2011年10月03日
プリロードの話
世の中、勘違いの方が主流、なんてことはしばしばあるんですが、
今回はそんなお話です。
『プリロードをかけると、サスは固くなる。』
これがかなり多い勘違いです。
この画像のようなネジ式車高調(ロアシート調整式車高調)がとあるクルマに
付いているとします。
バネは自由長(バネ全長)200mm、バネレート5kgf/mm、ダンパーのストロークは
80mmとしましょう。(RX-8用DFVのダンパーがそうなので)
バンプラバーはとりあえず無いものとします。
これを取り付けているクルマは、分かりやすいように
・車両重量 1,000kg
・前後重量配分 50:50
・1輪荷重 250kgf
・レバー比 1.0
とします。
まずプリロード0mmの状態を考えます。
クルマをリフトアップした0Gでは、A(アッパーマウント)と
B(スプリングロアシート)の間は200mmです。
このクルマをリフトから降ろして1G状態になると、1輪に250kgfの荷重がかかる
ので、車体に固定されたAに250kgfかかり、Aは押し下げられ、5kgf/mmのバネは
50mm縮みます。
この時、AB間は150mmになります。
ダンパーのロッドも50mm縮み、
・あと30mm縮むことができる(あと150kgfの荷重に耐えられる)
・あと50mm伸びることができる(荷重が0kgfになったら伸びきる)
という状態になります。
このように縮む余地が30mmしかないとなると、もしロッドに20mmのバンプラバーが
付いていれば、ダンパーケースがバンプラバーに当たるまでに縮む余地は10mmしか
ないので、+50kgfの荷重でダンパーケースがバンプラバーに当たりはじめてしまいます。
では、Bを10mm上に移動して、プリロードを10mmかけてみます。
リフトアップして0Gになると、AとBの間は190mmです。
AとBは、バネに対して50kgfの圧縮圧力をかけていて、バネは50kgfの反力で
伸びようとしています。
※AB間は最大で(ダンパーのロッドが伸び切った状態で)190mmですから、
自由長190mmを超えるバネが付いていたら、必ずバネは190mmに縮められます。
(線間密着をしない限り、ですが)
逆に、190mm未満のバネが付いていたら、例えば180mmのバネを付けたら、
バネの上部に10mmの遊びができ、バネはぐらつき、ABはバネに対して縮める
働きを一切しません。
200mmのバネをスプリングコンプレッサーで190mm未満に圧縮して取り付けても
同じことです。
AB自体はバネを190mmより短くしようとする作用は全く発揮しません。
このクルマをリフトから降ろして1G状態になると、1輪に250kgfかかるので、
車体に固定されたAに250kgfかかりますが、バネが50kgfの反力を発生しているので、
50kgfの荷重がかかるまでこのサスは縮まず、50kgfを超えた時点から縮み始め、
250kgf全ての荷重がかかると50kgf~250kgfの200kgf分の荷重で40mm縮みます。
この時、AB間は190mm-40mm=150mmです。
ダンパーのロッドも40mm縮み、
・あと40mm縮むことができる(あと200kgfの荷重に耐えられる)
・あと40mm伸びることができる(荷重が50kgfになったら伸びきる)
という状態になります。
結局、プリロードをかけてバネが短く圧縮された分は、それに必要な圧縮圧力と
等しい荷重がかかるまでサスが縮まず、圧縮圧力と等しい荷重がかかってから
以降はプリロード0mmの場合と同じように縮んでいきます。
●プリロード 0mm
荷重 0kgf~50kgf~250kgf
バネ長 200mm~190mm~150mm
●プリロード 10mm
荷重 0kgf~50kgf~250kgf
バネ長 190mm~190mm~150mm
ということです。
プリロードをいくらかけようが、その圧縮圧力以上の荷重がかかれば
ABがバネを縮めようとする作用がなくなるので、1G状態でのバネ長は
荷重だけに支配されます。
荷重が250kgfであれば、1G状態ではプリロードに関係なくバネ長(AB間)は
150mmになります。
プリロード0mmでは、このバネが伸び切って200mmになるのは荷重が全て抜けた
0kgf状態ですが、プリロード10mmでは荷重50kgfで伸び切って190mmになると
書きました。
つまり、プリロード10mmでは荷重が0~50kgfの間は伸縮せず、いわゆる
「サスが棒になった状態」となります。
では、それでもプリロードをかけることがあるのは何のためか、といえば
●車高を上げたい
(ネジ式車高調で車高を上げるには、Bの位置を上げる
→同じ分だけAの位置(=車体の高さ)が上がる)
●サスの縮み/伸びの比率を変えたい(縮み側を増やしたい、耐荷重を増やしたい)
