皮膚・爪・髪の病気/ニキビ・シミ・しわ・乾燥肌・紫外線対策

飲み薬でシミは治せる?トラネキサム酸とは

皮膚の美白というと、日焼け止めによる予防と、ハイドロキノンやトレチノインといったぬり薬、レーザーやフォト治療、ピーリングがまず挙がります。それに加えて、市販のサプリや美容のクリニックでも美白の飲み薬を見かけることがあります。「トラネキサム酸」という美白の成分を飲み薬やぬり薬で見かけたことはありませんか?これが実際にどのような効果をもたらすのかを見ていきましょう。

トラネキサム酸とは?

シミには日光黒子、肝斑(かんぱん)、雀卵斑(そばかす)、炎症後の色素沈着などさまざまな種類があるため、治療も少しずつ変わってきます。この中でも、肝斑は両頬に対称的に色がつくタイプのシミで、レーザーやフォト治療が効きにくく、治療が難しいことが知られています。

この肝斑に効果があるのが「トラネキサム酸」という飲み薬です。

左右対称に頬にベタッとした茶色のシミができる肝斑。トラネキサム酸の肝斑に対する効果は多くの研究で証明されてきている。


またトラネキサム酸は美容目的だけでなく、一般のクリニックでも処方される「トランサミン」という名前の処方薬であり、「トランシーノ」という名前で同じ会社から市販もされています。

トラネキサム酸は血液の固まりを溶かしたり、炎症を起こしたりする「プラスミン」という物質の作用を抑えます。のどが痛い時にお医者さんに行って、トランサミンを処方された経験のある方もいると思います。私も経験がありますが、これはトランサミンが炎症を抑え、のどの腫れを抑える効果があるためです。

トラネキサム酸はどんなシミに効くのか?

トラネキサム酸はどのシミにも効くわけではなく、30代以降の女性によくみられる、「肝斑」という左右対称に頬に出現する茶色のシミに効果があります。肝斑に効くメカニズムは完全に解明されているわけではありませんが、プラスミンの作用を抑え、シミの原因となるメラニンを作るメラノサイトという細胞のはたらきを低下させることで、肝斑治療に効果を発揮すると言われています。

では肝斑以外のシミへの効果はどうなのでしょうか?

肝斑に対してはデータも多く効果が証明されていますが、ほかのシミでは効果がなかったというデータもあり、一般的には肝斑によるシミにのみ使われています。

肝斑をトラネキサム酸でどのように治療する?

肝斑にはレーザーが効きにくい(場合によっては悪化させる)こともあり、トラネキサム酸の飲み薬を治療として使うことは有効です。通常、2~4ヶ月ほど内服することで効果が現れます。

劇的に効果が現れることは少なく、徐々に効果を実感することがほとんどです。飲み薬を飲み始める前に写真を撮っておき、治療後と効果を比べることで、その効果を実感できます。

中には劇的に効くこともあり、両頬にベタッとした茶色のシミが左右対称的にあった患者さんで、4ヶ月ほどで目に見えて薄くなったケースが私の経験でもありました。効き方は個人差があるので、実際に試してみなければ予想ができません。

皮膚科医の間でも、肝斑の完治はできないとされています。トラネキサム酸と、ハイドロキノンやトレチノインといったぬり薬を併用していくのが最初におすすめできる治療です。レーザーやフォト治療は効いたという報告はあるものの、効かずにむしろ悪化したというデータも多く、まず勧められる治療法ではありません。

非常に短い間隔(ピコ秒の単位)でレーザーを当てることのできる、新しいレーザーの機械が肝斑に効くというデータも出てきています。技術の進歩はレーザーの世界でも非常に早くなっていますので、今後に期待ができます。

トラネキサム酸に副作用はあるの?

飲み薬を使うときには、ぬり薬以上に副作用が気になる方がいらっしゃると思います。トラネキサム酸は血の固まりを溶かす作用のあるプラスミンの作用を抑え、出血を抑えることが知られているため、手術後の出血を抑える目的や、月経で出血が多い場合にも治療薬として使われます。

そのため、トラネキサム酸を使った時に考えうるリスクとしては、血液をサラサラにするプラスミンの作用を抑えることで、「血栓症」といって血が固まって血管が詰まってしまうことが挙げられます。

ただ、過去にトラネキサム酸を肝斑に使った研究を調べてみましたが、実際に血栓ができて問題になった、という事例はありませんでした。数ヶ月の間、肝斑に使う分にはまず問題がないということができます。しかし、深部静脈血栓症といった血の固まりで血管が詰まる病気を患った方がある方、血が固まりやすい傾向があると指摘されたことがある方は使用を控えた方がいいでしょう。

また、トラネキサム酸が効く場合には2~4ヶ月程度で効果が出ます。その後は一度内服を終了して、再度肝斑によるシミが濃くなってきたときに内服を再開するというように、長期的に飲み続けるのは避けた方がいいと考えます。

ぬり薬のトラネキサム酸は効果があるの?

飲み薬のトラネキサム酸だけでなく、ぬり薬のトラネキサム酸にも肝斑に効果があるという研究のデータが増えてきています。肝斑の患者さんに対して、顔の半分にトラネキサム酸、逆の半分にハイドロキノンを3ヶ月間、1日2回ぬったところ、効果は同等か、むしろトラネキサム酸の方に効果がある、というデータも出ています。

これからさらに効果の検証は必要ですが、最近増えてきているトラネキサム酸を含んだぬり薬は、肝斑に試す価値があるといえます。よく知られている美白のぬり薬であるハイドロキノンよりも、「かぶれ」の副作用が起きにくいことも使いやすい理由の一つです。

ただし、肝斑以外のシミにはトラネキサム酸の効果ははっきりと証明されていないので、まずは自分のシミがどのカテゴリーになるのか、皮膚科の先生に相談しましょう。

年齢を重ねてもシミのない若々しい肌を保つにはそれぞれのシミのタイプに応じた適切な予防や治療が必要


シミやくすみは年齢とともに増えていきます。特に女性の場合は妊娠、出産を通して肝斑ができることもありますし、30代以降はシワや肌のハリとともに、見た目の年齢を決める重要な要素のひとつになります。

シミには日光黒子、肝斑、雀卵斑(そばかす)、炎症後の色素沈着などさまざまな種類があるため、治療も少しずつ変わってきます。そのため、自分で考えて治療を開始するのではなく、最初に皮膚科の先生に自分のシミがいったいどの種類なのかを見極めてもらうのが大切です。

どのシミに対しても、日焼け止めで予防することは非常に大切ですので、日焼け止めを季節や天気にかかわらずこまめに塗ることは実践する価値があります。肝斑であればトラネキサム酸の飲み薬、ぬり薬がいい治療になりますので、気になっている方は皮膚科の先生に相談してみてください。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。