ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 【腐向け】リヴァエレ現パロ年齢逆転7【自給自足】2017年6月14日 23:53「よく来てくれたね。とりあえず、君たちにはこれをつけてもらう」 対、外の人間向けの笑顔は、案外人の良さそうな其れであることを知ってはいた。普段の覇者の雰囲気が和らぐが、それでもどうにも上に立つもの特有の圧力は隠しきれない。並んだ学生バイトたちが、その違和感に幾人か、たたずまいをただしてその言葉を聞いている姿を見守る。 さて、ここでその小さい変化を見せた奴は割と使えると思う。それ以外は普通ののんきな学生だと脳内で仕分けを行う。 与えられた許可証は、出入りする社員以外の全てに配られるものだ。一応、そのあたりは昨今の社会情勢を鑑みて対策をする。ここの警備員はやたらとごついのが多い。それも含めて。「簡単に言うと、ホームパーティーの規模を大きくしたものと考えてもらっていい。飲食物の扱いはあるけれど、基本は配膳やら片付けやらの力仕事を頼むことになると思う」 ちなみにの話であるが、年に三回ほど開催される懇親会は会社の中庭で行われたりもする。そのために正式に飲食店とおなじ許可を得ている会社などそうそう無いだろう。でもね、一部の人間は知っている。それらに必要な書類やら見積もりやら段取りやら、ほとんど全てに彼女が関わっていると言うことに。それも社長がしたいからそうしているという。あの、実に自由でいいんじゃないかと思う。たぶん。「詳細は彼らに聞いて欲しい。私は少し離れるから、後は頼む」 こちらに視線を向けた、先輩の瞳はいつもながらの強い眼光を無理矢理に押さえつけていた。うんうん、うちの部署の人間は知っている。一週間前にいきなり社長が言い出したことだって知ってる。社内だけの規模と言っても、器具のレンタルやら食材の手配やらとカツカツどころじゃなかった。 ――あいつ、自分が結婚式やるんだって忘れてねえよなあ。何なんだろうなあ。 覇気も無ければ、そもそもが誰に聞かせるわけでもない。答えが返ってくることも求めていない、ただ心が溢れてしまっただけ。そんな小さくも弱々しい言葉を、彼女の口から聞いた。そのときの場の空気をお伝えしよう。まさに時よ止まれ、そんな状況。 急ごしらえとは言え、無茶ぶりをさばき続けた彼女に死角はなかった。と、言うより社長が丸投げするからお前がそう来るのならば私はこうだ、文句など言わせないぞどうだ的な開き直りから全てのことは定まった。 通常業務を他の部下たちに振り分けつつ、あらかたの準備を整えたところで、先輩に社長からメールが届く。わあ、ありがとうすてきだね。先輩は幽鬼のような表情で、デスクに拳を叩きつけた。 この後、やっと目前に迫った式のための調整を社内で行うらしい。調整と言っても、ただ単に社の行う予定をあれこれ入れ替えるだけなのだが、なぜそれに彼女が参加するのか。式の内容を把握しているのが彼女しか居ないかららしい。目元を手で覆って天を仰いだのは、何も俺だけじゃない。「悪いな、急で」 許可証を首から提げたリヴァイは、いつも通りの仏頂面で頷いて見せた。何度か出入りしていると言うこともあり割と直ぐに指示を理解してくれるので使いやすい。自然と指示がリヴァイに集まり、その様子を見た他の学生たちはリヴァイにまず確認をする、という図式ができあがっていく。 予定時間もあと少しだが、ほぼ予定通り、滞りなく整った。と、言った段階で、氷を移動するべく食堂へと行くことにする。業務用の製氷機は常に大量の氷を作り置くため、水道がない場所には設置ができない。これが夏であれば忙しく往復する必要があったことだろう。「リヴァイ。休憩前に、ちょっと手伝ってくれ」 几帳面な性格からか、リヴァイの整えたテーブルにはグラスや皿の位置に至るまで、ひとつの乱れもない。納得のいく出来映えだったのだろうか、わずかに機嫌が良さそうである。「わかった」 労働時間に見合う休息を取らせることも必要で、ちょうどほぼほぼ準備も整っている。後は数名、いつものメンツが数人ずつ食事をさせる程度の余裕はある。食堂の一角で食事を取ってもらうのが一番都合がいいだろう。 