紫外線のダメージを避け、皮膚がんを予防しよう
美白は女性だけのものではない!
男性もしっかり紫外線対策を

国立がんセンター 皮膚科 院長
山本明史 氏


夏場の浜辺や屋外プールでは、のんびり日光浴を楽しむ人が多いが、気になるのは紫外線対策だ。なぜなら、環境汚染によって年々増える紫外線の量と共に、日本人の皮膚がん発生数は年々高まっているからだ。
しかし、皮膚がんについてはあまり詳しく知られていないのが現状であり、紫外線対策に無頓着な人は多い。30年以上、皮膚がんの研究に取り組んでいる国立がんセンターの皮膚科 医長である山本明史氏に、日焼けと皮膚がんについて話を聞いた。

聞き手・文/梅田正隆、写真/渡 徳博
2005年8月18日

まず「日焼けはやけど」という認識を持つこと

――日焼けによる皮膚のダメージについて教えてください。

国立がんセンター 皮膚科
医長 山本明史氏

山本:
 日焼けはやけどである、という認識がまず必要です。やけどは症状によって、「I度熱傷」「II度熱傷」「III度熱傷」に区分されますが、日焼けの場合は水泡が生じるII度熱傷になることもあります。やけどとしての日焼けの特徴の一つに、受傷の範囲が広い、ということがあります。

 やけどの重症度の判定は「深さ×面積」で行うので、同じ水泡ができるやけどであっても、受傷面積が広い日焼けと、面積が狭いやけどでは、重症度が違います。なぜなら、やけどによってできた水泡の中身は体液であり、受傷面積が広いほど失われる体液の量は増えるからです。このことにより、体液のバランスが崩れ、生死にかかわる可能性も高まるため、受傷面積が広い日焼けは危険なのです。

 次に問題なのは、日焼けによる色素沈着で出来るシミです。シミは、太陽の紫外線から身体を守ろうとするメラニンが起こす防御反応で、この反応がどんどん積み重なることで肌は黒くなります。しかし、同時に皮膚へのダメージも積み重なり、皮膚がんの発生につながる可能性が高まります。特に若い人は、そのことをよく知らないので、進んで肌を焼いてしまう人が多くいるので心配です。

皮膚がんの知識が足りない日本人

山本:
 白人と日本人を比較すると、白人の皮膚がんの発生率は日本人の数十倍です。白人のすべてのがんの発生率の中で、一番多く発生しているのが皮膚がんなのです。白人の皮膚はメラニンが少なく、紫外線に対する防御機構が日本人より低いのが理由だからです。そのため白人は皆、皮膚がんに関する知識をきちんと持ち、紫外線対策を行っています。

 現在も、引き締まって健康的に見えると肌を焼く人は多いようですが、皮膚にとって良いことは全くありません。海外旅行に行って、肌を焼いているのは、日本人の若者ぐらいです。海外の皮膚がん研究者からは、「いったい日本は、どうなっているのだ?」と質問されることさえあります。専門家にしてみれば、日本の若者がこぞって肌を焼く行為は、自ら命を縮めているに等しい行為なのです。

 一方、日本人は白人よりも肌が強いため、皮膚がんの発生数が少ないためか、皮膚がんに対する知識も不足しています。このところ日本人の皮膚がんが増えている理由として考えられることの1つに、「日焼けした肌の方が健康的だ」という間違った認識が過去にあったのでしょう。数十年前の健康ブームで、肌を一生懸命焼いた人が、いわゆる『がん年齢』と呼ばれる50歳代から70歳代を迎えているため、と思われます。

 高齢者は、老化によって免疫力が落ちてきます。がんのような異常細胞が発生した際、若い頃はそれを“取り除く”力がありますが、高齢になると、その力が衰えてくるため悪い細胞が育ってしまうのです。

――日焼けを原因とする皮膚がんにも、いくつか種類があるのですか?

山本:
 紫外線の影響を受けて起こる皮膚がんの代表的なものが、『基底細胞がん』と『有棘(ゆうきょく)細胞がん』、『悪性黒色腫』です。

 日本人に一番多く発生しているのが、表皮の下層部で起こる基底細胞がんです。60歳代以上に占める割合が約70%という点から、長期間にわたって浴びた紫外線によって引き起こされている可能性が高いとされています。発生部位としては、日光にさらされることの多い頭と顔が80%を占めています。基底細胞がんは、転移をほとんど起こしませんが、放置していると増殖し、筋肉や骨などに転移するので早めに治療することが大切です。国立がんセンターが行った全国皮膚がんアンケート調査では、日本では、毎年10万人に5人以上発生していると推測されています。

 次に日本人に多く発生するのが、有棘細胞がんです。その前段階として起こる状態のひとつが、日常的に日光に当たる顔や手の甲などの上層部に発生する『日光角化症(にっこうかっかしょう)』と呼ばれがん前駆症で、これを放置すると20%から30%が有棘細胞がんに移行すると言われています。

 前述のアンケート調査の結果では、日本では10万人に約2.5人の割合で毎年発生すると推測されており、「1.7:1」の割合で男性に多くなっています。非常にゆっくり進行するためか、全体の患者数のうち40歳未満が占める割合は2%程度ですが、加齢とともに患者数は増加傾向にあり、全体のおよそ60%が70歳以上です。

 そして、最も悪性とされているのが、ホクロのがんと言われる『悪性黒色腫(メラノーマ)』です。メラニン色素を生産する「メラノサイト」と呼ばれる、色素細胞やホクロ細胞が悪性腫瘍に変化したことで起こるがんで、現在、人口10万人に対し約1.5人が発生していると推測されています。悪性腫瘍に変化する詳しい理由は分かってはいません。白人の発生率が高いとされてきたがんでしたが、日本でも増加傾向にあり、最近は、特に若者と高齢者の発生数が増えています。これは、衣食住や生活習慣が欧米化してきたことと関係があるのかもしれません。

悪性黒色腫発生の推移(1987~2001年)
環境省『平成16年度 オゾン層等の監視結果に関する年次報告書』より引用
全国の医療施設を対象に調査。1987~1996年は、200施設に対して調査を実施し、100施設から回答を得た。1997~2001年は、171施設に対して調査を実施し、94施設から回答を得た。(出典)皮膚悪性腫瘍統計調査

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