化粧品はニキビ跡の凹凸に効果なし
前回の記事で、ニキビ跡の凹凸が皮膚のより深い層、真皮の変化によるものであることを説明しました。賢明な読者の方なら、化粧品が凹凸に何の効果もないことがわかるかと思います。
なぜって化粧水は表皮を通過できないからです。表皮を通過できないどころか、表皮の中のさらに一番上の層の角質層すらほとんど通過できません。
よく「ぐんぐん浸透する化粧水!」などと広告されて売られている浸透型化粧水は、※印がついていて、「※角質層まで」と小さく書いてあると思いますが、上の図で見てもらうとわかるように、角質層は表皮の最も上の部分です。
上の図は表皮の拡大図ですが、表皮の下にある真皮は、この表皮の厚さの最低10倍はあります。凹みはその真皮のさらに深い部分にありますから、化粧品ではどうやったって改善させようがありません。皮膚の外側から使う医薬品・医薬部外品でも同様です。
ピーリングはニキビ跡の凹凸に効果なし
ピーリングもニキビ跡を治す効果はありません。ここでいうピーリングは、よく美容皮膚科や美容外科で行われているグリコール酸ピーリングやサリチル酸ピーリングのことを指します。AHAやフルーツ酸を使用したホームピーリングや、エステで行われているグリーンピール、ハーバルピーリングも同様です。
これらのピーリングは浅層ピーリングと言って、主に古くなった角質層を剥がすピーリング剤です。せいぜい顆粒層止まりで、有棘層まで溶かす効果はありません。当然基底層やその下の真皮までは作用しません。
当院でもサリチル酸マクロゴールピーリングをニキビ跡の患者へ行いますが、あくまで色素沈着の改善目的で、ニキビ跡の凹凸はピーリングでは治らないことをはっきりと説明しています。
TCAという酸を使用したピーリングの場合は、濃度によって基底層を溶かし真皮まで達します。そのため、ニキビ跡の凹み部分にスポットで使用することがあります(TCAクロスピーリング)。
TCAピーリングは、後に出てくる「アイスピック型の凹み」に対して有効です。アイスピックで刺されたような深い凹みに、TCA30%~50%濃度のピーリング液を垂らすと、その部分の瘢痕組織が溶け、壊されます。再生してくる段階で、しっかりとした瘢痕組織が形成されれば、凹み部分は目立たなくなります。また、周囲の皮膚も同じように溶けるので、段差が目立たなくなるという効果も期待できます。
TCAと同様に深くまで深達するピーリング剤として、フェノールがあります。フェノールによるピーリングは「タイムピール」と呼ばれ、一部の皮膚科や形成外科で行われていますが、侵襲性が高く、術後の色素沈着を起こしやすく、日本人の肌にはあまり向いていないピーリングです。
光治療(IPL)はニキビ跡の凹凸に効果なし
患者「ニキビ跡の凹みに効くって言うレーザーを10回も受けたんですが、効果ありませんでした。」
私「何という名前のレーザーですか?」
患者「何だったかな・・。よく覚えてないんですけど、勧められたのでやってみました。」
私「どこのクリニックに行かれたんですか?」
患者「〇〇クリニックです。」
私「ちょっと待っててください。今検索しますね。このクリニックのこれですか?」
患者「あ、それです!そのレーザーです!」
私「これはライムライトと言って、IPL、つまり光治療です。レーザーとは違いますよ。IPLを何十回受けようが、凹みは改善されませんよ。」
機種の名前は違えど、このような会話を今まで何十回(何百回?)と繰り返してきました。患者さんによっては、IPLとレーザー治療の区別がついていない方がいます。IPL機器もレーザー機器も沢山の機種があり、混同してしまうのでしょう。
光治療(IPL)の機種
フォトフェイシャル M22 ライムライト アキュチップ ソラリ クリアタッチ エリプスフレックス サイトンBBL(サイトンブロードバンドライト) スターラックス ICON(アイコン) スムースクール アイソレイズ オーロラ eMAX(イーマックス) タイタン
上記が日本で良く用いられている光治療機器(IPL機器)です。オーロラはIPLにRF(ラジオ波₌高周波)が付いたもので、フォトRFと呼ばれています。イーマックスはオーロラ(フォトRF)とリファーム(赤外線+RF)とマトリックスIR(ダイオードレーザー+RF、従来機はポラリスと呼ばれていました)をハンドピースによって使い分けられる複合機です。
もちろん機器によって特徴はありますが、原則すべてのIPLはその波長とパルス幅の特性上、表皮と真皮のごく浅い層にしか届きません。真皮の深い層にある凹みには効果はありません。もちろん真皮の瘢痕組織を破壊することはできませんから、凹凸のニキビ跡を改善する効果はありません。
真皮のコラーゲンの産生を促すので、凹みが盛り上がるのではないか?と考える人もいるかもしれませんが、例え、真皮のコラーゲンの産生が促されても凹みは改善しません。それは、前回のページで述べたように、凹みはコラーゲン組織が一部欠損した状態のまま瘢痕組織になり、その上に表皮が張って出来上がったものだからです。瘢痕組織部分は硬く変性しているため、そこにコラーゲンの増生は起きにくく、また、起きたとしても硬くなった瘢痕組織を押し上げて、盛り上がらせるほどの増生は起きません。
凹みを治すには、その瘢痕組織を壊して取り除き、また、新しい瘢痕組織ができる過程で、コラーゲンを増生させて凹み部分を埋めていくしかありません。
一部の医師は、凹凸が治る(かもしれない)と患者に勧めているケースがあるようですが、IPLは凹凸には効果がありませんので、覚えておいてください。IPLは肌のハリなどの効果は出ますが、ニキビの凹凸に光治療を積極的に勧めてくる医師がいたとしたら、そのクリニックには行かないほうがよいでしょう。RF(ラジオ波₌高周波)やダイオードレーザー(810nm)を組み合わせた複合機も残念ながら凹凸には効果はありません。シワやくすみ等のアンチエイジング目的ですので、間違えないようにしましょう。RFについては、次回のフラクショナルRFのページで詳しく考察することにします。
IPL機器を真剣に開発されている業者の方には申し訳ありません。IPLに何の効果もないと言っているわけではなく、光がコラーゲンの産生やターンオーバーを促すのは確かですし、肌に負担の少ないマイルドな光で、ダウンタイムがなく治療でき、アンチエイジング目的やニキビ跡の色素沈着の改善目的としての有用性はある治療です。しかし、数年くらい前までは、盛んにニキビ跡の凹みにも効果が出ると言って売り出していた業者がおり、いまだにそれを信じている医師もおり、患者さんが迷わないようにこの記事を書きました。
続きます。
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書いている人
院長 岩橋 陽介
東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。[詳細]