頭の中でその後の予定を組み立てつつ、リヴァイと連れだって食堂へと向かう。急な依頼だったというのに快く引き受けてくれたというのに、決まった金額しか渡してやれないのが心苦しいところだ。個人的に何かをしてやりたいのは山々だが、正直な話飯連れて行ってやるくらいしか浮かばない。「おまえ、今日の夜予定あるか?」「ない」 瞬時に返ってくる言葉に、逆に不安になる。ちゃんとお友達作ってる? いじめられてない? いや、いじめられるっていうか怖がられて避けられたりとかしてない? せっかく話しかけてくれた子に愛想よくしてる? 日常的に酷い目つきなんですけど、でもうちの子悪い子じゃないんですよ、ちょっと感情表現が苦手なだけなんです。「何かもう、飯作るのもめんどくさい。どっか食いに行くぞ」 できうる限り楽をしたい。休めるところ、手を抜けるところはできうる限り。食えれば何でも良いのだけれど、うまいものを食いたいのも確かである。さじ加減が難しいな。 お互いに顔を見合わせたときの驚愕といったら無かった。順番待ちの椅子に座る子供達の向かいに立った状態で話をしていた女性に見覚えがあり、いやまさかとその覚えを打ち消した直後、その人物が振り返る。目と目が合う。たっぷりの沈黙の後に、出てきたのは当たり障りのない挨拶だった。「……こんばんは」「……こんばんは」 間違いなく、一度見なかった振りをしようとしていた。面倒そうな、と言うか、気まずそうな、と言うか。珍しい表情だ。まるでまずい場面を見られたみたいだ。「結構待つと思うぞ。混み合っているから。私たちでもう二十分待ってるな」 ジャケットを脱いだ立ち姿はまさに仕事帰りの会社員だ。目の前に座っている子供は二人。一人は、高校生くらいに見える女の子。と、いうより、制服を着ているのでおそらくそうだと思われる。もう一人は男の子で、十歳前後に見える。どちらも大人しそうな外見をしているが、先輩とはまるで違う雰囲気だ。「……お子さんですか」「はは、そう見えるのか」 数ある選択肢は間違いだったらしい。心のこもっていない愛想笑いを返された。明らかに機嫌を損ねられたというのに、それでも普段より対応が柔らかいのは子供が目の前に居るからなのか、それとも俺が連れているリヴァイの所為なのか。基本的に先輩のそれは外の人間には見せない凶暴性であるから。 子供達は会話に入ることもないが、目が合えばそれぞれが会釈をした。よくよく見れば整った顔立ちと、なんとなく見覚えがあるような。「あー……この子らは」 説明の言葉を探しているらしく、なんとも歯切れの悪い、珍しい姿だ。「席開いたよー」「……本当に間が悪い」 頭が痛いとばかりにこめかみを押さえる彼女は見慣れたものだが、奥からひょっこり顔を出した男もそれなりに見慣れた顔をしていた。見慣れたどころか、と、いうか。「社長」 いや、何でここに。ここ一人千五百円の食べ放題ですけど。と言うか何で先輩と社長と子供が一緒にご飯食べるの。ここ一人千五百円の食べ放題なんですけど。いやうまいけど。千五百円だよ。 にこにこと子供達を促す姿は良い父親のように見える。例えばばつが何度もつく結婚生活を送る男だとして。派手な私生活に似合いのスタイルの良さだ。スリーピースのスーツはこう着こなすんだとばかりのかっちりきっちり正統派の美丈夫。とある友人がとてもお気に召しそうな感じで勝手に申し訳ない。 すると、途端に女子高生が下の子を連れて奥の方へと消えていく。その際にぺこりと頭をもう一度下げて。清楚で可愛らしいお嬢さんである。ああいう楚々とした雰囲気を持った女性とはしばらく交流がない。もしや何れ彼女も怖ろしいゴリラのような存在になってしまうのかも知れない。いや、逆に考えるんだ。女性とは元々ゴリラだったのかも知れない。「……あれ? 君、なんか見覚えあるような」「お疲れ様です。自分は」「あ、ちょっと待って思い出せそう」 社長は立ち尽くしたこちらに唐突に興味を移したようだった。名乗ろうとしたというのにそれを手振りと言葉で制され、困惑しか浮かばない。記憶を掘り起こそうとしているのだろう、まじまじと見つめられ、思わず背筋を伸ばす。なんだこれ。なんだこの状況は。 ずいと顔を近づけられたため、思わずのけぞる。ふわっと良いにおいが漂うほどに近い。