(今回の例では、プリロード0mmでは縮み30mm(耐荷重150kgf)/伸び50mm、
プリロード10mmなら縮み40mm(耐荷重200kgf)/伸び40mm)
という場合があるからです。
(あと細かい理由としては、バネの縮みはじめはバネ定数が大きく不安定になり
やすいので、その領域を使わないように2~3mm程度のプリロードをかけておく
ということもあります。)
もちろん、リアだけプリロードをかければリアの車高だけ上がりますから
オーバーステア傾向に変化する、というように車高バランスによるセッティングの
変更にも使われます。
結論ですが、プリロードをかける(Bの位置を上げる)とどうなるかといえば
・Bの位置が上がったのと同じだけAの位置が上がり、車高が高くなる。
・ダンパーのロッドも同じだけ上がり(伸び)、その分だけ縮みストロークが
増え、伸びストロークが減る。
・荷重がプリロードをかけた分の圧縮圧力を下回ると、サスは棒になる。
(旋回中の内輪や、段差で跳ねた時に起こります)
・荷重がプリロードをかけた分の圧縮圧力を上回っている通常状態では、
AB及び車体の位置が高くなるだけで、バネもただ上にシフトしているだけで
バネレートが変わることもないので、プリロードをかけることでサスの固さは
変わらない。
ということになります。
全長調整式の車高調では、車高の調整は全長調整用ブラケットで行いますが、
伸び/縮みの比率の変更はバネレートを変えるかプリロードで変えるしかない
ので、特に柔らかめのバネを使っている場合にはプリロードが有効な場合が
ありますね。
今回はそんなお話です。
『プリロードをかけると、サスは固くなる。』
これがかなり多い勘違いです。
この画像のようなネジ式車高調(ロアシート調整式車高調)がとあるクルマに
付いているとします。
バネは自由長(バネ全長)200mm、バネレート5kgf/mm、ダンパーのストロークは
80mmとしましょう。(RX-8用DFVのダンパーがそうなので)
バンプラバーはとりあえず無いものとします。
これを取り付けているクルマは、分かりやすいように
・車両重量 1,000kg
・前後重量配分 50:50
・1輪荷重 250kgf
・レバー比 1.0
とします。
まずプリロード0mmの状態を考えます。
クルマをリフトアップした0Gでは、A(アッパーマウント)と
B(スプリングロアシート)の間は200mmです。
このクルマをリフトから降ろして1G状態になると、1輪に250kgfの荷重がかかる
ので、車体に固定されたAに250kgfかかり、Aは押し下げられ、5kgf/mmのバネは
50mm縮みます。
この時、AB間は150mmになります。
ダンパーのロッドも50mm縮み、
・あと30mm縮むことができる(あと150kgfの荷重に耐えられる)
・あと50mm伸びることができる(荷重が0kgfになったら伸びきる)
という状態になります。
このように縮む余地が30mmしかないとなると、もしロッドに20mmのバンプラバーが
付いていれば、ダンパーケースがバンプラバーに当たるまでに縮む余地は10mmしか
ないので、+50kgfの荷重でダンパーケースがバンプラバーに当たりはじめてしまいます。
では、Bを10mm上に移動して、プリロードを10mmかけてみます。
リフトアップして0Gになると、AとBの間は190mmです。
AとBは、バネに対して50kgfの圧縮圧力をかけていて、バネは50kgfの反力で
伸びようとしています。
※AB間は最大で(ダンパーのロッドが伸び切った状態で)190mmですから、
自由長190mmを超えるバネが付いていたら、必ずバネは190mmに縮められます。
(線間密着をしない限り、ですが)
逆に、190mm未満のバネが付いていたら、例えば180mmのバネを付けたら、
バネの上部に10mmの遊びができ、バネはぐらつき、ABはバネに対して縮める
働きを一切しません。
200mmのバネをスプリングコンプレッサーで190mm未満に圧縮して取り付けても
同じことです。
AB自体はバネを190mmより短くしようとする作用は全く発揮しません。
このクルマをリフトから降ろして1G状態になると、1輪に250kgfかかるので、
車体に固定されたAに250kgfかかりますが、バネが50kgfの反力を発生しているので、
50kgfの荷重がかかるまでこのサスは縮まず、50kgfを超えた時点から縮み始め、
250kgf全ての荷重がかかると50kgf~250kgfの200kgf分の荷重で40mm縮みます。
この時、AB間は190mm-40mm=150mmです。
ダンパーのロッドも40mm縮み、
・あと40mm縮むことができる(あと200kgfの荷重に耐えられる)
・あと40mm伸びることができる(荷重が50kgfになったら伸びきる)
