(2005年5月16日配信)
第9回 『夜更かししナイ(3)便秘とニキビについて1』
こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。
5月も中旬となり、新緑の美しい季節ですね。ゴールデンウイーク後のこの時期は、何となく気が滅入って勉強や仕事に身が入らない『五月病』になりやすい時期です。
『五月病』は新入生や新入社員に限らず起こり、『心のスランプ」に例えられます。精神面での不調はニキビの悪化原因となります。あまり焦らず、また悲観的にならず、うまく気分転換して乗り切って行きたいものですね。
ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々ですが、このコラムが皆様のニキビ改善のちょっとしたヒントになれば幸いです。また、5月も中旬とはいえ空気はまだ乾燥しておりますので、お肌の保湿や体調に十分注意して下さい。
とかち美白研究所では、VCローションを購入されている方に会報を毎月発行しております。そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4ナイ)』というものを載せています。(思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)
- (1)爪を切っていじらナイ
- (2)髪の毛で隠さナイ
- (3)夜更かししナイ
- (4)乾燥させナイ
これは私が皮膚科診療を15年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。
前回は、『夜更かししナイ(2)』と題して、仮眠やぐっすり眠る工夫により睡眠の質を上げ、生活スタイルを少し変えることにより、仕事の能率が上がり、ストレスが減少し、ニキビ治療に役立つということの具体例をお話しさせていただきました。
今回は、規則正しい生活と関連して『夜更かししナイ(3)~便秘とニキビについて1~』と題し、『便秘とニキビについて』説明してみたいと思います。
私がニキビの患者さんを診察する際、初診の場合には、説明もれがないようにパンフレットを用いて説明し、爪、髪型等をチェックして確認していきます。そして必ずお聞きするのが、前回までお話しした規則正しい生活を送り、睡眠をきちんと取っているかということです。更に、便秘の有無についてもお聞きするようにしています。
結論から先に述べると、ニキビの患者さんの約80%の方に便秘があり、特に治りにくいと感じられている方、額や顎、首にかけて『白ニキビ』が多くみられる方に特に多い傾向があります。また、実際には便秘があるにも係わらず認識されていない方も多いようです。
今回は、まず、『便秘』とは何か?ということから、考えてみたいと思います。
『家庭の医学』によると、『排便の回数が減って、便がかたくなること。ふつう1日1回排便があるが、2~3日に1回、または週に1回しか便通がない場合ーー』とあります。そうです、1日1回『お通じ』がない方は、立派な『便秘』と考えてよいのです。
少し専門的になりますが、食物の体内での消化・吸収・排便のメカニズムについて考えてみましょう。ここが理解できないと『便秘』に有効な対策を打ち出すことができません。
まず、『便』のできるまでを簡単に追いましょう。
- (1) 口から入った食物は食道を通過します。
- (2) 胃から小腸を通過していく過程で糖分、たんぱく質、脂質、ミネラル類が体内に消化吸収されます。(これら消化吸収が終わったものが『便』です。)
- (3)『便』は小腸の出口(盲腸部)までは多くの『水分』を含んでいますが、その『水分』は大腸で吸収されて『便』となります。
次に、(正常の場合)と(便秘の場合)の『便』の違いを理解しましょう。
- (4) (正常の場合)
新しい『便』はまだ『水分』を含むため柔らかく、スムーズに排便されます。 - (5) (便秘の場合)
『便』が大腸に長く居座り、『水分』が更に何度も吸収されるため硬くなり、腸内を通過しにくく、排便しにくくなります。
また、消化・吸収・排便のメカニズムの裏には、大脳を含めた多くの神経回路の伝達が必要であり、いわば『排便ネットワーク』ともいうべき複雑な過程が働いています。
- (1) 食物は食道を通過して胃に入り『入荷しました!』という刺激を伝えます。
- (2) その刺激で腸が動き出し、食物は消化されて『便』となり、胃、十二指腸、小腸を経て、大腸、更にその先の直腸へ『便』を送りだします。
- (3)『便』が直腸に達するとその刺激は、骨盤神経を経て脊髄を通り、小脳の近くの橋という部分にある『排便中枢』に達します。
- (4)更に刺激は『大脳』の皮質知覚野に達し『便意』を感じることになります。
- (5)『便意』を感じると、人は状況によりトイレに入り『排便』の準備をします。
- (6)便座に座り、呼吸を止め、『横隔膜と腹筋群』を働かせて、腹圧を上昇させます。
- (7)直腸の内部が一定以上の圧力になると反射的に直腸が収縮し、肛門括約筋が緩み、めでたく『排便』となります。
『便秘』の具体的な改善法は、次回に、説明させていただきますが、『便秘』を改善させるということは、これらのどれ一つが機能しなくてもうまくいかないことになります。
つまり、よく広告で見る『○○○○で便秘が完全に治った!』ということは、これらの一部を改善させる(?)のみで、全ての人に効果が現れる訳ではないのです。
便秘が肌などに与える影響について説明しましょう。腸内には、ビフィズス菌を代表とする善玉菌(おなかの調子を整える:約10%)と悪玉菌(おなかの調子を悪くする:約90%)が存在しています。しかし、『便秘』になり『便』が滞留するとそのバランスが崩れ、腸内の腐敗作用が活発化し、『有害物質』が発生します。腸は体の免疫活動にも関係しますので、その『有害物質』により免疫活動に障害が起き、ニキビの原因となります。また、新陳代謝が低下し血行不良となることから、肌のハリとツヤも悪くなり、肌荒れの原因にもなります。
更に、『有害物質』は自律神経の働きを乱し、頭痛、めまい、肩こり、吐き気、イライラ感などの体の不調につながり、動脈硬化やガンなども誘発すると言われています。自律神経系では特に副交感神経の働きが優位になるため、皮下脂肪が蓄積しやすくなり、肥満の原因の1つにもなります。便秘は『万病のもと』といってもよいでしょう。
今週のポイントはこんなところでしょうか?
『1日1回「お通じ」がない方は、立派な「便秘」です。ニキビが良くならない方は便秘がちな方が多いです。便秘はニキビや肌荒ればかりでなく、頭痛、めまい、肩こりなどの体の不調、更には、動脈硬化、ガンや肥満の原因にもなる万病のもとです。長年の悩みだった便秘について真剣に考えてみましょう。』
次回は対策を中心にもう少し掘り下げて説明してみたいと思います。それでは。
おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム)
(昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。
平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。
平成14年とかち美白研究所開所。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)