甲状腺は内分泌器官で、甲状腺ホルモンを分泌する役割を果たしています。甲状腺ホルモンは、新陳代謝や成長を司るホルモンです。甲状腺にかかわる病気には、甲状腺ホルモンが多くなったり、少なくなったり、腫瘤(こぶ)ができたりする病気があります。

甲状腺の病気には、甲状腺の「働き」の変化と「形」の変化という2つの特徴があります。
病気によってその両方の変化が現れたり、あるいはどちらか一方だけが現れたりします。

■甲状腺の「働き」の変化
甲状腺ホルモンをつくる働きが異常を起こし、甲状腺ホルモンが、過剰になったり不足したりするもので「甲状腺機能の異常」といいます。
【甲状腺機能亢進症】
甲状腺ホルモンの合成が多すぎると、全身の代謝が過度に高まります。
【甲状腺機能低下症】
甲状腺ホルモンを作る働きが悪くなると、全身の代謝が低下します。

■甲状腺の「形」の変化
甲状腺がはれたりしこりができたりして形態的に変化するのです。このはれを「甲状腺腫」といいます。

甲状腺は、体の新陳代謝を盛んにするホルモンを作る臓器です。胃腸の病気や肝臓の病気と違って、「甲状腺の病気」といわれても、なかなかピンとこない人が多いと思います。いったい甲状腺はどこにあり、どういう働きをしているのでしょうか。甲状腺の病気を理解するために、まずは甲状腺の位置と働きについてご説明します。

■甲状腺の位置と大きさ
甲状腺は首の前方、のどぼとけのすぐ下にあります。大きさは、縦が4cmほどで、重さが18g前後です。ちょうど蝶が羽をひろげたような形で、すぐ後にある気管(肺につながる空気の通り道)を抱き込むようについています。ごく薄く柔らかい臓器なので、普段はくびを触ってもわかりませんが、少しでもはれてくると、手で触ることができます。さらに、ある程度以上に大きくなれば、くびを見ただけではれがわかるようになります。そのため、「くびの腫れ」から甲状腺の病気に気づく人も少なくありません。

■甲状腺の機能
人の体では、性ホルモンをはじめさまざまな種類のホルモンが作られています。ホルモンを作る臓器を内分泌器官といいますが、甲状腺は内分泌器官のひとつであり、食物(おもに海藻)に含まれているヨードを材料にして甲状腺ホルモンを合成しています。

■甲状腺ホルモンとは
食物として摂取されたたんぱく質、脂肪、炭水化物は、代謝されて体の組織を作るために利用されたり、エネルギーになったりします。甲状腺ホルモンには、こうした新陳代謝の過程を刺激したり促進したりする作用があります。

■脳下垂体の役割
体内では、血液中の甲状腺ホルモンが常に一定の値を維持できるような仕組みが働いています。これをコントロールしているのが、脳の下垂体という部分から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)です。このホルモンは、甲状腺を刺激してホルモンの分泌を促す働きをしています。 血液中の甲状腺ホルモンが増えすぎた場合は、ちょうどサーモスタットのように、下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌量が抑えられ、自然に甲状腺ホルモンの分泌が減少してきます。逆に血液中の甲状腺ホルモン濃度が正常以下になると、甲状腺刺激ホルモンの分泌量が増えて甲状腺ホルモンの分泌を促します。こうした仕組みをフィードバック機構といいます。そのおかげで、血液中の甲状腺ホルモンの量は、常に一定の範囲を維持しているのです。

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気、すなわち甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気です。 ほかの甲状腺の病気と同じように女性に多い病気ですが、その比率は男性1人に対して女性4人ほどです。甲状腺の病気のなかでは、比較的男性の比率が高い病気です。 発病年齢は、20歳代、30歳代が全体の過半数を占め、次いで40歳代、50歳代となっており、青年から壮年に多い病気といえるでしょう。

■バセドウ病の原因は「自己免疫」
バセドウ病は、甲状腺の機能が亢進し、過剰に甲状腺ホルモンを作る病気です。では、なぜこうした異常が起こるのでしょうか。 実は、その異常には免疫が関係しています。免疫は侵入した外敵を攻撃し、健康を維持するための大切な仕組みです。ところが、まれに自分自身の体を攻撃目標とする抗体を作ってしまう病気があります。これを「自己免疫疾患」といい、バセドウ病もこの一種なのです。
バセドウ病の場合は、甲状腺を異常に刺激する抗体が自分の体のどこかで作られています。この抗体が、甲状腺刺激ホルモンの代わりに甲状腺を刺激し、どんどん甲状腺ホルモンを作らせてしまうのです。この抗体は、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンと違って、甲状腺を休むことなく刺激します。 ほかにも慢性リウマチや膠原病など、自己免疫によって起こる病気はありますが、いずれの場合も、なぜ自分の体を攻撃する抗体が作られてしまうのかはわかっていません。ただし、バセドウ病の患者様の15%くらいは親・兄弟も同じ病気にかかっており、このことから考えると、遺伝的な素質もある程度関係しているようです。
しかし、悲観的になる必要はまったくありません。確かに原因不明の病気ですから、バセドウ病を根本的に治療するのは、難しいこともあります。しかし、バセドウ病特有の症状を起こしているのは、血液中の過剰な甲状腺ホルモンです。したがって、血液中の甲状腺ホルモンの量を正常にコントロールしていれば、健康な人とまったく変わらない生活ができるのです。そして現在の治療は、いくつかの方法でそれを実現しています。つまり、きちんとした治療を受ければ、健康で生き生きとした生活を送ることができるのです。

橋本病は「慢性甲状腺炎」ともいいますが、この名はこの病気の成り立ちに由来するものであり、甲状腺に慢性の炎症が起きている病気という意味で、このように呼ばれることもあります。
甲状腺の病気は、どれも女性の方がかかりやすいのですが、橋本病は甲状腺の病気のなかでもとくに女性に多く、男女比は約1対20~30近くにもなります。また年齢では20歳代後半以降、とくに30、40歳代が多く、幼児や学童は大変まれです。
橋本病は、甲状腺に炎症が起きている病気ですが、細菌が入り込んで化膿するといった炎症ではなく、「自己免疫」の異常が原因で起きる炎症です。自己免疫で起こる病気はいくつかありますが、何がきっかけでこのようなことが起こるのか、いまだにはっきりしていません。橋本病はある種のリンパ球が甲状腺組織を攻撃して起こるらしいといわれています。

甲状腺の腫瘍は、良性・悪性合わせて3タイプあります。腫瘍の多くは良性で、悪性のがんも性質はおだやかです。しかし数は少なくとも悪性度の高いがんもあります。そのため診断では、良性・悪性を見きわめるため触診、超音波検査、血液検査、細胞診を行います。良性の場合は経過を見ていけばよい場合も少なくありません。悪性の場合は手術を最優先にアイソトープや薬などを組み合わせます。