トクホ(特定保健用食品)の炭酸飲料が空前の大ヒット。「メッツコーラ」のキリンは、「健康のためにコーラを我慢していた30代以上の男性ユーザーを掘り起こす」ため、脂濃い食事のときによく飲まれるメッツの特徴をアピールするそう。掘り起こされたくないですね。
■スナック菓子と一緒に買われる
流通専門誌『激流』(国際商業出版)4月号に載ったトクホ炭酸飲料の記事は、なかなかインパクトがありました。「メッツコーラ」(写真左端)の大成功は、「難消化性デキストリンという食物繊維の効果によって、脂濃い食事と一緒に飲むと脂肪の吸収を抑える効果があり、ユーザー心理を捉えた」からだと。
ユーザー心理とはつまり、メッツコーラを毎日飲めば、肉や揚げ物や、菓子パンやカップ麺が多い食習慣を変えなくても済むんだ、ああ、よかったという安心感なのでしょう。新しい成分のおかげで、好きなものを我慢しなくても済むようになったと。
同コーラは初年度(昨年)の販売目標100万ケースを発売後2週間で突破し、昨年は目標の6倍にあたる602万ケースを販売。今年は800万ケースを予定しているそうです。まさに空前。そのヒットを支えているのが30~50代の男性悪食ユーザーというわけです。
同様に、「難デキ」を配合した「ペプシスペシャル」(左から2つ目)がヒットしているサントリー食品のブランド戦略部担当者の指摘が、これまたショッキング。「トクホ炭酸飲料はスナック菓子との併買率が高いことが判明した」と言っています。
それまでの有糖コーラやカロリーゼロコーラ(「ペプシネックス」)に比べて、より健康コンシャスだと思われるトクホの「スペシャル」購入者のほうが、スナック菓子も一緒に買う場合が多いというデータを押さえているのです。
つまり、カロリーや砂糖を抑えた従来の「ゼロ系」コーラがマイナスをゼロまで戻しただけの「無害商品」だとすれば、トクホは、さらに一歩進んで「効く」というプラスのイメージがあるのでしょう。だから、スナック菓子を食べたいユーザーの背中をトクホコーラで押して、狙い通りの結果が数字に出ているわけです。
同社では、「スペシャル」とスナック菓子をセットで買うと割引になるセールを企画し、「新発売の大容量1.5㍑ペットボトルも山積みしてヘビーユーザーの獲得も狙う」とコメントしています。完全にカモられている感じ。
でも、同社への批判は的外れです。これは消費者ニーズに沿った立派な商品開発であり、マーケティング戦略だろうとカラスヒコは思います。ユーザーに喜ばれる「生活改善提案」をしているからです。
問題はユーザーのほうにあります。それが自分にとっての改善なのか、自己責任で判断しなくては。仮に、「難デキ」が余分な脂肪を全部体の外に追い出してくれたとしても、脂濃い食事にはもともとビタミン、ミネラルが足りていません。解決策にはならないのです。
■効きませんと書いてある
本来の改善とは、玄米や豆を主食にして、工業加工された食品をなるべく取らず、肉や揚げ物は週1回程度に抑える食パターンに持っていくことであるはず。それは大変だからと、化学の力でちゃちゃっと結果だけ手に入れようとする態度は問題の先送りどころか、事態を悪化させます。
吸収する油脂を減らせば病気のリスクは減る、それが間違いだとは言いません。でも、油脂を減らしたいなら食べる油脂の量を減らせばいいだけです。油脂がおいしいと感じるのは確かに自然の感覚だとしても、一方で未精製穀物や魚のはらわたの味、昆布やショウガの風味を感じられなくなってしまったことが問題。
味覚のゆがみなのです。健康維持に必要な栄養素をバランス良く選んで食べておいしいと感じる私たちの本能が、過去50年ほどの食習慣の激変のせいで大幅に退化した。単に油脂を追い出せば健康が取り戻せるわけではないのです。
それはトクホのメーカーも、トクホを認可している消費者庁も分かっています。メッツコーラとペプシスペシャルのラベルには、「食生活は主食・主菜・副菜を基本にバランスを」と書いてあり、アサヒ「ファイバー7500」と伊藤園「スタイリースパークリング」(上写真の右2本)のラベルには、「疾病が治癒したり健康が増進するものではありません」と明記してあるからです。トクホで健康は買えません。
それどころか、トクホ炭酸はどれも甘さがすっきりしていて飲みやすいのが怖い。カラスヒコも各種ひと口ずつ飲みましたが、どれも絶妙に爽やかな甘さ。その正体はもちろんアスパルテーム・L・フェニルアラニン化合物、アセスルファムK、スクラロースなど。これらに香料や酸味料を混ぜて、油脂が洗い流されるようなイメージの飲み口が作られているのが分かります。
おそらく私たちは、トクホで健康になりたいと考えた時点ですでに負けているのです。私たちが目指す健康な生活とは、トクホの単機能やサプリによるオンデマンド的な栄養素の補給では成立しない。必要なのは食習慣をトータルに、根底から見直すことです。腹をくくるしかありません。
