クラフトビール旋風が巻き起こる中、キリンラガーの生ビールを推すお店とは
「とりあえずビールで」
お酒好きな人ならば、一度は耳にした言葉でしょう。宴会の口切によく用いられるビール。最近はクラフトビールも流行し、国産のものから海外のものまで取りそろえた飲食店が増えています。IPAもヴァイツェンも好きですが、日本のビール好きとしては生ビールを心ゆくまで堪能したいところ。
そんなビール好きな方に朗報です。この秋、中野にキリンラガーの生ビールを推す店舗がオープンしました。どうやらサーバーの注ぎ方によって、同じビールを4つの異なる味で楽しめるらしいのです。そんなことって本当にできるの? 今回それを確かめにお店にお邪魔しました。
JR中野駅の南口を出て、RENGA ZAKAと書かれた門をくぐると、左手に看板が見えてきます。
このビルの2階・3階が、キリンラガーの注ぎ分け専門店「麦酒大学」です。
深い緑の壁が落ち着いた印象の2階は立ち飲み、奥にバルコニーが見える3階はテーブル席です。
天気が良いときはバルコニー席で季節の風を感じながら、喉を潤してもいいかもしれません。
1種のビールと2つのサーバーから生まれる、4つのビールとは?
このお店には2つのビールサーバーがあります。手前のキリンラガーのマークがついた現代のサーバー、奥の球体がついているものが昭和8年に製造されたもののレプリカです。
この二つのサーバーを駆使して生まれたのが、4種類のビール。現代サーバーで注ぐ「麦酒大学注ぎ」、そして昭和サーバーで回数を分けて注ぐ「一度注ぎ」「二度注ぎ」「三度注ぎ」です。
生ビールにキリンラガーを選んだ理由は、うまみと苦味をしっかり感じられ、注ぎ分けによる味の差を感じられるから。しかし、本当に注ぎ方次第で味は変わるのでしょうか。今回は、「麦酒大学注ぎ」と「二度注ぎ」を比較し、そしてお店イチオシの「三度注ぎ」を頂きました。
ビールの炭酸と苦味を楽しむ「麦酒大学注ぎ」と、深い味わいを堪能する「二度注ぎ」
まずは2つのサーバーで、同じ注ぎ方をしたものを飲み比べ。注ぎ方は、一回ビールを注いだあと、上の泡を捨てて新たな泡を足すものです。多くの店舗でも取り入れられ、一般的な生ビールの注ぎ方として知られています。
グラスいっぱいにビールを満たすと、写真のように泡が二層に分かれます。上の泡が下層部分よりも粒が大きいのが見てわかります。この荒い泡を捨て、新たにきめ細やかな泡を足すと・・・
もっちり泡の生ビールが完成。濃密な泡は、液体が酸化して味にえぐみを出さないように、保護する蓋の役割をしてくれます。 下の写真左側は現代のサーバーによる「麦酒大学注ぎ」、右側は昭和のサーバーによる「二度注ぎ」です。外見だと、まったく見分けがつきません。しかし一口目でその差は明らかに。
「麦酒大学注ぎ」はキリンラガーらしいピリリとした炭酸と、ホップによる爽やかな苦味を堪能できますが、それは現代サーバーでゆっくりと注いだから。反対に、「二度注ぎ」は勢いよく泡立たせながら注がれるため、炭酸が適度に抜けて、ビールの風味が深まりコクが強くなったように感じられました。同じ注ぎ方なのに、サーバーの違いでここまで違うとは・・・ビール侮りがたし。
ビールが苦手な女性におすすめしたい、麦芽の甘さを感じる「三度注ぎ」
「三度注ぎ」とは、名前の通り、三回に分けてビールを注いだものです。先ほどの二つとは全く違う味になるということで、期待は大。
まずは昭和サーバーで勢いよく注ぎ、グラスを泡で埋め尽くします。
ここでグラスを一旦放置します。すると泡が下がり、黄金の液体に変わっていきます。これこそが「三度注ぎ」をつくる最大のポイントといえます。
グラスに勢いよく注がれることで、ビールの中に含まれる大きな泡の炭酸ガスが上昇し、一方で、微細な泡が対流しながらグラスの下へと押し流されます。
上の大きな気泡がはじけると、炭酸が外に逃げ、ホップの苦味と麦芽のたんぱく質が泡に残り、濃密な泡の帽子を作り上げます。そして微細な泡は下層で、形を保てずに液体へと変わります。 この状態を「カスケード」といい、これを2回繰り返します。
仕上げに、泡を足したら完成。
もっちり泡がまるでソフトクリームみたい。いざ泡を食べてみると、見た目に反して、苦い。先ほどカスケードを引き起こしたことで、苦味が泡に残ったため、それだけを食べるとホップの苦味をダイレクトに感じられます。反対に、下の液体を飲むと「麦茶かな」と思うくらいの、まろやかな味わい。麦芽の甘味とうまみを感じることができます。
これはビールが苦手な方でも、すいすいと飲めてしまうかもしれません。
ビールをより美味しく感じられるおつまみも
お酒をおいしくいただくためには、おつまみを忘れてはいけません。人気なのは「鮭ハラスのフィッシュ&チップス」。普通は白身魚が主流ですが、こちらでは脂がしっかり乗った鮭のハラスを採用しており、ビールとよく合います。
そのままで頂いた後、付属の甘すぎない自家製のタルタルソースや、モルトビネガーという麦のお酢で、味の変化を楽しめば、あっという間に一杯が乾いてしまいます。
豊富なメニューに目移りしてしまいますが、他に、ビールで枝豆にアクセントをつけた下写真右「枝豆麦酒煮(温)」と左「枝豆麦酒漬け(冷)」の食べ比べもおすすめ。
前者はビールの香ばしい香りづけ、後者の漬けは後味がビールというコクが売り。ふたつの味の違いにはまってしまうと、口に運ぶ手がとまりません。
おいしくビールを提供するには? ビールサーバーのメンテナンスへのこだわり。
店主・山本さんの前職は酒問屋の営業。ビールを美味しく提供できるようにと、卸先の飲食店に出入りし、お酒の保管方法からサーバーの洗浄方法などを伝えていました。 開店前・閉店後の2回、サーバー台で一回約30分要するメンテナンスですが、「ビールの味を劣化させず、最後までおいしく飲んでもらうために欠かせない作業」と山本さんは語ります。
取引先の飲食店で、山本さんが洗浄した直後のサーバーでお客様がビールを飲まれたとき、お客様から「こんなにおいしいビールは初めて」と喜んでもらえたことが開業のきっかけとなったようです。
独立後、広島のビールの注ぎ手として有名な「ビールスタンド重富」マスター・重富さんに弟子入りし、注ぎ分けを学びました。「ビールはすぐに飲んでしまうものですが、その短時間でも注ぎ方ひとつで変わる口当たりや味わいを楽しんでもらいたい。そして会社の宴会などで、ビールを苦手に感じている人ほど、三度注ぎを試してほしい」と語る言葉の端々から、山本さんのビールへの想いを感じられます。
今回「麦酒大学」で、本当の大学の講義のようにビールの魅力を、実学をもって学ばせていただきました。 あまりにも情報量が多すぎて、すべてをお伝えできないのが残念でなりません。ビールの奥深さに触れてみたい方は、中野まで足を運んでみてはいかがでしょうか。