掲載: 2014年03月05日 17:59

更新: 2014年03月05日 17:59

ソース: bounce 364号(2014年2月25日発行)

インタヴュー・文/出嶌孝次



点を線に変えるビート、さらに円にするマイク——こいつらはいま最強だ!!!!!!!!





もう、いきなり中身の話でいいだろう。その年を代表する重要作として受け止められた『Page 1: ANATOMY OF INSANE』からおよそ28か月。SIMI LABのセカンド・アルバム『Page 2: Mind Over Matter』が威風堂々と姿を現した。



もっと突き抜けた感じ

紆余曲折を経て現在の彼らは6MCと2DJを擁する集団へと拡大している。前作にも数曲だけ参加していたUSOWAとJUMAはその間の活動を通じてパーマネントな存在感を確固たるものにした。さらに、前作リリース直後にはDJ ZAIが、昨年にはもともとトラックも自作しながらソロMCとして活動していたRIKKIが加わり、現在の陣容へと至っている。

DJ ZAI「JUMAとは16、7からの長い付き合いで、ファーストが出た2週間後とかに遊んでる時にOMSに誘われて。もともとその前から地元のイヴェントとかで遊んだり、自分のミックスCDにシャウト入れてもらったりとかしてたんですけど、誘ってもらえて凄い嬉しかったですね」

OMSB「アルバム・リリースが嬉しかったから誘った(笑)。上手いスクラッチっていう要素がSIMI LABにあったらいいなと思ってて、ZAIちゃんがいるじゃんと思って」

RIKKI「SIMI LABはJUMAから“WALKMAN”のPVを教えてもらって、おもしろいグループだと思ってはいました。ここにしかないような音がありますし、僕も前から自然に身体の動くような音楽が好きなので、それを続けていって日本のリスナーの感覚を変えたいと思っています」

ただ、OMSBにDJ ZAI、DyyPRIDE、MARIAのソロ活動も同時進行だったとはいえ、グループによる初作後の初音源は、2012年夏の“We Just(Demo Ver.)”まで待たねばならなかった。

OMSB「自分のソロも並行しながらだったけど、ファーストを作り終えた頃からずっと取りかかってて、“We Just”の頃にはもう半分以上ビートは集まってましたね。とりあえず自分の中で理想的なビートを集めて、最初はHi'Specに〈こういう感じで考えてるけどどうかな?〉って訊いて」

Hi'Spec「最初にOMSからアイデアを聞いた時にビートの世界観は伝わったし、俺もその感じが凄い好きだったんで、いいと思うって話しましたね」

プロデュース/ビートメイクを行うメンバーも多いものの、前作同様に核となるのは(WAH NAH MICHEALなど諸名義も含めて)OMSBのトラックだ。

OMSB「今回は前よりももっと突き抜けた感じっていうか、明確な作品にしたいと思ってました。ファーストはやりすぎない良さがあったと思うんですけど、いろいろあったし、ここで一回シャキッとしたかったというか」

Hi'Spec「OMSと話してた頃は、自分がゴリゴリのトラックってそんなに作れない時期だったんで、今回の俺の役割は、優しい……穏やかな雰囲気のビートを提供することかなと思ってました」

OMSB「自分としてはビートで世界観を作り上げて、そこからはメンバーそれぞれに任せられたかなと。人数が多いのは相当悩んだところで(笑)、テーマを決めてヴァース書いて録ったけど、いま以上に長すぎる曲とかもあったし、9月か10月ぐらいにはだいたい録り終わってたけど、そこからの試行錯誤がありましたね」