各自の「サムライごはん」をこつこつと食べていきましょう。50年前の、高度成長が始まるちょっと前あたりの食事に戻せば、中性脂肪やアスパルテームにまみれないピュアな体を作れるはずですから。
ではまた。
■スナック菓子と一緒に買われる
流通専門誌『激流』(国際商業出版)4月号に載ったトクホ炭酸飲料の記事は、なかなかインパクトがありました。「メッツコーラ」(写真左端)の大成功は、「難消化性デキストリンという食物繊維の効果によって、脂濃い食事と一緒に飲むと脂肪の吸収を抑える効果があり、ユーザー心理を捉えた」からだと。
ユーザー心理とはつまり、メッツコーラを毎日飲めば、肉や揚げ物や、菓子パンやカップ麺が多い食習慣を変えなくても済むんだ、ああ、よかったという安心感なのでしょう。新しい成分のおかげで、好きなものを我慢しなくても済むようになったと。
同コーラは初年度(昨年)の販売目標100万ケースを発売後2週間で突破し、昨年は目標の6倍にあたる602万ケースを販売。今年は800万ケースを予定しているそうです。まさに空前。そのヒットを支えているのが30~50代の男性悪食ユーザーというわけです。
同様に、「難デキ」を配合した「ペプシスペシャル」(左から2つ目)がヒットしているサントリー食品のブランド戦略部担当者の指摘が、これまたショッキング。「トクホ炭酸飲料はスナック菓子との併買率が高いことが判明した」と言っています。
それまでの有糖コーラやカロリーゼロコーラ(「ペプシネックス」)に比べて、より健康コンシャスだと思われるトクホの「スペシャル」購入者のほうが、スナック菓子も一緒に買う場合が多いというデータを押さえているのです。
つまり、カロリーや砂糖を抑えた従来の「ゼロ系」コーラがマイナスをゼロまで戻しただけの「無害商品」だとすれば、トクホは、さらに一歩進んで「効く」というプラスのイメージがあるのでしょう。だから、スナック菓子を食べたいユーザーの背中をトクホコーラで押して、狙い通りの結果が数字に出ているわけです。
同社では、「スペシャル」とスナック菓子をセットで買うと割引になるセールを企画し、「新発売の大容量1.5㍑ペットボトルも山積みしてヘビーユーザーの獲得も狙う」とコメントしています。完全にカモられている感じ。
でも、同社への批判は的外れです。これは消費者ニーズに沿った立派な商品開発であり、マーケティング戦略だろうとカラスヒコは思います。ユーザーに喜ばれる「生活改善提案」をしているからです。
問題はユーザーのほうにあります。それが自分にとっての改善なのか、自己責任で判断しなくては。仮に、「難デキ」が余分な脂肪を全部体の外に追い出してくれたとしても、脂濃い食事にはもともとビタミン、ミネラルが足りていません。解決策にはならないのです。
■効きませんと書いてある
本来の改善とは、玄米や豆を主食にして、工業加工された食品をなるべく取らず、肉や揚げ物は週1回程度に抑える食パターンに持っていくことであるはず。それは大変だからと、化学の力でちゃちゃっと結果だけ手に入れようとする態度は問題の先送りどころか、事態を悪化させます。
吸収する油脂を減らせば病気のリスクは減る、それが間違いだとは言いません。でも、油脂を減らしたいなら食べる油脂の量を減らせばいいだけです。油脂がおいしいと感じるのは確かに自然の感覚だとしても、一方で未精製穀物や魚のはらわたの味、昆布やショウガの風味を感じられなくなってしまったことが問題。
味覚のゆがみなのです。健康維持に必要な栄養素をバランス良く選んで食べておいしいと感じる私たちの本能が、過去50年ほどの食習慣の激変のせいで大幅に退化した。単に油脂を追い出せば健康が取り戻せるわけではないのです。
それはトクホのメーカーも、トクホを認可している消費者庁も分かっています。メッツコーラとペプシスペシャルのラベルには、「食生活は主食・主菜・副菜を基本にバランスを」と書いてあり、アサヒ「ファイバー7500」と伊藤園「スタイリースパークリング」(上写真の右2本)のラベルには、「疾病が治癒したり健康が増進するものではありません」と明記してあるからです。トクホで健康は買えません。
それどころか、トクホ炭酸はどれも甘さがすっきりしていて飲みやすいのが怖い。カラスヒコも各種ひと口ずつ飲みましたが、どれも絶妙に爽やかな甘さ。その正体はもちろんアスパルテーム・L・フェニルアラニン化合物、アセスルファムK、スクラロースなど。これらに香料や酸味料を混ぜて、油脂が洗い流されるようなイメージの飲み口が作られているのが分かります。
おそらく私たちは、トクホで健康になりたいと考えた時点ですでに負けているのです。私たちが目指す健康な生活とは、トクホの単機能やサプリによるオンデマンド的な栄養素の補給では成立しない。必要なのは食習慣をトータルに、根底から見直すことです。腹をくくるしかありません。
各自の「サムライごはん」をこつこつと食べていきましょう。50年前の、高度成長が始まるちょっと前あたりの食事に戻せば、中性脂肪やアスパルテームにまみれないピュアな体を作れるはずですから。
ではまた。