Andrew Lowe, DVM, MSc, DACVDによる臨床知識の理解
要約
- 片利共生酵母菌であるMalassezia pachydermatisの表皮過剰増殖
- 犬に診断が下されることが多く、猫ではまれであるが、猫では過少診断されている可能性がある。
- 他のマラセジア属真菌は犬および猫の片利共生生物であると認識されているが、皮膚炎に関与する頻度ははるかに低いようである。
- マラセジア性皮膚炎はアレルギー性疾患、内分泌障害、構造的障害、角化障害に続いて発現し、まれに免疫不全状態により発症することもある。
- 自然環境、および皮膚のひだや耳穴など保護された皮膚微小環境の温度および湿度の上昇が、マラセジア属定着の素因となっていると考えられる。
- マラセジア属は侵襲性ではなく、角質層への限局にとどまる。マラセジア属の産生する酵素がかゆみおよび炎症性変化を誘発する。
- マラセジア属に対する過敏症は、かゆみの重要な寄与因子であると考えられており、アトピーを抱えるヒトと同様に、アトピー性皮膚炎の犬猫での発生頻度が高くなる可能性がある。
- 黄色ブドウ球菌属細菌が同時に過剰増殖することが多い。
- バセットハウンド、ウェストハイランドホワイトテリア、アメリカンコッカースパニエルなどの犬種、ならびにデボンレックスおよびスフィンクスなどの猫種における発現頻度が高い。
どのような疾患か?
- 臨床徴候は非特異的で、以下のようなものがある:
- かゆみ
- 悪臭
- 鱗屑
- グリース状または蝋状の皮膚残屑
- かゆみに伴う自傷による病変
- 色素沈着過剰および苔癬化
- 被毛または近位かぎ爪の赤茶色または茶色の色素沈着(爪郭の病変を伴う)
- 猫ざ瘡
- よくみられる病変部位には以下のようなものがある:
- 外耳道
- 口唇の縁およびひだ
- 腋窩
- 睾丸
- 頸部腹側
- 会陰
- 指間隙および爪郭
- 皮膚のひだ(例、イングリッシュブルドッグなどの顔面のひだ)
重要なことは、ブドウ球菌属感染症および関連病変が同時に存在する場合が多い点である。
ほかに似ている疾患はあるか?
- ブドウ球菌性膿皮症
- ニキビダニ症
- 皮膚糸状菌症
- ツメダニ症
- 疥癬
- 犬甲状腺機能低下症
- 過敏症候群:ノミ過敏症、皮膚食物有害反応、アトピー性皮膚炎、接触過敏症
- 原発性角化障害
- 上皮向性皮膚リンパ腫
マラセジア性皮膚炎が、鑑別診断による上記の疾患と併発する可能性がある点が重要である。
どのように診断するか?
- 診断は皮膚細胞診により確定する。
- 悪臭はよくみられる特徴であるが、その有無が誤診を招く可能性がある。細胞学的評価が強く推奨される。
- マラセジア属真菌の数は変動しやすい。
- 示唆的な臨床徴候がみられる場合、高倍率油浸レンズによる視野観察から得られた3個以上の酵母菌の所見は意味がある。
- 一部の犬では酵母菌数がこれより少なくても臨床徴候が認められる場合がある。
- マラセジア属の過剰増殖によるそう痒が認められる患畜では、マラセジア属抗原の皮内注射に対する陽性反応またはマラセジア属特異的IgE量の増加が、マラセジア性過敏症の診断の裏付けとなる。上記の診断法はルーチンに実施するものではなく、診断を下すために必要なものではない。
どのように管理するか?