本当に良いにおいがするのがちょっと困る。顔がいいとはいえ距離感ないなこの男。この男って思ってしまったのも仕方が無い。これは諸悪の根源だったのだ。いや今は関係ない。そして距離が離れない。ちょっと至近距離に耐えうる見た目でも勘弁して欲しい。 見かねた先輩がそれを抑えるように、肩を掴んで後ろへと引いた。「あんたの部下だよ。いいからもう着座しろ頼むから」「あ、そうか。しょっちゅうわんちゃんみたいについて回ってたから見覚えが」「わかった後で聞いてやるから奥に行こう、な。早く来いっ」「ここ混んでるし一緒に食べる? 多分良いっていうと思うし」「上司一家と夕食なんて拷問以外の何者でもないだろ。良いから来いつってんだろ!」 声を落としてはいるが彼女の怒声は割と心臓に負荷がかかる。多分反射だろうと思う。「邪魔したな。また後日会社で」 先輩はしっかりと俺とリヴァイの両方へと視線を合わせて詫びた。どうしたのとばかりの表情で先輩の顔をのぞき込む社長を押しのけて、もう一度重ねる。「すまん。忘れろ。これの言動は酒の所為とでも思ってくれるとうれしい」「やだなあまだ飲んでないだろ。別に二人くらい増えても平気だろう? 人数多いと楽しいよ」「本当唐突にポンコツになるのやめてくれないか? 頼むから口を閉じるか呼吸を止めろ」 先輩の言葉が社長にうまく通らない。従うことになれてしまった俺には到底理解できない状況である。ちら、と先輩の視線が俺の後ろにいるリヴァイに向いた。そうですね俺はともかくリヴァイ的にはちょっと厳しいと思います。この小割と人見知りするんで。そのあたり察せるなんてさすがです。「水入らずなのはお互い様だろ。なんだ何が気にくわない」「だって、結構待つと思うよ。良いじゃないか別に」「だってじゃないだろう。間と空気の読み方は習得済みだろうがふざけるなよ」 年齢差がちぐはぐになったような会話を見守るより無かった。最終先輩が腕を引いて連れて行ってくれるまでそのやりとりを聞いてしまっていた。どちらかというと母親と子供みたいなやりとりに見えたのだけれど、上司と部下の会話ではないのは明白だった。え、何それどういうこと。 女子高生はまずないと言えるが下の子は十歳くらいに見えたということは先輩の年齢を思えば不可能と言えなくもないので――やめろ、考えるな。だめだこれは触れてはいけない。「なあ、リヴァイ」「……何だ」「店、変えようか」「……わかった」 言われたとおり見なかったことにしようと思う。もしかしてとんでもないものを見てしまったのかも知れないという恐怖がじわじわと沸いてくる。本能がここから去れと警鐘を鳴らしている。仕方なしに別の店を探すべく携帯を探る。なんかもう、何もしていないのに疲れてきた。 歩きながらちらりと横目でリヴァイを見やる。誰が悪いわけでもないのだが、空腹だろうに申し訳ない限りである。 それにしてもどの角度から見ても、美形というものは美形なのだな。ふざけた態度を取っても様になるあたりが憎らしいような、羨ましいような。けれどときめかない。何だろうなあ。 ああでも、あのにおいはちょっとくらっとくるかも知れない。体臭と混じり合った、整髪料と、柑橘系の香水の香りが混じり合った独特の匂いだ。体臭ってポイントが高いんだよ、臭いだけでお断りするのも多いし。臭いって感じるの、最も単純な拒否反応じゃないかって思う。「俺、はじめて社長と話したんだけどさ」 近くにある居酒屋のひとつで手を打つと決めた。大衆向けの価格設定で、何度か行ったことのある店だ。先ほどの店と比べると出費は増えてしまうが仕方が無い。腹が減っているんだこっちは。「なんかあの人、すっげえいいにおいしたわ」 この驚きというか感想を共有したくての発言だったのだが、リヴァイはどうにも複雑な表情であった。いや、すっげえ良い匂いだったんだって。 ぬるくなった酔い覚ましの水を口に含んで、彼女は細く吐き出した。隣の席では羽目を外した同僚たちが騒がしい。大口を開けて笑いながら次々にグラスを空にしている。この酒の席は、通常業務ではない結婚式の準備に追われていた我らが部署をねぎらうために彼女が開催したものだ。小ぢんまりとした飲み屋を貸し切っての席は、ほかの客を気遣い必要がなく、普段よりもお互いの距離が近いような気がした。