10月18日、秩父宮では関東大学対抗戦の注目カード、帝京vs筑波の1戦がおこなわれた。帝京は立教、青学、明学を順当に大差で下し、3連勝中。対する筑波は明治、早稲田、慶応に3連敗した。シーズン序盤に上位のライバルと当たるか当たらないか、両極端な日程が組まれているチーム同士のカードで、このカードは山腹の山小屋みたいなものだった。これから険峻な岩盤へ臨む帝京、なだらかな山道を下山する筑波、というような。ちなみに先週、J-SPORTSで放映された11日の試合、慶應vs筑波、リーグ戦の法政vs流経については録画を観たし、TV観戦記も準備してはいたのだが、読み返す時間がなく、割愛することになった。申し訳ない。土曜に花園でTL、日曜に宝ヶ池で関西大学ラグビーの2試合を観て、TLの他会場の試合についても書くのはきつい。慌ただしく時が過ぎ、いつのまにか10月も下旬である。


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 【○帝京大学31×10筑波大学●】

 ノットリリースザボール、ラインアウトにおけるBKラインのオフサイドと連続PKを得た前半2分、筑波は敵陣22メートル過ぎでラインアウトのチャンスをつかんだ。左順目を攻めたあと、5フェーズ目、右へ折り返すパスアウトでSH木村貴大がノックオンしたが、6分、帝京のSO松田力也がテイクンバックのダイレクトキックを蹴ったことにより、敵陣22メートルを越えた位置のラインアウトと筑波は再び好機を迎える。力強いボールキャリーで帝京のフィジカルに耐えた8次、9-10-15の右展開でFB本村直樹が右斜めラン。残り10メートルまでゲインした。しかし直後の左チャンネル1、アングルチェンジの左PR橋本大吾が木村のパスを落球してしまった。先制機を逃す格好となった筑波だったが、地域とポゼッション(ボール保持率)で上回り、9分にはオフサイドのPKを得て、敵陣22メートル内でラインアウト。早いタイミングで手前の橋本に投入し、縦を突かせたあと、左チャンネル1で№8目崎啓志を挟んで9-10-6の左、角度を変えて左FL水上彰太が走り込んだ。帝京は松田がタックルと同時にボールをもぎ取る好守備(ノックバックのこぼれ球を確保したかもしれない)で抵抗。ここで筑波は左LO藤井俊希がノットロールアウェイを犯した。

 12分、帝京はキックカウンターの2次、左ショートサイドを攻め、左WTB磯田泰成にボールを持たせた。だが筑波は、橋本が磯田を倒したところに水上が絡む。ノットリリースザボール。入りに敵陣へ進むきっかけとなったノットリリースザボールも水上のジャッカルによるもので、ブレイクダウンにおける彼の働きが際立っていた。敵陣22メートル過ぎへ進出した筑波。しかし、ラインアウトモールを組もうとした際、デリバリーミス。こぼれ球をSH流大に蹴られてしまう。このボールがタッチを割り、ハーフウェイ手前のラインアウトで仕切り直し。ところがHO村川浩喜のスローが曲がり、ノットストレートをとられてしまった。

 15分、筑波が左展開、本村がハンドリングエラーしたボールをハーフウェイ付近で獲得した帝京は、FB尾崎晟也が敵陣奥へグラバーキックを蹴った。チェイスがプレッシャーをかけ、筑波のタッチキック後、帝京のラインアウトは敵陣22メートル過ぎ。初めて筑波陣でセットピースの機会が訪れた。モールコラプシングのPKを得て残り5メートルへ。モールがラックになったあと、チャンネル1、流のパスアウトに複数がもらえる態勢のシェイプを軸に近場を攻めた。7次、9-10の左で松田が左裏の空いていたスペースを冷静に見ていた。17分、左斜めにグラバーキックを蹴り、インゴールへ転がるボールをチェイスの磯田が左中間へ押さえるトライ。松田のコンバージョンも決まり、帝京が7点を先制した。

