こんにちは。放射線の勉強は進んでいますか。本日から放射線の測定・管理技術のお話に入っていきたいと思います。先ず放射線を測る前に、放射線を見ることから始めます。
いろいろな科学館を訪れた際に、暗い箱の中でホワンと筋状の霧が現れる装置をご覧になったことはありますか。これが放射線を見る装置、霧箱です。英語ではクラウドチェンバーといいます。
何故、霧箱を使って放射線を見ることができるのか、その原理について説明します。水蒸気の中に小さな水滴があると想像して下さい。表面張力のために水滴は出来るだけ表面積を小さくしようとします。水蒸気の温度をゆっくり下げていくと、本来は水になってもよい温度なのに、この小さくなろうとした水滴はあたかも気体のように周りの水蒸気と馴染みます。このような状態を過飽和(過冷却)状態と言います。
このような状態の時、ホコリを入れると、ホコリの表面に水分が付いて、ホコリの粒は大きな水滴のようになります。小さな水滴ならば、周りの水蒸気と馴染むのですが、大きな水滴は空気中に浮かぶ水滴、つまり霧や雲となります。ジェット機が飛ぶ高空ではホコリが無く水蒸気が過飽和状態となっています。ここをジェット機が飛行すると、エンジンから出てくる噴煙を核として雲が出来ます。これが飛行機雲です。
霧箱では、アルコールやエタノールなどを蒸気にしてドライアイスなどでゆっくりと冷やします。こうしてアルコールなどを過飽和の状態とします。ここを荷電粒子が通過すると、空気中に生じたイオンを核として蒸気が水滴となります。こうして荷電粒子が通った跡があたかも飛行機雲のように筋として観測されるのです。
この霧箱を用いていくつもの重要な発見がなされました。1922年、ブラケットはこの霧箱を使って、窒素原子にアルファ線がぶつかる様子を撮影しました。その写真の中に入射したアルファ線の他に、1本の細く長い線と、1本の短く太い線の飛跡が写っていました。細く長い線は陽子と推定されたため、この反応はアルファ粒子が窒素原子に衝突して、窒素原子中の陽子をはじき飛ばした様子をとらえたものだと判断できます。この現象は、ラザフォードが1917年に発表した理論と一致するものでした。また1932年、カール・デイヴィッド・アンダーソンは、磁場中で霧箱の観測をし、電子と同じ質量で反対の向きに曲がる飛跡を発見し、陽電子の存在を証明しました。
1952年にはアメリカのグレーザーにより泡箱が考案されました。これは液体中に生ずる泡によって荷電粒子の飛跡を観測する装置です。液体水素などを、減圧すると液体としては不安定となります。このときに荷電粒子が入射すると、粒子の電離エネルギーにより液体が局所的に沸騰し、粒子の通ったところに沿って泡が生成されます。この飛跡を写真などに記録して解析します。
より感度が高く精密に放射線を観測できる泡箱の出現により、研究者の間では霧箱の重要性はすっかり低下してしまいました。しかし子供達に放射線を「見せる」という教育的価値は少しも衰えていません。インターネット上では霧箱の簡単な作り方がいくつか紹介されています。理科の先生がお読みでしたら、是非子供達と実験してみて頂きたいと思います。
宇宙線が見える超簡単・林式ペットボトル霧箱 (小・中学生向け)
素粒子を見よう:霧箱の簡単な作り方
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何故、霧箱を使って放射線を見ることができるのか、その原理について説明します。水蒸気の中に小さな水滴があると想像して下さい。表面張力のために水滴は出来るだけ表面積を小さくしようとします。水蒸気の温度をゆっくり下げていくと、本来は水になってもよい温度なのに、この小さくなろうとした水滴はあたかも気体のように周りの水蒸気と馴染みます。このような状態を過飽和(過冷却)状態と言います。
このような状態の時、ホコリを入れると、ホコリの表面に水分が付いて、ホコリの粒は大きな水滴のようになります。小さな水滴ならば、周りの水蒸気と馴染むのですが、大きな水滴は空気中に浮かぶ水滴、つまり霧や雲となります。ジェット機が飛ぶ高空ではホコリが無く水蒸気が過飽和状態となっています。ここをジェット機が飛行すると、エンジンから出てくる噴煙を核として雲が出来ます。これが飛行機雲です。
霧箱では、アルコールやエタノールなどを蒸気にしてドライアイスなどでゆっくりと冷やします。こうしてアルコールなどを過飽和の状態とします。ここを荷電粒子が通過すると、空気中に生じたイオンを核として蒸気が水滴となります。こうして荷電粒子が通った跡があたかも飛行機雲のように筋として観測されるのです。
この霧箱を用いていくつもの重要な発見がなされました。1922年、ブラケットはこの霧箱を使って、窒素原子にアルファ線がぶつかる様子を撮影しました。その写真の中に入射したアルファ線の他に、1本の細く長い線と、1本の短く太い線の飛跡が写っていました。細く長い線は陽子と推定されたため、この反応はアルファ粒子が窒素原子に衝突して、窒素原子中の陽子をはじき飛ばした様子をとらえたものだと判断できます。この現象は、ラザフォードが1917年に発表した理論と一致するものでした。また1932年、カール・デイヴィッド・アンダーソンは、磁場中で霧箱の観測をし、電子と同じ質量で反対の向きに曲がる飛跡を発見し、陽電子の存在を証明しました。
1952年にはアメリカのグレーザーにより泡箱が考案されました。これは液体中に生ずる泡によって荷電粒子の飛跡を観測する装置です。液体水素などを、減圧すると液体としては不安定となります。このときに荷電粒子が入射すると、粒子の電離エネルギーにより液体が局所的に沸騰し、粒子の通ったところに沿って泡が生成されます。この飛跡を写真などに記録して解析します。
より感度が高く精密に放射線を観測できる泡箱の出現により、研究者の間では霧箱の重要性はすっかり低下してしまいました。しかし子供達に放射線を「見せる」という教育的価値は少しも衰えていません。インターネット上では霧箱の簡単な作り方がいくつか紹介されています。理科の先生がお読みでしたら、是非子供達と実験してみて頂きたいと思います。
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