自然とそうなった

そういった試行錯誤とバランス感覚が奏功してアルバム全体に大きな流れが生まれているのは確かだろう。イントロ後の“Avengers”から、「アベンジャーズ」さながらに〈Show Off〉する6MCのハードコアなリレーにMUJO情の血気盛んなビートとZAIの鋭いスクラッチがガソリンを注ぐ。とりわけUSOWAがパンチラインを連発する“Karma”の挑発的な無骨さもカッコ良いし、ブヨンブヨン轟くWAH NAH MICHAEL印のトラックが危険な“Mind Over Matter”も6者6様の暴れっぷりが魅力的だ。「ライヴでやったら楽しそうってのはビートの段階から考えてた」(OMSB)という言葉の通り、前作以上に臨場感のあるビートやフックで耳を惹く曲が多いのは、数年かけて習熟してきたパフォーマンスを反映したものでもあるだろう。サウンド面もそうだが、今回はとにかくラップが熱い。ともすればある種の偏見も込みで〈新世代っぽさ〉を賞されることも多かったグループだが、そうしたものをかなぐり捨ててでも前に進もうとする逞しさがあって、この斜に構えない力強さには胸が熱くなる。

MARIA「ソロは楽しめればいいってのが大前提なので肩の力を抜いてやってるけど、SIMI LABでは競争する相手がいるから負けたくないっていう気持ちが出てきますね。メンバー同士でも〈あのラップ超いいね、ヤバいよ〉とか言われたら嬉しくなるし。私もズバ抜けてヤバいのを聴いたら電話して言うし」

DyyPRIDE「電話かかってきたことないけどね(笑)。俺もソロのほうが好きに自分の世界で完結してるけど、そこまで違いは意識しないですね。前作では曲によって〈俺が軽く流したほうが曲全体の雰囲気が良くなるかな〉とか考えて作り込まない部分もあって、ソロとの差はけっこうあったんですけど、今回はもう殺し合いだなぐらいの気持ちでやってるんで、次のソロを作ったとしてもグループと差がないかもしれない」

OMSB「胸ぐらのつかみ合いみたいなところもあるからね」

DyyPRIDE「お互いそういう気持ちはあると思うんですよ」

USOWA「かまそうという前提はあるんですけど、グループは団体競技感があるというか、その場の曲の空気に合わせてノリが変わっていったりするし、イレギュラーなことが起こったりするのが俺は楽しいかな。ソロじゃ出ない自分が引き出されるというか。前作はほぼ参加してないのと同じテンションだったから、今回はガッツリやれて良かったです」

JUMA「俺は前々からキャラクター性がどうこう言われてたから、あんまり周りを気にしないで自分の頭から出てきたものをおもしろおかしく聴かせれば大丈夫かな、ぐらいの感じで普通にやれましたね。脚光を浴びたいからソロも楽しく作ると思うけど、SIMI LABだと皆が塗り絵を描いてて、〈じゃあ俺ここの色塗るわ〉みたいな楽しさがある」

そんなJUMAのノリノリが映えるGファンクめかした“Street”もあれば、サックスで菊地成孔の参加した“Dawn”や、6MCが浮遊する“Come To The Throne”のようにディープな幻惑ジャズもある。6本マイクの曲ではHi'Spec制作の“Circle”もポイントで、心情を滲ませた個々の言葉と温かい雰囲気から浮かび上がってくるのは、いまの彼らが強固にしたチーム感の確かさだ。

DyyPRIDE「ライヴとかやってる量も前の時点とは全然違うし、自然とそうなったのかなというのはありますね。あと変な話、お互い本当に仲良くなったのって最近なんですよ(一同笑)。もともと仲は良いけど、本当にどういう奴かっていうのが深くわかってきたのって、ここ1年とか半年で。そうやって自然に距離が縮まってきたのが、自然に出てきた感じですね」

ゴリゴリの勢いと熱気を見せながら、思いのほか率直な人間味も含めてグループの現在地を刻み込んだ『Page 2: Mind Of Matter』。〈この生活がいつまで続けられるか? 俺たちが楽しんでる限りは永遠だろ〉——“Yawn”でUSOWAがまったり呟く言葉も、このヴァイブに包まれればまるで気恥ずかしく響かないはずだ。



▼関連盤を紹介。
左から、SIMI LABの2011年作『Page 1: ANATOMY OF INSANE』(SUMMIT)、3月19日にリリースされる菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールのニュー・アルバム『戦前と戦後』(TABOO)