 このリスタートを帝京がキャッチした3次、筑波は松田のエリアキックを藤井がチャージダウンした。右ポスト下へ転がったボールを確保した右CTB前原巧が藤井に鋭いタックルを浴びせられたが、ボールキープの帝京は自陣インゴール内で9-7-15-14と右へ展開。尾崎がゲイン、右WTB石垣航平も強さを見せ、自陣10メートルまで挽回した。そこから左へ大きく振って№8河口駿が前進、さらに9-6-12と左ショートサイドへつなぎ、左CTB山崎雄希がステップを切って敵陣22メートル近くまで来た。右へフラットに折り返し、9-8-4のクラッシュを挟んで、9-10の右で左へリターンパス,磯田へつなごうとしたのは目前がFWでミスマッチだったし、筑波の意識が外にあったと思うので効果的だったが、惜しくも松田のパスが前方に投じられてしまった。一頓挫した帝京は22分、尾崎がカウンターランで敵陣10メートルまで走り、再攻撃を仕掛けようとする。しかし、筑波はまたも水上が絡み、尾崎をノットリリースザボールに陥れた。筑波は敵陣10メートルでラインアウト。ところがモールでデリバリーミス、手渡そうとしたボールを割ってきたディフェンダーにプレゼントするような形になった。ターンオーバーした帝京は松田が右裏へキックを蹴り、処理する本村に前原が猛々しいタックル。ノットリリースザボールのPKを得た24分、帝京はショットを選択した。が、松田のキックは右へ逸れて不成功に終わった。

 筑波は26分、相手ノックオンにより、ハーフウェイ手前中央でスクラム。後方を通し、ボールキャリアがスペースでラン勝負を匂わせるBK展開を交えながら、フェーズを重ねていく。28分、敵陣22メートル手前、9-13-12の右展開で左CTB竹田祐将がグラバーキックを右裏へ蹴った。チェイスが複数いて尾崎に処理されても囲めそうだったから、それほどもったいなくはない。東福岡がときどき使う戦術である。尾崎に竹田自身が刺さった。帝京はFWの戻りがよかったものの倒れ込みを犯し、筑波は29分、ショットを選択。竹田のPGは不成功に終わったが、31分、オフザゲートのPKによる敵陣22メートルのラインアウトを起点に再び攻勢に出た。6次、9-12-13の右展開で、竹田のフラットパスをもらった右CTB鈴木啓太がギャップをゲイン。帝京は外側のスライドが早く、内側を押さえるプッシュアウトが不十分で隙を作ってしまっていた。鈴木が残り5メートルで尾崎に止められたあと、近場を穿っていく筑波。32分、オフサイドのPKを速攻してチャンネル0攻撃。ところが、密集戦でボールがこぼれ落ちてしまった。

 舞ボールとし、流のキックでハーフウェイまで地域を戻した帝京は相手ラインアウトをスチール。しかし、9-13と右へ回した2次、縦に走り込んだ前原がSO亀山宏大に止められ、右PR崔凌也(ちぇ・るんや)のジャッカルでボールを奪われてしまう。筑波は左の狭いほうへ振り、竹田が裏へショートパント、本村がチェイスした。処理する石垣からターンオーバーした直後、右チャンネル1、右LO中村大志のポイントでターンオーバーされたが、すぐさま藤井がインターセプト。チャンス到来の筑波は近場を攻め続けたあと、36分に右展開で仕留める。9-10-13、亀山がループでもらう気配があったとはいえ、この場面も前原のスライドが早く、内に押さえがない状態。右斜めランでギャップを抜けた鈴木が右中間へトライ。筑波が5点を返した(ゴールは不成功)。帝京は40分、敵陣22メートル手前のラインアウトを起点に連続攻撃し、流が左裏のグラバーキックで磯田のチェイスによるトライを画策したものの、ボールはタッチを割った。ここで前半が終了。

 7×5、僅差の折り返し。接点の巧さが目を惹いた筑波は後半1分にも、ブレイクダウンでファインプレーが飛び出す。カウンターランの磯田を自陣10メートルで鈴木が止め、水上が絡んでノットリリースザボールのPKを得た。敵陣22メートルでラインアウトと好機を迎えたが、4次の左オープン、9-10-12-15と大きく振った際、本村がノックオン。10と12、12と15のあいだにデコイを入れていて、BK展開に対するデ防御に弱さを見せていた帝京に対しては効果的なアタックだっただけに惜しい。自陣10メートル手前右でスクラムを得た帝京は、ここで一気に仕留めてきた。右FL杉永亮太がボールを出し、7-9-22-15-10-11。あいだに1人ずつデコイを入れ、内側に防御を留め置いたスペースを尾崎が抜けた。5分、そこから流れるようにつないで磯田が左コーナーへトライ。12×5となった(コンバージョンは不成功)。