という状態になります。
結局、プリロードをかけてバネが短く圧縮された分は、それに必要な圧縮圧力と
等しい荷重がかかるまでサスが縮まず、圧縮圧力と等しい荷重がかかってから
以降はプリロード0mmの場合と同じように縮んでいきます。
●プリロード 0mm
荷重 0kgf~50kgf~250kgf
バネ長 200mm~190mm~150mm
●プリロード 10mm
荷重 0kgf~50kgf~250kgf
バネ長 190mm~190mm~150mm
ということです。
プリロードをいくらかけようが、その圧縮圧力以上の荷重がかかれば
ABがバネを縮めようとする作用がなくなるので、1G状態でのバネ長は
荷重だけに支配されます。
荷重が250kgfであれば、1G状態ではプリロードに関係なくバネ長(AB間)は
150mmになります。
プリロード0mmでは、このバネが伸び切って200mmになるのは荷重が全て抜けた
0kgf状態ですが、プリロード10mmでは荷重50kgfで伸び切って190mmになると
書きました。
つまり、プリロード10mmでは荷重が0~50kgfの間は伸縮せず、いわゆる
「サスが棒になった状態」となります。
では、それでもプリロードをかけることがあるのは何のためか、といえば
●車高を上げたい
(ネジ式車高調で車高を上げるには、Bの位置を上げる
→同じ分だけAの位置(=車体の高さ)が上がる)
●サスの縮み/伸びの比率を変えたい(縮み側を増やしたい、耐荷重を増やしたい)
(今回の例では、プリロード0mmでは縮み30mm(耐荷重150kgf)/伸び50mm、
プリロード10mmなら縮み40mm(耐荷重200kgf)/伸び40mm)
という場合があるからです。
(あと細かい理由としては、バネの縮みはじめはバネ定数が大きく不安定になり
やすいので、その領域を使わないように2~3mm程度のプリロードをかけておく
ということもあります。)
もちろん、リアだけプリロードをかければリアの車高だけ上がりますから
オーバーステア傾向に変化する、というように車高バランスによるセッティングの
変更にも使われます。
結論ですが、プリロードをかける(Bの位置を上げる)とどうなるかといえば
・Bの位置が上がったのと同じだけAの位置が上がり、車高が高くなる。
・ダンパーのロッドも同じだけ上がり(伸び)、その分だけ縮みストロークが
増え、伸びストロークが減る。
・荷重がプリロードをかけた分の圧縮圧力を下回ると、サスは棒になる。
(旋回中の内輪や、段差で跳ねた時に起こります)
・荷重がプリロードをかけた分の圧縮圧力を上回っている通常状態では、
AB及び車体の位置が高くなるだけで、バネもただ上にシフトしているだけで
バネレートが変わることもないので、プリロードをかけることでサスの固さは
変わらない。
ということになります。
全長調整式の車高調では、車高の調整は全長調整用ブラケットで行いますが、
伸び/縮みの比率の変更はバネレートを変えるかプリロードで変えるしかない
ので、特に柔らかめのバネを使っている場合にはプリロードが有効な場合が
ありますね。
イイね!0件
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この記事へのコメント
2012/08/29 10:44:33 はじめまして。 私はコレを信じきっている人にどう説明してあげればいいのか悩んでいます(笑) 0Gでプリ0でも、ジャッキを下ろして100kg分くらい沈んだらそれで100kgプリロードかかってるのと同じでしょう。と言えばいいのかと昨日思いましたが、ずっといろいろ探っています。 そして、この勘違いの原因を探っていますが、やっと最近、「バネの耐荷重はプリロード分上がるという勘違い」から来るのではないか・・というところまでわかってきたところです・・ 自信を持って間違える方が多く、正しく理解しておられる方の記事ははまだ1桁しか見つかってないので少しずつ啓蒙したいと思っています(笑) | コメントへの返答 2012/08/29 17:33:32 はじめまして。 プリロードについては「分かりにくい」というより 「誤解しやすい」ので、なかなかやっかいですね。 プリロードを調整する時は0G状態で作業するので、 その0G状態でバネを圧縮してテンションをかける のを体感することで、Tetsu-UGさんが言われる 「バネの耐荷重はプリロード分上がるという勘違い」が発生するんでしょうね。 1G状態でロアシートを調整してプリロードをかける ことを考えれば、そのまんま(レバー比を掛けた) 車高が上がるだけっていうのが理解しやすいの かな~なんて考えたりしてます。 |
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