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ダイエットは苦行ではない。マスターズ世代のダイエットの最終目的は、活力ある生活。だから楽しく痩せなくては意味がない。減量に成功した15人に「明るく楽しいダイエット」の秘訣を聞いた。
「ほら、お腹全然出てないでしょ」
日高一孝さん(66歳、神奈川県)は得意げにさすって見せた。会社員時代は身長176センチに対し、体重が80キロあったとは思えないほどスリムだ。
結婚してから徐々に太り、50代になると健康診断で高血圧や高血糖を指摘されたが気にも留めなかった。ところが、57歳の健康診断で強制入院。糖尿病のインシュリン注射の練習までさせられ、ようやくダイエットの必要性を自覚した。
当時、電機メーカーでアンテナの研究をしていた日高さんはこう考えた。「医者の言いなりにはなるものか。私はエンジニアだから、自分の身体を実験台にダイエットの効果を検証するのだ!」
マスターズ世代のダイエットには、これくらいの遊び心があったほうがいい。「ダイエットをやらされている」と思うのでは、毎日がつまらなくなってしまう。
早速、日高さんはダイエットのメカニズムを一から勉強。カロリー計算も頭にたたき込んだ。そして、運動療法(会社の昼休みにウオーキング)と食事療法(油の多い料理は控えるなど)を実践した。
“研究データ”を集めるため、毎日決まった時間に体重と血糖値を計測してグラフに付けた。身体に悪影響を及ぼしていないかを確かめるため、週に2、3回は尿を紙コップに採取して濁り具合をチェックするという独自のスタイルも取り入れた。
8カ月後、効果が現れた。「それまでちっとも体重が落ちなかったんですが、いったん落ち始めるとするするとカーブを描いて痩せました。ちょうど英会話を学んでいると、ある瞬間から一皮むけて急に話せるようになるのと似ています。ダイエットと語学習得に共通点があるとは発見でしたね(笑)」
日高一孝さん●66歳
「自炊ダイエット」を実践。定年後6年間、家で食事をする時はすべて自炊し、家族とは別の料理を食べてきた
こうして定年直前には体重68キロまで減量したが、目標の64キロには達しなかった。そこで、日高さんは新たなダイエット法を始めることにした。名付けて、「自炊ダイエット」である。
自分で食べるものは自分で作る――。「食事管理を徹底するには、妻が作った料理を食べるのでは限界があります。食の自立が不可欠なんです」
「自炊ダイエット」は、時間に余裕がある定年後だからこそ可能なダイエット法だ。それまでの日高さんは料理などほとんど作ったことがなかったので、夫の「自立宣言」に奥さんも驚いたという。
初めのうちは、慣れない台所仕事に悪戦苦闘したが、6年間も続けた今では包丁さばきも手慣れたもの。よく作るのは野菜蒸し。熱効率に優れた特殊な鍋で適当な大きさに切った野菜を蒸し、ポン酢やドレッシングをかけて食べる。
メンバーが男性だけの料理サークルにも参加して、腕に磨きをかけることも怠らない。「料理がこんなに楽しいとは予想外」とすっかりその魅力にはまった。
朝は黒砂糖入りの紅茶と具のない味噌汁を飲むだけなので、基本的には1日2食。昼食は玄米のおにぎりなどで軽く済ませ、夕食は野菜蒸しや魚を焼いて食べる。家族の分は絶対に作らない。「もし不味いと言われたら、気分を害してやる気を失ってしまうのでは」と懸念しているからだ。
頻度は低いが時には牛肉も食べるし、外食で油っこい料理も食べる。食事でストレスを溜めると逆効果だと、ある医者から聞いたからだ。栄養素やカロリー計算などダイエットの基礎知識を押さえていれば、そうした息抜きも問題ない。
自炊ダイエットの効果はてきめんで、ここ何年もベスト体重の64キロで安定している。血糖値は正常に戻り、血圧も以前は下の値が100前後だったが、現在は80を下回っている。ウエストは85センチから75センチにまで細くなった。
「食の自立がダイエットに有効だと身をもって検証できた」と日高さんは満足げ。日高さんの名刺には、今も個人で仕事を続けている「アンテナ研究者」の肩書に並んで、「健康の専門家」と書かれている。
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