 さらに帝京は12分にもトライを追加する。筑波が帝京陣中央のスクラムから攻めた2次、右チャンネル1の中村に前へ出られたものの、左FLマルジーン・イラウアが絡んでターンオーバー。左へパスアウトして左PR森川由起乙がゲイン、22-14と数的優位の左順目へ振って敵陣10メートルへ。2フェーズ後、後方を通した左展開で磯田が快走して22メートル内へ入ると、右へ折り返す。9-1-22、中村とのミスマッチを衝き、途中出場のSO朴成基(ぱく・そんぎ)がパスダミーで裏へ抜け、左中間へ駆け込んだ。このトライは美しい。磯田のビッグゲイン後で停滞しがちな局面にもかかわらず準備万端、1と22のあいだに4がデコイ、朴の外側に19、7とリンクプレーヤーがいた。戻るだけでも大変な守備側は、こんな陣形を作られると、偶発的なビッグタックルがない限りは守れない。朴のコンバージョンも決まり、19×5。

 もはやこれまでかと思われた筑波だったが、持ち前の粘りを発揮する。16分、ドロップアウトのキックを本村がキャッチし、9-11と左へ展開。左WTB亀山雄大がステップを切って裏へ抜けた。尾崎に捕まりながらオフロードパスを水上へ。そしてゴールライン前、駆けつけた亀山宏が水上から倒れざまのガットパスをもらい、左中間へトライ。そういえばこれと似たトライを、ケガで欠場中のWTB福岡堅樹が昨秋、スコットランドとの代表戦で挙げていたっけ。たまたまだったらごめんなさいだが、筑波のBKはゲインしたプレーヤーからガットでもらうのが得意なのかもしれない。コンバージョンは外れたものの、筑波が19×10としてゲームの行方はわからなくなった。その後、一進一退の攻防。26分、帝京は流が右裏へキックを蹴り、処理する亀山雄を右WTBへ回っていた尾崎が潰してノックオンを誘った。残り6メートル右でスクラム。コラプシングのPKを得たあと、スクラムを選択し、チャンネル0の力攻めでゴールラインを陥れようとする。ところが5次、左チャンネル1のハンマープレー、イラウアが村川に止められたポイントで、サポートがボールの両脇に倒れ込んでしまった。春先のふきのとうみたいに剥き出しになったボールを中村が奪い、亀山宏のタッチキックで筑波は当座の窮地を逃れる。しかしオフサイドのPKを得た30分、再び敵陣22メートル内へ進出した帝京は、モールドライブが叶わなかったものの、チャンネル0を突き続け、23分、右LOへ入っていた亀井亮依が左へさばいて9-22。ゴールラインへ肉薄したあと、右チャンネル1、逆目を攻めた。32分、杉永が目崎との1対1を制して左ポスト下へトライ。コンバージョンも決まり、26×10となって、勝敗の行方はほぼ決した。

 帝京このリスタートキャッチから大きくボールを動かし、オフロードやポップパスもきれいにつながって3フェーズ、あっというまに残り10メートルへ達した。9-22の左で朴がパスダミーで突破を狙ったあと、右チャンネル1、9シェイプでパスをもらった森川が残3メートルまで迫ったが、筑波は目崎が森川を引きずり倒し、本村が絡んでノットリリースザボールに陥れる。ピンチを脱出したが、38分、帝京はターンオーバーを起点とする連続攻撃でトライを追加した。チャンネル0、1を突いて近場に防御を寄せたあと、9-22-10-14-15-10。石垣が裏へ抜けて数的優位を確定させ、FBへ回っていた松田がもう1度回り込んでサポートして、右中間へトライ(ゴールは不成功)。31×10とし、今季初めての上位校との対戦に快勝した。




