スピーカーの等価回路

基本概念みたいな等価回路じゃ使い物にならないので、
現物の製品からインピーダンスを測定し、それに合致した等価回路を作成します。




本稿では等価回路をゼロから順を追って考えてみました。
出来上がった等価回路を部品で組んで評価するのは面倒ですから、
回路シミュレータを使って確認してみました。


【現物の特性から考える】
目の前にあるスピーカーですが、インピーダンス特性のグラフが必要です。
信用できるグラフならそのまま使う事ができます。
ここでは前回の記事に記載した低周波インピーダンスアナライザを使用して、
インピーダンス特性を実測致しまして、その結果を基準にしようと思います。

最初に考えるのはヘッドホンで、ATH-A500X改造品からやってみようと思います。
こいつのインピーダンス特性を測定した結果が下図です。

*スピーカーのインピーダンスとしては代表的な形状をしていると思います。
 ヘッドホンだから直流抵抗が大きいですな。
 12Hzで42.85Ω
*上記の特性で特徴的なのは63Hzに盛り上がりがある所です。
 まあスピーカーのf0ですな。
*もう一つの特徴は右上がりの所ですな。
 こういった特性を等価回路にしてみる訳で御座います。



【63Hzの盛り上がり】
等価回路ですが、直流抵抗があります。現物に合わせて、42Ωとします。
これに合わせて63Hzの盛り上がりを考えます。
盛り上がるのはLC共振回路です。下図みたいな構成でしょう。

*共振回路はLとCで構成します。
 真ん中を「へ」の字に盛り上げるのはLC並列共振ですな。
 高域がCによって下降し、低域はLによって下降します。
*どれだけ盛り上げるのかは測定グラフから読み取ります。
 63Hzのインピーダンスが59Ωでした。直流インピーダンス42Ωがありますので、
   59Ω−42Ω=17Ω
 17Ωに相当するピークを考えればOKですな。




【LとCの値を求める】
Lの値から計算してみましょう。
63Hzで17Ωになる様なLを求めれば良い訳です。

 Z=ωL
 L=Z/ω=Z/(2*π*f)=17Ω/(2*π*63Hz)≒0.043
 L=43mH

Cの値はf=1/(2*π*√ (L*C))の式を変形すれば求められます。
まあ計算結果だけ書きますと150uFになりました。
よって共振周波数は

f=1/(2*π*√ (43E-3*150E-6))≒62.7Hz    63Hzに合ってますな。

つまり下図の回路になった訳です。





【シミュレータで確認する】
当方が使用している回路シミュレータはMC9の無料版です。
現行はヴァージョン11みたいですが当方は使い易いのでMC9。
MC11のページからEvaluation Versionをクリックしてリクエストすれば入手可。
さて、先の回路をMC9に入力しまして、

ACアナリシスを実行させると下図の設定画面が出ます。
下図の様に入力すればV1から見たインピーダンス特性を描画できます。


ACアナリシスの「Run」を押すとグラフが描画されます。
う〜ん、やっぱりピークがきつ過ぎますな。ピーク周波数は63Hzで合ってますよ。
当然ですが、もうちょっと考える必要があります。(爆)





【LC共振のピークを潰す】
ピークを潰すには抵抗を追加すればOKですな。
抵抗値はQの値から計算できるかも知れませんが、まあ簡単に、
記事の上の方で求めた17Ωを入れてみようと思います。
ピークのインピ59Ω−直流抵抗42Ω=17Ω


インピーダンスをシミュレートした結果は下図となります。
うまい具合に63Hzで59Ωになりましたが、今ひとつの所もあります。

*63Hzの右側ですが落ち過ぎな感じがします。
 もうちょっと考えなきゃいけません。(爆)



【LC共振の右側と左側を調整する】
LC共振の右側というのはCによる減衰です。
ATH-A500Xのグラフに似せるには、
直流抵抗42Ωに対して、47Ωくらいまで上げたいですな。
47Ω−42Ω=5Ω   コンデンサに5Ωを追加しようと思います。

