膠原病の免疫抑制剤による治療
免疫抑制剤には抗悪性腫瘍薬として開発された薬剤が多いのですが、強力な免疫抑制作用のあることが分かり免疫異常が原因で起きる膠原病でも用いられるようになりました。
今では様々な病気に適応が拡大されるととともに、使用方法の改良工夫によって効果が増大し副作用の少ない使い方が可能となりました。しかし、免疫抑制剤は体の免疫機能全般を抑制するため、免疫機能を低下させて感染症を誘発してしまうリスクがあります。
そのため、免疫抑制剤を効果的かつ安全に使用するためには、効果と副作用をよく理解して、使い方と使用量を守る事が大切です。
免疫抑制剤によっては、日本ではまだ保険適応が認められていないものがありますが、それでも免疫抑制剤を使用せざる得ない病気は多く、適切な使用によって生命を助け、生活の質を向上させることが出来ます。
免疫抑制剤の種類と適応になる病気について
日本では免疫抑制剤の保険適応は限られていますが、たとえ適応が認められていなくても、病気の重症度によっては免疫抑制剤が使われます。
膠原病では多くの病気においてステロイド療法が第一選択薬ですが、免疫抑制剤はステロイドのみで十分な効果が期待できない場合にステロイドと併用して用いられます。
免疫抑制剤の適応には最初にステロイド剤を用いて、後に免疫抑制剤を追加併用する場合が多く、①ステロイド大量療法が無効か効果不十分の場合、②ステロイドのみでは再燃を繰り返す場合、③副作用のためにステロイドを減量する必要がある場合、④ステロイドの維持量を下げたい場合(ステロイド減量効果)に用いられます。
ステロイド単独でも効果が期待できないことが、わかっている重症の病気の場合には最初から免疫抑制剤が使用されます。
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免疫抑制剤の作用機序・適応・副作用について
日本でよく使われる免疫抑制剤は下記のものです。
シクロホスファミド(エンドキサン)
アルキル化薬と呼ばれ、DNAと結合してDNA合成を阻害し、リンパ球の細胞死をひき起して、免疫抑制作用を発揮します。
エンドキサンは高い効果があり、膠原病でも最も広く使用されます。50~100mg(1~2錠)を1日1回内服、または間歇大量静注投与(500~1000mgを1ヶ月に1回点滴静注)で用いますが、近年大量は間歇静注療法が主流です。この投与法は重症ループス腎炎の治療法として確立しており、中枢神経症状、膠原病の間質性肺炎、血管炎症候群、ウェゲナー肉芽腫症などにも効果が認められています。
注意しなければならない副作用は、骨髄障害(血球減少)、出血性膀胱炎、性腺機能障害(不妊)があります。ただし、出血性膀胱炎はメスナ(ウロミテキサン)という薬の併用によって防止できます。
アザチオプリン(イムラン)
リンパ球の核酸代謝を阻害することによってDNAとRNAの合成を阻害し、リンパ球の分化増殖反応、抗体産生、サイトカイン産生を抑制する薬です。
50~100mg(1~2錠)を連日内服します。膠原病ではよく使用される薬ですが、エンドキサンに比べると効果がやや低いことから、ステロイド減量効果を期待して併用したり、エンドキサンの使用後に寛解維持療法として使用される場合も多いようです。
イムランに多い副作用として無顆粒球症と肝障害があります。尿酸値を下げる薬であるアロプリノール(ザイロリック、アロシトール)はイムランの代謝を遅延させ、血中濃度を上昇させて骨髄障害などの副作用頻度を高めるため併用時には注意が必要です。
メトトレキサート(MTX)(リウマトレックス、メソトレキセート)
葉酸代謝拮抗薬で、葉酸依存性の核酸合成を阻害することで、リンパ球の増殖反応を抑制し、抗体産生を抑制する薬です。
MTXは週1回の少量パルス療法で用いられます。関節リウマチでは6~8mg(リウマトレックス3~4カプセル)を週1回12時間ごとに3回に分けて内服します。多発性筋炎・皮膚筋炎には7.5~10mg(メソトレキセート3~4錠)週1回の内服から開始して、最高30mgまで増量します。20mg以上では週1回の点滴静注が用いられます。
副作用として、胃腸障害、口内炎、脱毛、肝機能障害の頻度が高く、重度の副作用として低頻度ながら間質性肺炎、骨髄障害、リンパ腫の発生があります。発熱や空咳、ひどい口内炎が出たら注意しましょう。
ミゾリビン(ブレディニン)
核酸代謝阻害薬で、活性化リンパ球のDNAおよびRNA合成を抑止してリンパ球の増殖反応を阻害する薬です。
ブレディニンはわが国で腎移植、ネフローゼ症候群、ループス腎炎、関節リウマチに適応があります。150mg(3錠)を1日3回に分けて毎日内服しますが、近年は1日1回の服用とすることも多くなっています。
効果は他の免疫抑制剤と比べると弱く、副作用も少ないですが、特有の副作用として高尿酸血症が起こることがあります。
ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)
ブレディニンと作用機序が類似している免疫抑制剤です(核酸代謝阻害薬)。日本では腎移植後の拒絶反応の治療にしか使用が認められていませんが、海外では重症ループス腎炎に対して、エンドキサン大量静注療法に匹敵する効果が報告されています。
レフルノミド(アラバ)
関節リウマチでのみ用いられる核酸代謝拮抗薬です。適応はリウマチに限られますが、MTXに匹敵する効果が報告されています。1日1回10~20mg(1錠)を服用します。
副作用頻度は比較的高く、下痢、脱毛、血圧上昇、体重減少、皮疹、肝機能障害、汎血球減少症などがあります。また、日本では重症の間質性肺炎の発生が報告されていますので注意が必要です。本剤は腸肝循環により胆汁から排泄された活性型薬剤が腸管から再吸収されるため、半減期が15~18日と長く、重い副作用が出現した場合はコレスチラミン投与により半減期を短縮する処置が必要となります。
シクロスポリン(ネオーラル、サンディミュン)
カルシニューリン阻害薬と呼ばれ、活性化Tリンパ球を選択的に抑制する免疫抑制剤です。
2~5mg/kgを1日2回内服しますが、消化管からの吸収に対して個体差が大きいので、定期的に朝薬服用の前の血中濃度を測定しながら投与量を調節します。臓器移植、骨髄移植、ネフローゼ症候群、乾癬性関節炎、ベーチェット病眼症、再生不良性貧血に適応がありますが、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎・皮膚筋炎、膠原病に合併する間質性肺炎にも用いられます。
副作用として、腎機能障害、高血圧、歯肉腫脹、多毛、高血糖、中枢神経症状があります。また本剤は他の薬剤との相互作用が多く、マクロライド系抗生薬、抗真菌薬、非ステロイド抗炎症薬、食物ではグレープフルーツが本剤の血中濃度を上昇させるため注意を要します。
タクロリムス(プログラフ)
カルシニューリン阻害薬で、ネオーラルと同様の機序でTリンパ球の活性化を抑制することで免疫抑制作用を発揮します。
1.5~3mgを1日1回内服して、定期的に最低血中濃度を測定して投与量を調節します。臓器移植・骨髄移植のほかに、関節リウマチ、重症筋無力症、ループス腎炎に適応が認められています。副作用、薬剤相互作用の特徴はネオーラルと同じです。
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