解説(1)
| 解説(1) | ||
| はじめに 日本腹膜透析研究会では腹膜炎や出口部ケアについて同じ話が何度も蒸し返されています。 CAPD が特殊だという問題はありますが、皮膚については皮膚関係の学会、創傷については外科系の学会で標・euro;的と考えられる知識を前提にして話し合う時期と思います。 1)皮膚の構造 2)出口部の構造 3)創傷治癒 4)皮膚のアレルギー反応 1)皮膚の構造 皮膚は表皮、真皮、皮下脂肪の3層から出来ています。1) P19-38 2)出口部の構造 カテーテル出口部は A )トンネル部分、 B )周囲の皮膚、 C )境界部分という全く異なる3部位からできています。 3)創傷治癒 私の指で見る創傷治癒過程(乾燥環境)
4)皮膚のアレルギー反応 皮膚は硬い角質におおわれているのでアレルギーをおこすような化学物質はリンパ節まで運ばれてリンパ球と反応しアレルギー反応がおきます。 | ||
| 乙)実際の症例で見ていきましょう。 | ||
| 06 年3月 12 日 岡山での講演概要です。
浮腫 大部分の透析患者の皮膚はドライスキンです。 腎不全による自律神経障害から皮脂、汗が少なく、表皮には原料となる脂肪酸、アミノ酸が少ないため天然保湿成分の量が減り水を蓄えることができません。 むくみがあると天然保湿成分以外の部分に水があふれるため無構造になってもろくなりカテーテルの移動で傷つきやすくなります。 84 歳、男性、糖尿病、心筋梗塞による心不全
浸軟 通気性のないドレッシング材で皮膚を覆ったり皮膚の表面が濡れた状態になっていると角質層の水分量が増え、皮溝が消えます。 皮溝が消えた状態を浸軟と言いますが、浸軟になると皮膚細菌叢の爆発的増殖と菌種交代、皮膚 PH 上昇を引きおこし皮膚バリア機能が低下し感染を引きおこします。 71 歳、女性、腎不全と心タンポナーデで導入、低栄養でドライスキンがありカテーテルの下に溜まった水分で浸軟状態になっています。
浸軟状態 84 歳、男性、糖尿病、心筋梗塞による心不全
浮腫では表面に近いほど水分量が少ないため皮溝が残りますが、浸軟状態ではフィル・euro;と密着している表面の水分量が多く皮溝がなくなって3次元構造が失われます。 3)出口部感染 トンネル部分と境界部分は慢性の創傷ですから多かれ少なかれ細菌が認められ、細菌の存在自体は創傷治癒と関係ありませんが、炎症反応を示したり創傷治癒が遅れる患者がいます。2) P78-87 細菌と患者の相互関係には(細菌の)汚染、コロニー形成、不顕正感染、顕正感染の状態があり、局所と全身の状態で細菌との相関関係が決まります。3) P177 細菌が表面に付着している状態は感染とは言えません。 発熱、疼痛、腫脹の炎症所見があれば顕正感染ですから抗生剤の適応です。 創傷の治癒遅延が見られる不顕正感染では局所や全身の状態を改善して治っていくか観察しますが、時に抗生剤使用が必要になります。 細菌の侵入による悪循環が生じている場合は抗生剤の使用で治癒が促進されます。 細菌が表皮内に侵入して炎症が生じ3兆候を認める場合は出口部感染です。
出口部感染 アレルギー 4)トンネル感染 出口部感染が広がってトンネル感染になる症例はありますが、抗生剤の使用でトンネル感染まで広がらない場合がほとんどだと思います。 問題になるのは出口部感染なしに突然トンネル感染を引きおこす症例です。 ポケットの有る無しなど境界部分の形状と炎症や感染の関係は不明ですが、参考になるのは褥創に見られる横掘れ潰瘍です。 3) P270-283 褥創の辺縁部で表皮を残して直下の皮下脂肪が壊・euro;になりポケットを形成することがあり横掘れ潰瘍と称します。 感染による凝固能亢進で褥創に接する脂肪の小血管に塞栓性閉塞が生じたり、褥創の慢性炎症で脂肪が壊・euro;します。 境界部分の感染や慢性炎症が皮下脂肪の壊・euro;を生じてトンネル周囲へ感染が広がりトンネル感染に発展すると考えられます。
61 歳、女性、糖尿病、脳内出血後遺症 出口部の治癒経過 炎症期 数時間すると血小板の刺激で白血球が増加して壊・euro;物質や細菌を除去し、マクロファージが再生と免疫の立て直しを始めます。
損傷日 増殖期 創内が分泌物で満たされると線維芽細胞や血管内皮細胞が遊走、 24-48 時間で出口部近くの創面が基底細胞で覆われていきます。 液体成分が多いので半透明になっているトンネル周囲の部分で基底細胞に覆われています。 同時に無傷だった毛細血管から脈管が伸び 48 時間で新生血管が表れます。
損傷2日目 再構築期 コラーゲンの産生は損傷後1週間がピークですから肉芽は収縮し始め微小血管、炎症細胞も減っていき瘢痕に置き換わります。 瘢痕は成熟すると1日 0.2-0.7mm の速さで収縮しカテーテルと密着します。 トンネル近くの上皮は液体成分が減って細胞成分が増えるため濁った白色になり、出口部周囲の皮膚は瘢痕となり表面は表皮に置き換わります。
損傷7日目 12 日目にもなると瘢痕は縮小し上皮も成熟して周囲と同じ状態になってきますが、瘢痕表面の皮膚は肌理が粗く角質層が剥離しています。
損傷 12 日目 8)ドライスキンのスキンケア 肌には乾燥肌、普通肌、脂性肌、乾燥型脂性肌がありますが、透析患者に多いドライスキンについて述べます。 乾燥肌や脂性と感じるのは肉眼では肌の肌理(はだのきめ)の変化を見ています。 表皮は溝(皮溝)にしきられた三角形の丘(皮丘)が規則正しく並んだ三次元構造になっていて肌理(きめ)と言います。 皮溝の交差する部分に毛嚢と皮脂腺があり皮丘に汗腺があります。 脂性では毛孔が開いており、乾燥肌では皮溝が浅く皮丘が扁平になります。 同じ人でも場所によって肌の肌理は違っています。 ドライスキンは傷つきやすく治癒が遅く、常在菌も黄色ブドウ球菌やグラ・euro;陰性桿菌が多い特徴があります。 乾燥肌 A )初期 4) P2-7 皮丘が大小不同となり一方向へ皮溝が流れます。 正常な皮溝の描く模様は星状ですが、一方向へ流れ始めると皮丘の角質がはがれ皮溝は星の形を保てなくなります。
B )中等症 C )重症
最もひどいドライスキンはシャントの穿刺部で見ることが出来ます。
石けんを塗ったりテープで角質表面をはがす実験的な肌荒れを作ると健康な人では1日で 80 %、3 - 4日でバリア機能は元の状態に回復します。 角質層が障害されると乾燥し細菌やアレルギー源が侵入します。 参考文献 1)宮地良樹 臨床医のためのスキンケア入門 医学書院 2003 近森病院 透析外来 CAPD 室主任 後藤玲子 医師 近森正昭 |
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