水いぼ(伝染性軟属腫)

《水いぼ(伝染性軟属腫)》

◆「水いぼ」とは
特に幼稚園児から小学校低学年によく見られるウイルスによる感染症です。時間の経過とともに大きくなりますが、せいぜい1mm~5mm程度で成長は止まります。中央がくぼんで光沢のある皮膚色の大きなものから、淡い赤色の小さなブツブツまであります。押しつぶすとチーズ様の白いかたまりが出てきて、この中にウイルスが含まれているので、これが皮膚に付くとうつります。体幹のほか、腋窩、臀裂部などの皮膚が薄くて擦れる部位に好発します。

水いぼが出来るとモルスクム反応(水いぼ周囲の湿疹化)が見られるのでかゆくなりますし、それを引っ掻いてしまうため体のアチコチに広がります。アトピー性皮膚炎のような乾燥肌を持った患児によくみられます。

水いぼは多くのウイルス性疾患と同じく(水痘、麻疹、風疹など)自然に治ってゆくものですが、弱いウイルスなので免疫反応も起きにくく(そのため、症状も軽いのですが)、治るのに時間がかかります。何もせずに様子を見ていれば、1個1個は2カ月程でなくなりますが、引っ掻いてしまって自家接種により連続して他の部位に広がってゆくので、完全に無くなってしまうには約6カ月から3年(平均6~7カ月)かかります。


◆水いぼの伝染性
 水いぼは、主に肌と肌の接触によってうつりますが、その他タオルやプールのビート板などの物を介して感染するとされています。伝染力は強くありませ ん。インフルエンザでは飛まつ感染ですので一人がくしゃみをすると近くの何十人が感染し、集団流行してしまいます。一方、水いぼは体の接触による感染なので、一人から一人への感染で済んでしまうので大流行にはいたりません。また物を介しての感染では、ウイルスが付着していると思われるタオルなどを共用しなければ感染を防ぐことができます。


◆治療の種類と選択
 ウイルス感染ですから、どの医師にも「なるべく早く治療すべきである」との認識があります。しかし一般的に行われているいわゆる「水いぼとり」は確実な方法ではありますが痛みと恐怖を伴うという大きな欠点があり、上述したように「自然治癒があるのだから、痛みの少ない治療を優先すべきである、あるいは全く放置する」という考え方の医師もいます。

一方、自然治癒が多い反面、放置しているうちに数が多くなり、「水いぼとり」に頼らざるを得なくなったり、湿疹やとびひを併発して子供たちをもっと苦しめるはめになることも経験します。「治療すべき」か「治療せざるべき」か、また治療するにしてもどの方法がよいのかについては一概には言えないのが現況です。どれを選択するかは子供には決めれませんので、ご家族でよく相談なさってください。

1)ピンセットによる圧出(curettage):約1時間前にペンレステープなど外用局麻剤使用した後にピンセットで摘み取る。
(長所:直ぐに治る。欠点:痛みと恐怖。余りに小さいものは処置できない。)

2)液体窒素凍結療法(Cryotherapy):綿棒などを液体窒素に浸して患部に押し当て、細胞外水分を凍らせて、細胞を脱水させて壊死にいたらせる。
(長所:ピンセット処置よりは痛くない。欠点:痛み、痂皮形成など。)

3)サリチル酸貼付:スピール膏を病変のサイズに合わせて切って貼付。数日すると白くふやけて脱落。
(長所:痛くない、自宅で出来る。欠点:手間がかかる、周囲の健常皮膚を痛めることあり。)

4)硝酸銀・トリクロロ酢酸:腐蝕させる。ケミカルピーリングの一種。
(長所:痛みが軽度。欠点:軽い刺激感(硝酸銀の方が軽い、モノクロロ酢酸ではチクチク感強い)と硝酸銀では塗布部に2週間ほど角質の黒色の色素沈着が生じる。 )

5) 10%KOH(potassium hydroxide):1日1~2回綿棒で患部に約30日外用。刺激感(stinging)。強力なアルカリで蛋白を消化。
(長所:痛み少ない。自宅で可能。欠点:刺激感と効果の不確実さ。 )

6)グルタールアルデヒド:1日1~2回綿棒で患部に毎日外用。褐色の色素沈着が現れる。
(長所:痛み少ない。自宅で可能。欠点:皮膚の着色と効果の不確実さ。 )

7)ヨクイニンを内服:免疫反応を増強し、自然脱落を早めるといわれます
(長所:痛みがない。欠点:毎日クスリを服用しなければならない。効果不確実。 )

8)自然に治るのを待つ:時間はさまざまですが、待てばほとんどの場合消えます。湿疹病変のコントロールは同じく必要です。
(長所:手間と金いらず。欠点:時間がかかる(半年から3年)。湿疹病変が増悪することあり。 )

9)その他にカンタリジン(cantharidin; Cantharone)、レチノイン酸、5-Fu、1%imiquimod(Aldara)の外用などが有効であったと報告されていますが、当院では薬剤入手・コスト・刺激性の点から施行していません。


◆プール
昔はスイミングスクールで水いぼが多発して問題になったことがあります。この問題の研究をされた方によると、この時の水いぼには、わきの下に多発するという特徴があり、ビート板がウイルスを媒介していた可能性が示唆されています。園や保育園ではビート板を使うことは少ないようですし、最近は衛生管理が良くなったためか、スイミングスクールでの水いぼ問題を聞きません。旧文部省の通達で、ビート板の共用さえしなければ学校ではプールに入ってよいことになっています。

プールの水の中に水いぼのウイルスが存在するかどうかは明確なデータがありませんが、主には肌と肌の直接的な接触によってうつりますので、大人 と違い子供たちプール遊びの特徴は裸でのじゃれ合いである以上、プールに限らず集団生活を送ればうつります。しかし、じゃれ合いも子供たちにとっては大切でしょう。子供たちが安心してプール遊びができるように、また保護者が安心して見守れるように環境を整えて、プールの是非について各施設と保護者たちが共通の認識を持つことが大切だろうと思います。プールに入っていいかどうかについては、医学的見地からだけではなく、施設の管理者など子供たちの健康を守る義務を課せられた人たちの立場も尊重して決められるべきものでしょう。


◆注意点◆
1) 水いぼ自体の積極的な治療は別として、乾燥や痒みに対する治療は行うこと。
2) 肌と肌の接触により感染することが多いので、狭い浴槽などを使用するときは患児と直接肌を合わす機会を減らすように工夫する。
3) 水泳・水遊びの後は全身をよく洗う。適宜、保湿剤などの外用を行う。
4) 緊密な接触によって感染するので、タオルやその他の衣服類、水泳時のビート板の共用をしないこと。