突然髪の毛が抜けるようになった。脱毛部分が丸くなっている。それも一か所だけではなく、数か所もある。髪の毛以外の体毛も抜けてくるようになった。このような症状があれば、円形脱毛症が疑われるかもしれません。脱毛症とは一体どのようなものなのでしょうか。今回は毛が生えるしくみと円形脱毛症について説明します。

毛の生え変わりとは

頭の毛は約10万本あるといわれていて(日本皮膚科学会より)、各々の毛は成長期、退行期、休止期からなる「毛周期」というサイクルを繰り返しています。毛はずっと伸び続けるのではなく、ある程度まで伸びると成長が止まって抜けていくのです。これは、まつげなどにもいえることです。まつげや眉毛が際限なく伸び続けたら、目に入ってしまったり、視界の邪魔になってしまって大変ですね。

脱毛症を理解するために、毛の一生をまずはご説明します。

成長期

毛には、表皮より下に埋まっている毛根と呼ばれる部分があります。毛根には毛母細胞があり、毛母細胞が細胞分裂をして毛の細胞が生まれ、伸びていきます。このように、毛母細胞が分裂して髪が伸びる時期を成長期といいます。人間の毛髪では、成長期は約2~6年といわれています。また、頭髪全体における成長期の毛の割合は約85~95%です。

退行期

退行期は、毛の成長が止まる時期です。頭の毛は、数年間伸びると成長が止まり、毛根のある場所は浅くなって毛が抜けやすい状態になります。これは約2~3週間といわれています。また、毛の約1%が退行期に当たります。

休止期

毛の伸長が止まった後、休止期になると毛は抜け落ちていきます。頭髪全体の約10%前後が休止期にあたります。休止期は約3~4ヶ月といわれています。そしてまた成長期に向かうのです。

 

このように毛が生えかわることを毛周期と呼んでいます。頭髪は健康な状態でも、毎日ある程度抜け落ちています。普段から毛が抜けることは知っていても、それが何本くらいなのかは知らない方も多いかもしれません。実は、その量はなんと1日に50~100本です。100本も抜けてしまうの?と驚かれるかもしれませんが、抜けるのと同時に、休止期にあった毛が成長期に移行して伸びていくので、常にほぼ一定の毛の数が保たれるようになっているのです。

また、中年以降は細い毛に変わり、全体として髪が薄くなっていきます。一方、成長期の長さは年をとるにつれて長くなるといわれており、おじいさんなどが眉毛が長くなるのはそのせいだそうですよ!

脱毛症とは

脱毛とは「毛が抜けて毛の数が少なくなった状態」を指します。しかし、一言で脱毛症と言っても、その中には生まれつきの病気や、他の全身性の病気から 派生してきたものまで、いろいろな疾患が含まれます。今回は、その中でも「円形脱毛症」に焦点を当てていきたいと思います。

円形脱毛症とは

円形脱毛症は、自分の毛根を包んでいる毛包という部分に対して、リンパ球という自分の体を守る兵隊さんの役割をしている細胞が攻撃を仕掛けてしまって毛が抜けてしまうという、「自己免疫性疾患」です。本来は自分をウイルスなどの敵から守ってくれるはずのリンパ球が自分自身を「敵」とみなして攻撃してしまうのです。

日本では皮膚科を受診する人のうち、2~5%を占めるといわれている、比較的よく見られる疾患ですが、 円形脱毛症にはいくつかの型があり、最重症だと全身の毛が抜けてしまうこともあるということは、あまりよく知られていません。円形脱毛症は以下のように分類されます。

単発型

脱毛部位が1か所のものを指します。その形は大抵が円形で、大きさは数ミリの物から大きなものまで様々で、気づかないうちに発症し、自然に治ってしまうこともあります。皮膚科を受診した時にはもう治りかけているといったことも多いです。

多発型

頭部の数ヵ所から数十ヵ所に脱毛ができます。こうなってくると、円型とは呼べないような形になってくることもあります。

全頭型

脱毛の多発型が進み、頭全体の毛が抜けます。

汎発型

頭の髪の毛だけでなく、眉毛やまつ毛、すね毛や陰毛など全身の毛が抜けていきます。

蛇行型

頭髪の生え際や後頭部が帯状に蛇行するように抜けていきます。治りが悪く、子供の円形脱毛症患者の3%がこのタイプで、大人よりも頻度がやや多いようです。

円形脱毛症を発症しやすい年齢や特徴

円形脱毛症の頻度は、人口の1~2パーセント程度と推測されていて、どの年齢でも発症しています。4分の1以下は15歳以下で始まるので、子どもにも起こる疾患といえます。男女差はありません。

円形脱毛症を発症している人の家族の2割程度が円形脱毛症にかかっているので、なりやすい素質が遺伝しているようです。

また、自己免疫性疾患と考えられているので、全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの膠原病や、橋本病などの甲状腺疾患、尋常性白斑などの他の自己免疫性疾患が併発しやすいことが知られています。さらに、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などの疾患も一緒にかかりやすい病気として挙げられます。

ストレスが原因と考えている人が少なくありませんが、直接的な原因ではないにしろ、引き金になっていることはあるようです。

円形脱毛症と間違いやすい脱毛症

円形脱毛症の他にも、様々な脱毛症があり脱毛の原因や状態も異なります。脱毛が起こったときに皮膚科を受診すると、まずはそれが円形脱毛症なのかどうか、診察や採血によって診断をします。他に考えられる疾患や状態としては以下のようなものが挙げられます。

  • 膠原病、代謝病、消化器病などの全身病による脱毛
  • 過激なダイエットや間違った食生活による栄養障害による脱毛
  • 薬剤の副作用や化学物質による脱毛
  • 頭皮が細菌や真菌に感染したことによる脱毛
  • 湿疹、皮膚炎や腫瘍による脱毛
  • 男性型、あるいは女性型の脱毛
  • トリコチロマニア

など

トリコチロマニアというのは、聞きなれない病気かもしれませんね。これは、心因性の原因で自分で髪の毛を抜いてしまうという病気です。小さなお子さんでは、円形脱毛症と合併していることもあり、特に注意が必要な疾患の一つです。

このように、たくさんの見分けなくてはならない状態や疾患があるのですね。

単発型の場合には放置していても改善してくることも多いのですが、数ヶ月しても全く良くならないとか、次第に拡大してくるとか、体の他の部分まで毛が抜けてくるといった場合には、早めに皮膚科専門医の受診をお勧めいたします。

円形脱毛症の治療

治療は病型と重症度などによっても変わってきます。

基本的には、毛包を攻撃しているリンパ球の働きを抑える治療が行われています。

日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドラインでは、ステロイドの局所注射、外用、内服、紫外線療法、局所免疫療法などの治療が挙げられていますが、全ての治療が行える施設は限られていますし、局所免疫療法は保険適応外の治療法ですので注意が必要です。

まとめ

毛は毛周期というサイクルで抜け替わっています。この生理的な抜け毛以上に毛髪が抜けてくると毛髪数が少なくなって、「脱毛症」という状態になります。脱毛症にはたくさんの疾患が含まれますが、円形脱毛症は子供から発症することもあり、頻度が高い病気なので基礎知識を持っておくといいでしょう。