しかし、そのまま5Ωを追加しますと63Hzのピークが変化してしまいます。
んまー、R2の17Ωをテキトーに調整すればOKです。25Ωでバッチリみたいです。

*およよピーク周波数がズレました。60Hzくらいに下がっちゃいましたな。
 こんどはL1の43mHを微調してやんなきゃ駄目です。

という訳でして、38mHにしたらバッチリになりました。
左右の減衰具合もかなりイイ線いってまして50Ωをよぎる周波数もだいたいOK。

*これで63Hzのピークあたりはうまく出来たと思います。
 次は右上がりの特性ですな。



【20kHzより上側の盛り上がり】
高い方が上昇するのでLを追加すればOKでしょう。
まあテキトーな計算で大まかな値を出してみましょう。
100kHzで100Ωくらいに上昇する様なので、上昇分は
100Ω−直流抵抗42Ω=58Ω
追加するLを求めますと、

 Z=ωL
 L=Z/ω=Z/(2*π*f)=58Ω/(2*π*100kHz)
 L≒92uH

92uHを追加して様子を見てみようと思います。こんな感じですな。


これもL2の値をテキトーに変更して微調します。
その結果ですが、下図の様にATH-A500X測定グラフと非常に似たカーブです。


これで完成という訳じゃありません。
突っ込みが足りません。(爆)




【等価回路の位相をシミュレートしてみる】
作成した等価回路の位相特性が未確認でした。
インピーダンスアナライザで測定している位相は電流値の位相と思います。
位相特性を簡単に確認するには信号源を電流源にすればOKですが、
下図みたいに等価回路をコピーして、1MΩを付けて確認する事もできます。

*端子名に「ISOU」と付けましたが任意です。漢字カナは駄目みたい。
 ノード番号でもOKですが回路変更するとノード番号も変わっちゃうから不便。

ACアナリシスの設定に、位相のグラフを追加します。


ACアナリシスの「Run」を押すとグラフが描画されます。

*うーんちょっと、高域上昇分が駄目ですな。




【最終調整して、完成】
高域上昇分の差異ですが、これも抵抗をパラって定数を微調すれば何とかなります。
抵抗値はATH-A500Xの100kHzあたりのインピーダンスと同じくらいの値として、
100Ωを追加しました。
あとはL2(L4)の値を調整すれば大丈夫です。130uHで最適になりました。


この回路をシミュレーションした結果が下図です。


このページ最上部に載せたATH-A500Xのグラフを再掲して比べてみますが、
かなり似通ってますな。大成功!ヤッター!(爆)


こんな感じに、
現物に合わせて等価回路を作る事が出来るんですな。




【事例2・ヘッドホンK712改造品】
これも当方が改造したヘッドホンで当ブログに掲載した品物です。
同様に、前回の低周波インピーダンスアナライザで測定しました。


ATH-A500Xの場合と同じ様なプロセスで考えれば等価回路は作れます。
途中のプロセスは面倒なので省略します。(爆)

違いとしましては、K712では2kHzあたりに小さい盛り上がりがありますが、
それを入れ込んでみました。


シミュレータによるグラフが下図です。
これも実際の測定結果に合致しているでしょう。





【事例3・バスレフスピーカー自作品】
まずは実測値。


等価回路はこうなりました。バスレフポートの盛り上がりが盛り込まれてます。


シミュレータによるグラフです。




まあ今回はこんな感じで御座います。
フルレンジ一発じゃあまり活用も無いと思いますが、
2ウェイ以上のスピーカーを作る時には活用できるでしょう。

本稿で求めたのはインピーダンス値とスピーカーに流れる電流の位相です。
クロスオーバー・ネットワークの影響などが手軽に確認できます。
机上でシミュレーションできますから楽ですな。
ただし、音圧や位相はマイクを使って測定してやる必要があります。





記事の内容は鵜呑みにせずご自身で実験評価して下さい。
そして当方はめんどくさいので一切サポート致しません。(爆)

以上です。
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