- 治療には、基礎疾患の管理ならびに外用療法や全身抗真菌療法がある。
- 反復細胞診による再チェックを治療開始後1~3週間、ならびに臨床的治癒および細胞学的治癒の約1週間後に実施する。
- 一般的な治療期間は3~4週間である。
外用療法
- 外用療法は、マラセジア性皮膚炎の全症例に実施し、また全身症状に対する全身療法と併せて利用する必要がある。
- シャンプー療法は、理想では1週間に2~3回実施するのがよい。シャンプーは症状回復まで継続し、再発を予防するため週1回の頻度で継続することができる。接触時間は10分間以上がよい。
- 有効成分を以下に挙げる:ケトコナゾール1~2%、ミコナゾール2%、クロルヘキシジン2~4%、ベンゾイルペルオキシド2.5%、硫化セレニウム1%である。
- 酢酸2%およびホウ酸2%、クロルヘキシジン2~4%、ミコナゾール2%、またはケトコナゾール1~2%を含有するスプレーおよび拭き取り布を、症状回復まで24~48時間おきに使用し、その後は再発を防止するため1週間に1~2回の頻度を維持するとよい。
- 以下の有効成分を含有する洗い流し不要のリンスを、単独療法または補助外用療法として用いてもよい:酢酸2%、ケトコナゾール1~2%、ミコナゾール2%、クロルヘキシジン2~4%。ホワイトビネガーと水(1:3)の混合溶液を、洗い流し不要の酢酸リンスとして用いてもよい。
- 限局性の乾燥症状には、抗真菌ローション、軟膏、クリームを毎日塗布することにより治療することができる。
- 有効成分には次のものが含まれる:クロトリマゾール1%、ミコナゾール1~2%、テルビナフィン1%、チアベンダゾール4%、アンホテリシンB 3%、ナイスタチン
全身(経口)療法
- 全身抗真菌治療は、全身性または多発性のマラセジア属コロニー形成を有する患畜に推奨され、外用療法のコンプライアンスが不良の場合は単独療法として用いることもできる。
- 全身療法は経験的に選択される。マラセジア属の培養および感受性試験は検査室で日常的に実施されないため、信頼性の高い再現可能な感受性のブレークポイントはまだ確立されておらず、臨床的有効性との関連性も示されていない。
- 一般的な治療期間は3~4週間である。臨床的奏効および細胞学的奏効を評価するために、再チェックが推奨される。
| 薬物療法 | 用量 |
|---|---|
| ケトコナゾール | 5~10 mg/kgを24時間おきに経口投与(PO) |
| イトラコナゾール | 5~10 mg/kgを24時間おきまたは1週間に2日連続でPO |
| フルコナゾール | 10 mg/kgを24時間おきにPO |
| テルビナフィン | 30 mg/kgを24時間おきまたは1週間に2日連続でPO |
- ケトコナゾールおよびイトラコナゾールは、吸収を最良にするため、食物とともに投与する。
- アゾール系抗真菌薬は、肝毒性を誘発する可能性があるため、肝毒性を有する患者では投与を控えるか、慎重に投与する必要がある。このクラスの薬剤では薬物相互作用が多くみられる可能性があるため、併用薬を判断する必要がある。アゾール系抗真菌薬の長期使用については、肝毒性を評価するため、血清生化学プロファイルの検討が必要である。
- 用量10 mg/kg以上のイトラコナゾールで治療された犬の7.5%に、血管炎および皮膚潰瘍が発現する可能性がある。
免疫調節
- マラセジア属の抗原を、アトピー性皮膚炎を治療中の患畜の免疫療法用製剤に含めてもよい。しかし現時点では、マラセジア性過敏症が疑わしい症例における免疫療法の有効性のエビデンスは不足している。
コメント
- 最もよくみられる治療失敗の原因は、治療期間の不足および皮膚の基礎疾患の管理失敗である。
- アトピー性皮膚炎の患畜については、特にヒダや指趾間部の外用維持療法が、再発防止およびかゆみの治療に有用である。
- ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾールにin vitroで抵抗性を有するマラセジア属が記録されている。しかし、in vivoでの抵抗性については十分な記録がない。
参考文献
- Miller, William H., Griffin, Craig E., Campbell, Karen L. Muller & Kirk’s Small Animal Dermatology 7th ed. St. Louis: Elsevier, 2013 (243-249).
- Nuttall T. Harvey G. McKeever. PJ. Skin Diseases of the Dog and Cat. 2009.59.