「私が産むわけ無いでしょ。下の子は四人目の妻との子だよ」「あ、そっかー」 それは言い訳なんですかねという感想を確かに抱いたが、本人がそう言うのならばそうだと思うより無い。聞くまいと思っては居たのだけれど、お多賀に酒を含んだ時点でそのあたりの決意やら気遣いやらがどこぞへと吹っ飛んだ。 口に火のついていない煙草をくわえながらだろうか、それとも含んだアルコールか。普段よりも若干口調がやわく砕けて、幼さのようなものを感じる。そんなことが頭によぎる程度にオレも酔っている。恐怖心は間違いなく薄れている。隣り合って座ることに何の緊張もないのは、なんとも新鮮な心地だ。「彼にも申し訳なかったな」 彼、と、あの謎の出来事を紐付けると一人しか思い浮かばない。「ああ、リヴァイですか」「……まえに、様子がどうの、言ってただろう」 彼女の言葉はこちらの返答を求めていたわけではなかったらしい。ちらりとこちらを見やる視線に若干の呆れを感じる。それとは別のなにかも見え隠れしているが、基本的にオレは彼女の喜怒哀楽以外の細々とした考えはわからない。怒られたくないからね、そこだけ気を付けてるからね。「あれじゃないの。恋煩い」「……? こいわずらい」「いや、言い切れないところは確かにあるんだけど」 手元のライターで煙草に火をつけて、すうと大きく煙を取り込んだ先輩は、アルコール交じりの煙を吐き出して何を考えているか全く読めない黒目でこちらを見つめてきた。いつものきつさがない視線は、見つめられることに居心地の悪さがなかった。「愛だの恋だの、そういう類のものじゃないかと思う。心当たりはないのか」 愛とは、実に面妖で不可思議である。 例えば、君がいないと仕事が何も手につかなくてどうでもよくなってしまったり。どんなにも口に合わない料理も君が作ったものならば毒ですらごちそうになってしまったり。暴言も悪口もすべて丸ごといとおしく感じるようになったり。世界の滅びと天秤にかけるまでもなく、君が大事であったりとか。そういう。あ、オレの話ではないです。断じて。強いてあげるなら、友人の話だ。性交渉をする方の友人の。 同居人である、年下の青年の感情の機微がいわゆる『恋煩い』ではないかと、唐突に口にしたのは愛だの恋だのとは無縁の世界で生きていけそうな世紀末の世界の住人、つまり俺の先輩にあたるその人であった。まさかこの人からそんな単語が飛び出してくるとは。しかもこんな普通の場面で。 その方向は考え付きもしなかった。というかその単語が先輩から出たことの衝撃もあり、数秒間のあいだ『恋』という単語を反芻した。脳内で。言われてみればあの年頃の男なんてものは彼女が欲しくてとりあえず下半身の命に従っているのが多かった。特に俺の周りのアホどもはそんなんばっかりだった。自分がそんな時期を問うりすぎて久しいとはいえ、毎日一緒に過ごしていて気づかないとは非常に頭が痛い。 バイトしたいと言い出した時、そんな考えが確かによぎったことはあったのだ。そうか、その相手とうまくいっていないというかそういうことじゃないのか。いや、しかしそもそもアイツ普段基本家から出ないから、もしやアイツの完全なる片思い。何の進展もなく散ってしまったのか、恋が。「マジですか、あー。そっちか……」 このところ結婚式の準備で忙しかったからな。しかも他人の。手近な人間に相談することもできなかったに違いない。知っていたらヤケ酒くらい許してやったというのに、奴は案外まじめだから自ら進んで法に踏み込んだことはしないのだ。「……かわいそーに」「え?」 俺を見やりつつ、先輩は小さく小さくつぶやいた。聞きとれても、その言葉の意図がわからず聞き返す。「いや、わからんならいい……」 彼女はそれ以上は語ることはないといわんばかりに、氷の溶けきったグラスをあおった。 話しかけようとしたその瞬間、酔った同僚の一人が先輩の名を叫んだ。嗚呼、そういえば彼女を追い出す会も兼ねているんだった。先輩の宴会前の軽い口上は、いつも以上に男らしかった。縋るように抱き着いた女性の同僚を無視して肴をつつく姿も、これでもう見納めである。「苦労するのは、私じゃあないからなあ」 ん? なんか不穏なつぶやきが聞こえてくるぞ?