 筑波のブレイクダウン・ターンオーバーは11をかぞえた。帝京は4。この局面のスタッツでは筑波が完勝している。先週の慶應戦で№8横山大輔が負傷し、ただでさえ故障者が多いところへ持ってきてフィジカル戦の要を欠き、帝京戦は厳しくなるかもと予感したが、水上がボールハンターと化して獅子奮迅の活躍。途中まで互角以上のゲームをやってのけた。各選手の潜在能力の高さがチーム力として結集されていることを再確認するゲームだった。スクラムとラインアウトに苦しむ分は、こんなふうにしてブレイクダウンで取り返したいものである。BKでは1トライの鈴木が何度もゲイン。前述したように彼の前にギャップがあることが多く、筑波はラインの浅深を調節しながら鈴木にいい形でボールを供給することができた。ディフェンスは内側へ寄りがちなところで外のスペースを衝かれ、帝京にチャンスを作られたけれども、31×10とされた終盤、外側のパスコースを塞ぐアンブレラ・ディフェンスをそれまで以上の大胆さで敢行し、効果を挙げていた。誰かのアドバイスがあったのだろうか。一か八か、インターセプトで意地のトライを狙っていたのかもしれないが、相手アタックを内側へ閉じ込め、得意のブレイクダウンで勝負……対抗戦の成績だけをいえば大学選手権で早慶明帝と当たった場合、挑戦者の立場になるけれども、このディフェンスを磨けば面白いかもと思わせた。もちろん、関係者、筑波ファンとしては、故障者がみんな帰ってくれば、という思いも当然あるだろう。絶対美人になって見返してやる、と自分を捨てた高校時代の元カレに復讐を誓う女のように。

 帝京の問題を挙げるとすれば、ブレイクダウンだろう。リロード自体は早い。内側のポイントから順目のポイントへ行くサポートプレーヤーの速さに、大学レベルとしては最高と思うシーンもあった。ただ、カウンター攻撃におけるアンストラクチャーの1次や、フェーズを重ねた際、ボールの真上に行くプレーヤーがいなかったりした。そうした隙を筑波にターンオーバーされた。でも、ブレイクダウンに関しては、夏合宿でライバルと試合をしているとはいえ下位チームとばかり戦ってきた帝京に対し、上位チームとの激戦で揉まれてきた分、筑波にアドバンテージがあったような気がしないでもない。FW勢は、「大学選手権で当たったら、筑波に『帝京は対抗戦のときとブレイクダウンが全然違った』と言わせてやる」と決意したことだろう。接点の細かい所作を除けば、FWは及第。ただ、チャンネル0のガットプレーやモールがまだ未整備かなと思わせる部分があった。ディフェンスはステイ系からスライドが基本線だったと思うが、経過を記す中で触れたように内側のプッシュと外側のスライドの連関がイマイチ。メンバー交代が早かったのは、アタックというよりむしろ守備面を考慮したのだと思う。アタックに関しては、サントリーに似ていると思った。9番近辺に複数が散在するシェイプから、デコイランナーやシャドウランナーをリンクさせて組み立てていき、隅のスペース、裏のスペースにも目を光らせて最善の選択を探るスタイル。テンポも速い。先に後半12分、朴のトライを絶賛した。ビッグゲインのあと、アタックが準備できていないゆえ、ピック&ゴーでポイントを作りに行って前進できれば良しとするのが凡庸なチーム。しかし帝京は、ビッグゲイン後の折り返しを重要視しているようで、すぐに崩し切る態勢を作っている。これができれば、相手にとってバックスリーに走られるのがより脅威になる。個人的MOMはトライだけでなく、アタックのリズムを整えたという意味で朴としたい。朴がSOに入ったあと、右CTBが石垣で右WTB尾崎、FB松田という布陣だったと思うけれど、ぴったりハマッていた。朴は大阪朝高が花園で準決勝へ進出したときのメンバー(HB団という括りでいえば、現京産の主将、SH梁正秋〈りゃん・じょんちゅ〉とのコンビは近10年の高校ラグビーで3指に入る)。状況に応じたポジショニングと攻める方向の判断、パスの巧さに秀でたSOだ。大学4年になって体の強さも増している。ここまで完全レギュラーというわけではなかったが、今回のパフォーマンスを見た印象は、大学トップレベルのSOと確信するに十分。たとえば早稲田の小倉順平、明治の田村煕あたりとの比較でまったく遜色ないといっても過言ではない。そういう大学トップレベルの選手が、ポジションごとに、メンバー外にもゴロゴロいる。帝京が大学チームを相手に底を見せる日は永久に来ないような気がしてきた。

付記 本文中、選手名の敬称は省略としました。


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