香港返還20周年にあたる2017年。私も20年ぶりに戻ってきました。香港を象徴するクラシックホテル「ザ・ペニンシュラ香港」へ。私がはじめて香港を訪れたのは、1997年7月1日に香港が中国へ返還される直前のこと。あのころ日本では香港旅行が大ブームになっていて、海外旅行のハウツーを覚えたてでミーハーだった私は、流行に飛びついたのです。
綾小路きみまろさん調で言うと「あれから20年」。数えきれないほど香港に来て、ザ・ペニンシュラ香港へもお茶やレストランを利用しに何度か訪れましたが、宿泊するのは20年ぶり。当時は宿泊費におののいて、もっともスタンダードなカテゴリーの客室をオンナ3人で1室1泊だけ予約し、おずおずとあの有名なロビーを進んだものです。今回は20年ぶりですから奮発してお迎えサービスまで付けちゃった。大人になるのもいいものだ。
そんなザ・ペニンシュラ香港には、インハウスゲスト(つまり宿泊客)にならないと気づかないさまざまな特権がありました。まずは、かの有名な正統派英国式の「ザ・ぺニンシュラ クラシックアフタヌーンティー」。コロニアル建築のシンメトリーなデザインが美しい「ザ・ロビー」で提供されるそれは、あまりにも世界に知られすぎ、連日1時間を超える行列ができています。一般的には予約不可とされていますが、じつは宿泊客は予約ができるし、仮にスケジュールが流動的で予約が難しい場合は、都合がつく時間に行けば行列の最前列に入れてもらうことさえ可能です。
「ザ・ペニンシュラ スパ」もそう。外部からも予約できますが宿泊客が優先され、リピーターで好きなトリートメントルームがある場合は指定することもできます。ハマム風のスチームルームやジェットバスといったスパ施設が充実しているのはもちろん、このスパのもう一つの魅力は、ビクトリア湾に面して香港島を望むという抜群の立地がもたらす眺望。なんとサウナやリラクゼーションルーム、トリートメントルームから香港の都会的な街並みを一望できるのです。おすすめはきらめく夜景を楽しめる日没後で、20時からはビクトリア湾で毎晩開催される光のショー「シンフォニー・オブ・ライツ」を眺められます。つまり20時にサウナやリラクゼーションルーム、トリートメントルームにいられるようにスケジュールを立てて予約を取るのがポイントです。
スパでトリートメントの前後にゆったりとくつろげるリラクゼーションルーム。スイス製の高級コスメ「マギーズ モンテカルロ」を使用したトリートメントは香港で大好評のため、6月にはザ・ペニンシュラ東京でも受けられるように
ほかにもビクトリア湾を眺められる客室でルームサービスの朝食を楽しんだり、観光客でにぎわう前の静寂に包まれた「ザ・ロビー」を独り占めしたり。20年前には私の経験が少なすぎて余裕がなく、とてもできなかったあれこれを、今回は取り戻すように満喫しました。ちなみにアフタヌーンティーの予約は20年前にもできたそうで、あのとき何も知らずに行列していた私たちっていったい……。
朝食だけにフォーカスしても、食べる場所もメニューもいくつも選択肢があります。ルームサービスでお願いしたのは中華のセット。温かい豆乳からはじまり、点心やトッピングたっぷりのおかゆ、香港らしい焼きそばまで食べ応え抜群
そうそう、20年のあいだに私も変わりましたがザ・ペニンシュラ香港も変化していて、ショップ「ザ・ペニンシュラブティック」では名物のスコーンのテイクアウトがありました。宿泊客は予約しておくと、指定した時間に焼きたてをボックスに詰めて客室まで届けてもらえます。また、2013年には改装を終え、クラシックホテルらしい趣はキープしながらも、水回りやデジタル系が最先端なのも便利です。
宿泊したのは、壁一面の大きな窓からビクトリア湾の眺望を楽しめる「グランドデラックスハーバービュールーム」。しっかり食事ができるダイニングテーブルとデスクがあります。ダブルシンクのバスルームもゴージャス
こうしてすっかりザ・ペニンシュラ香港を知った気になっていましたが、地元のクラシックホテル好きによると、ザ・ロビーの知られざる名物メニューやら、超常連客ならではのレストランの使い方やら、まだまだ裏技がたくさんあるみたい。もっと経験を重ねてまた宿泊してみたいと思います。今度は20年もあけずに。
ローマ様式のスイミングプールからも香港らしい絶景を楽しめます。プールサイドのスパカフェにも朝食があり、こちらにはアップルビネガーやスムージーなどが含まれた「デトックス ブレックファスト」という気になるメニューが
■MEMO:旅と交通
MTR駅からもスターフェリー乗り場からも歩いてすぐと立地のいいザ・ペニンシュラ香港。香港の空港からは便利なエアポートエクスプレスが走っているし、送迎サービスはぜいたくな気もしますが、記念日など特別な旅行で人数が複数なら、ひとり旅でタクシーを利用したつもりでロールスロイスでの送迎を体験してみてはいかがでしょう。往復は費用がかかってしまうので、片道だけ利用するなら断然お迎えがおすすめ。空港の入り口ではなく、なんと飛行機を降りたすぐのところにスタッフがいらして、最短ルートでホテルまで連れて行ってくれます。利用者は当然ながらビジネスクラスでやってくるお客様が中心だそうですが、近ごろは香港に多くの格安航空会社(LCC)が就航しているため、今回の旅で私がLCCのバニラエアで飛んだように、飛行機代を節約してLCCに乗り、浮いた予算でロールスロイスを利用する女子旅のグループも多いとか。
PROFILE
- 江藤詩文(えとう・しふみ)トラベルジャーナリスト
トラベルジャーナリスト、フードジャーナリスト、コラムニスト。その土地の風土や人に育まれたガストロノミーや歴史に裏打ちされたカルチャーなど、知的好奇心を刺激する旅を提案。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。著書に電子書籍「ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~」シリーズ3巻。「江藤詩文の世界鉄道旅」を産経ニュースほかで連載中。