適切なセルフケアと治療で副作用の症状が軽減でき、治療も長期間続けられる
大腸がん薬物療法の副作用対策はここまで進んだ
目覚しく進歩した大腸がんの薬物療法
薬物療法は、転移、再発した大腸がんの主要な治療法の1つだ。大腸がんの薬物療法は、かつては大きな効果を期待できないとされてきたが近年、目覚しい進歩を遂げている。
とくに2005年以降、5-FU(一般名フルオロウラシル)+ロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム)にエルプラット(一般名オキサリプラチン)を組み合わせた療法、5-FU+ロイコボリンにカンプト(一般名イリノテカン)を組み合わせた療法が登場してからは、予後を著しく延ばせるようになった。ゼローダ(一般名カペシタビン)、エルプラットを組み合わせたXELOX療法も普及するようになった。
「大腸がんの薬物療法はさまざまな原因で継続できなくなることがありますが、有力な治療法がいくつも登場したので、1つの治療法が効かなくなっても、次の手、また次の手が打てるようになりました。これが、予後を延ばせるようになった大きな理由です」
こう語るのは、大腸がんの薬物療法にもくわしい東邦大学医療センター佐倉病院外科講師の大城充さんだ。
しかし、薬物療法には、「副作用」という大きな壁が立ちはだかっている。重い副作用で、有効な対策もないために、薬物療法を断念せざるを得ない患者さんは相変わらず後を絶たない。
「副作用対策の目的はQOL(生活の質)の改善にとどまりません。副作用を抑えられれば、その薬物療法を活用できる期間が延び、予後の延長にもつながるのです」
大城さんはこう力説する。
ゼローダの特徴は手足症候群の副作用
副作用は薬の種類によって異なる。大腸がんの薬物療法では、複数の薬を使うケースが多いため、それぞれの薬に応じて、複数の副作用対策を立てることになる。
たとえば、ゼローダの特徴的な副作用は手足症候群。手足症候群では、手足の皮膚が赤く腫れたり、ひび割れたりして、ひどくなると出血することもある。痛みを伴うことが多く、手袋や靴下を脱ぐように全体の表皮が剥がれることすらある。ゼローダの投与開始から2~4週間後に起こりやすい。
「とくに、高血圧や糖尿病などの合併症のある高齢の患者さんは、手足症候群がひどくなりやすいので要注意ですね。当院では皮膚科と連携しながら、保湿剤やビタミン剤を十分に投与して症状を抑えます。自宅で投与開始直後からハンドクリームを使っていると、手足症候群を改善しやすいという研究報告もあります」
「当院では、外用剤などの処方を皮膚科に検討してもらっています」
アバスチンは血液関係の副作用に要注意
アバスチン(一般名ベバシズマブ)は、療法や療法、XELOX療法と併用する血管新生を抑制するの1種。しかし、血圧が上がったり、血管がつまったりする血液関係の副作用が起こりやすい。
「血栓症の既往のある患者さんにはアバスチンを使いません。最高血圧が140水銀柱ミリメートル以上になった場合、降圧薬で対応します」
療法は、カンプトを使うため、下痢の副作用が大きな障害となる。ひどい場合は脱水症状で入院することもある。
下痢を予防するには、食事で油ものや牛乳、生野菜、香辛料などを控え、消化のよいものを少しずつ食べることが肝心。もし下痢が起こったら、脱水症状を避けるため、自宅ではスポーツ飲料などで水分やミネラルを補給するとよい。バナナなどカリウムの多い食品も、下痢を抑えるのに役立つ。
「当院では、下痢症状が出始めた時点で腸の粘膜を保護する薬、経腸栄養剤などを併用して、症状をかなりコントロールできるようになりました」
療法では、開始から2~3週間ほどで髪の毛や眉毛、まつ毛といった体毛が抜けることも多い。体毛は治療後3~6カ月ほどで再び生えてくるので心配はいらないが、治療中はかつらや帽子を活用すれば、気分転換を兼ねて新しいおしゃれを楽しむこともできる。治療開始前に思い切ってショートヘアにすれば、脱毛時の髪の毛の手入れも楽になるかもしれない。
アレルギーに備えステロイド剤を前投薬
大腸がんの薬物療法で幅広く見られる副作用は骨髄抑制、つまり、赤血球や白血球といった血球の減少だ。貧血になったり、感染症にかかりやすくなったりする。
「5-FUは投与量・投与方法を考慮していますが、それでも骨髄抑制が起きた場合、休薬などで2週間ほど様子を見て、血球の数が戻ってきたら投薬を再開するようにしています。検査で血球が減っていたら、休息を十分取り、感染症を防ぐために人ごみを避けましょう」
全身倦怠感の生じる肝機能障害もよく起こる。
「総ビリルビン(肝機能を示す値で基準値は1)が若干上昇する患者さんは多いのですが、2以下の場合、とくに問題はありません。総ビリルビンが上がれば、肝庇護剤や利胆剤などで対処します」
吐き気や食欲不振といった副作用も頻発する。
療法はアレルギーの副作用もよく起こる。その場合、アレルギーを抑えるステロイド剤を使うのが一般的だ。
「療法のアレルギーは、ひどいときにはショック症状を起こすこともあるので、当院では前もってステロイド剤を倍量投与しています」
| UFT | 吐き気・下痢 |
|---|---|
| ロイコボリン | 肝機能障害・骨髄抑制・下痢 |
| TS-1 | 吐き気・下痢・発疹・手指や爪の色素沈着 |
| ゼローダ | 手足症候群・骨髄抑制・肝機能障害 |
| 5-FU | 吐き気・下痢 |
| エルプラット | 末梢神経障害・吐き気・下痢 |
| カンプト | 下痢・骨髄抑制 |
| アバスチン | 高血圧・たんぱく尿・血栓塞栓症・出血・消化管穿孔 |
| ベクティビックス | ざそう様皮膚炎 |