リウマチコラム
目や口の乾きに悩まされている関節リウマチの患者さんは少なくありません。乾燥による不快症状を伴う「シェーグレン症候群(SS)」を合併している関節リウマチの患者さんも少なくありません。
筑波大学医学医療系内科(膠原病・リウマチ・アレルギー)教授の住田孝之先生に、シェーグレン症候群と乾燥対策についてお話をうかがいました。
シェーグレン症候群ってどんな病気?
シェーグレン症候群は膠原病(こうげんびょう)※1の1つで、原因不明の自己免疫疾患です。全身の臓器に幅広い症状があらわれますが、自覚症状として多いのは、目が乾くドライアイ(乾燥性結膜炎)、口の中が乾くドライマウス(口内乾燥症)、耳の下の腫れ(耳下腺腫脹)などです。
※1 膠原病は、全身の血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症が起こる病気の総称で、関節リウマチも膠原病に含まれます。
この病気は他の膠原病と合併しやすく、なかでも関節リウマチと合併することが多いという特徴があります。私たちが国内で行った調査によると、シェーグレン症候群の方の38.7%が関節リウマチを合併していました。
もともと関節リウマチがある患者さんに、シェーグレン症候群が合併する割合は約20%です。
(住田孝之先生提供資料)
シェーグレン症候群の症状は、「腺症状」と「腺外症状」に分けられます。
代表的な腺症状には、涙腺の炎症によって起こるドライアイ、耳下腺の炎症によって起こるドライマウスや耳下腺腫脹があります。
腺外症状の代表的なものには、発熱や関節炎、寒いと指が白くなり、痛んだりしびれを感じたりするレイノー現象などがあります。
【ドライアイのおもな症状】
【ドライマウスのおもな症状】
(住田孝之先生提供資料)
【おもな腺外症状】
シェーグレン症候群の関節炎は、関節リウマチのように関節の破壊や変形が起こりません。このことが、その関節炎がシェーグレン症候群によるものか、関節リウマチによるものかを見分ける1つのポイントになります。
シェーグレン症候群かなと思ったら
「気になる症状がある方は、関節リウ
マチの主治医に早めに相談しましょう」
患者さんがシェーグレン症候群に気づくきっかけは、ほとんどがドライアイやドライマウスです。女性の場合は、乾燥による外陰部の炎症(乾燥性外陰炎)が起こることもあります。
気になる症状がある方は、関節リウマチの主治医に早めに相談しましょう。
シェーグレン症候群は全身性の病気なので、内科系のリウマチ専門医に診てもらうことをおすすめします。整形外科で関節リウマチの治療を受けている方の場合は、主治医から関節リウマチや膠原病が専門の内科医を紹介してもらうとよいでしょう。
シェーグレン症候群は、ドライアイやドライマウスなど乾燥による生活の質(QOL)の低下と、腺外症状を起こす病変(腺外臓器病変)による生命予後※2の低下をもたらします。そこで、治療は、QOLを改善する対症療法と、生命予後を改善するための腺外臓器病変の2本柱になります。
乾燥による症状の治療としては、たとえばドライアイなら眼科医、ドライマウスなら歯科医師または耳鼻咽喉科の医師など、それぞれの領域の専門医の診察を定期的に受けるのが理想です。
関節リウマチの主治医とシェーグレン症候群の主治医、そして個々の症状を診療する医師が患者さんの情報を共有し、連携することによって、総合的な治療が可能になります。
※2 生命予後とは、手術や病気、ケガの経過において、生命が維持できるかどうか、その見込みを意味する言葉です。
乾燥による症状は対症療法で改善
●ドライアイ
目に潤いを与える目薬を中心に、保湿効果のあるヒアルロン酸の目薬、人工涙液の目薬などを使用します。涙の蒸発を抑えるドライアイ用保護メガネも効果が期待できます。
これらで十分な効果が得られない場合は、涙の排出口である涙点にプラグを差し込み、鼻に抜ける涙の量を減らすという治療法もあります。
日常生活で、患者さん自身に気をつけていただきたいこともあります。
スマートフォンやパソコンを操作していると、どうしても瞬きをしないで画面を見続けてしまいがちなため、ドライアイを悪化させるおそれがあります。ドライアイ用保護メガネをかけ、定期的に休息をとって目薬をさすことを心がけながら作業しましょう。
●ドライマウス
唾液腺細胞を刺激して唾液分泌を促すお薬の服用や、人工唾液剤による唾液の補充、唾液腺を刺激するマッサージを行います。
うがいで口の中に潤いを与えたり、マスクで保湿するのも効果的です。
水分量の少ない食品、例えばパンやクラッカーなどを食べるときは、飲み物も一緒にとるなどの工夫をしましょう。
口が乾いて話しにくいというときも、こまめに水分をとりながら話すと楽になります。
また、唾液が少ないと虫歯になりやすくなるので、歯科で定期検診を受けるようにしましょう
ドライアイ、ドライマウスに共通するのは、冷暖房による乾燥対策です。夏のクーラー、冬の暖房とも空気を乾燥させるので、加湿器を使用するなどして室内の湿度を保ちましょう。外気の乾燥する冬は、外出時の保湿も忘れないようにしてください。
腺外臓器病変の治療について
炎症を抑えるお薬による治療が中心です。
病変の活動性が弱い場合には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、病変の活動性が高い場合には、ステロイド薬や免疫抑制剤を使用します。
非ステロイド性抗炎症薬は胃潰瘍などの胃腸障害、ステロイド薬や免疫抑制剤は感染症にかかりやすくなるなどの副作用がありますので、主治医や薬剤師から十分に説明を受けてください。
シェーグレン症候群の治療中に注意したいこと
シェーグレン症候群の方は、アレルギーを起こしやすいという特徴があります。
もっとも注意したいのは薬剤アレルギーです。服用をはじめてから2~3週間後に、皮膚に発疹が出た場合は、薬剤アレルギーによる薬疹が考えられるので、すぐに主治医(病院)へ連絡してください。
また、花粉症や喘息などのアレルギー疾患になりやすい傾向がありますので、花粉が飛散する時期には花粉対策を行うと同時に、日頃から部屋の掃除をこまめに行って、ハウスダスト対策をするなど、アレルギー疾患を予防する生活の工夫も大切です。
シェーグレン症候群のSS-A抗体が陽性の方は、バイオ医薬品が効きにくくなることがあります。シェーグレン症候群を合併している方は、関節リウマチの治療で、バイオ医薬品を使用する際には、主治医とよく話し合いながら治療を進めましょう。
シェーグレン症候群は、2015年1月より厚生労働省の指定難病に指定されました。重症の方は医療費の助成を受けられるので、指定難病制度についても情報を集めておくとよいでしょう。