本で言うと夕刊フジあたりが最も適切だと思いますが、スポーツ新聞レベルと言った方がわかりやすいかもしれません)


●怪しい論文でも掲載され得る仕組みは意外と単純

 この問題はマスメディアのいい加減さを示すものではありますが、それだけでなく学術誌のいい加減さも現しています。過去にも何度か書いていますね。

  ■学術誌掲載論文でも信頼してはいけない STAP細胞とソーカル事件
  ■科学雑誌掲載の論文はデタラメだらけ 偽論文を査読は見破れない

 この過去投稿でもタイトルに出していますが、この学術誌のいい加減さについて最近注目された例はSTAP細胞問題です。そのSTAP細胞問題にも関わっていて、騒動の最中に理研を辞めた西川伸一・京都大学名誉教授。彼がスーパーバイザーを務めるMedエッジでも、このチョコレート論文の件を取り上げていました。

 STAP細胞問題での対応の妥当性はさておき、より詳細に説明されており、記事そのものはさすがという内容です。(西川さんはSTAP細胞問題は主にマスコミが悪い!といった結論で、今回のニュースはそういった批判にうってつけのものでもあります)
「チョコレートでスリムになる」はニセ論文、怪しい論文は仕立てられる、見抜く大切さ | Medエッジ 2015年6月13日 10:30 PM

 怪しい論文でも掲載され得る仕組みは意外と単純だ。(中略)

 研究グループは、ダイエットのドキュメンタリー映画の一環であると説明して、実際に16人を雇って3週間のダイエットを行ってもらい、比較調査も行った。

 少ない人数で多数の項目について調査すると、統計学的に「有意な」数値が何らかは得られるものだ。(中略)

 統計学的なトリックによって、「研究」ではチョコレートと減量効果が関係していると証明された形になり、本物らしく体裁を整えられた。

 その上で、研究グループは、厳しい査読を行うという論文誌20誌に投稿。24時間以内に複数の雑誌から受諾の返事が返ってきた。

 最終的に大出版社が発行するインターナショナル・アーカイブズ・オブ・メディシンを選択した。(中略)

 その後、ニセのニュース・リリースなどの仕掛けを経て、ついに、大手メディアのヘッドラインに取り上げられ、世界中の注目を集めることになった。

 こういう問題が起きやすい論文は「~という化学物質が危険」「~は体に良くない」といったものでも多いのではないか?と、私は警戒しています。マスメディア、そして、大衆が好む話であるためです。

 なお、日本ではあまり報道されなかったっぽいと書いたチョコレートダイエットですが、これは先のヨハネス・ボハノン博士の名前で検索結果を見た感じで言っています。

 実は論文に無関係なチョコレートダイエットですと、日本でも多量に出てきます。これはもうニセ論文というレベルですらないわけで、日本人が特別冷静な判断力を持っているわけではなさそうです。


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