術伝流 養生の一本鍼~体得篇~ No.5
手指への灸:顔面部の炎症、カゼの初期
術伝(和方養生技術伝承塾) 金子芳幸
(1)はじめに
先回まで、手足に出ているツボに刺鍼して、肩腰などの症状を改善する「手足に引く」刺鍼法での自己養生を紹介しました。今回は、手の指に出るツボへの灸による顔面の炎症症状やカゼの初期などの自己養生を紹介します。
顔面部の炎症とは、モノモライ、ニキビ、小鼻の腫れ、口唇ヘルペス、口角炎などです。
これも、とても効果的で、身に付ければ重宝します。また、効果を味わうことで、灸の実技能力を高めるのにも役立ちます。
(2)用具
手指のツボは細かいので、達人ならともかく、凡人では指で特定するのは難しいです。鍼柄くらいの太さのものを使って特定します。写真1
使いやすいものを使えばよいと思います。
あと、硬くて細い糸状灸を手早く作れないなら、手指用糸モグサが便利です。また、灸点墨があれば、モグサが立ちやすいです。どちらも、鍼灸用品店で手に入ります。
(3)炎症の位置と出やすい指
炎症の位置から、どの指に出やすいかが見当がつきます。手足の甲のツボと体幹部の関係と同じです。左右と前横後が基本です。炎症の位置の左右で、左右どちらの指に出やすいか決まります。
鼻や目頭など顔の中央に近ければ、親指に出やすいです。目の中央あたりなら示指、目尻あたりなら中指、耳あたりなら薬指、耳より後ろなら小指です。
(4)指のツボの取り方
3.の関係から予測した指のツボを探します。モノモライやニキビなど顔面部の炎症では、骨空に出ていることがおおいです。骨空は、近位指関節背側中央のくぼみです。また、風邪の初期には、井穴に出ていることがおおいです。写真2
付け加えると、凹んだ痕が大きめで、凹みが黒ずんで見え、凹みがなかなか消えにくいところも、効果が出やすいところの特徴です。比較すると、効果が出にくいところは、凹んだ痕が小さめで、色も赤いことがおおく、凹みが比較的すぐに浅くなりますし、押したときの痛みも少ないことがおおいです。
ただし、痛みの場合は、麻痺して痛まないこともあり、他の判断基準もふくめ総合的に判断したほうがよいです。
(5)モグサを立て、点火
硬くて細い糸状灸でするときは、まず、ツボに灸点墨をぬり、それから糸状灸を立てます。写真3 写真4
写真5 写真6
火のついた部分の先端のほうは、灰がたまりやすく、火はつかずに、モグサを持ち上げてしまうことがあるので、利用しないほうがよいです。
熱いと感じ、手を思わず動かしてしまうくらいが適度です。たいていは、1回目で熱く感じます。熱く感じなかったら、もう1壮します。
熱さを感じたとたんに症状は軽減します。モノモライなど、その瞬間にツラさを感じなくなります。
日曜工作で失敗し、白目を傷つけ赤くなり、かなり痛かったことがありました。その痛みも、1回の指への灸で、すっかり消え、ビックリしました。
(6)ニキビは、肩関節のツボも併用
ニキビの場合には、そのときには、腫れた感じが少なくなり、翌朝に効果が出ていることがおおいです。額や頬など大きなニキビが多量に出ていた人も、1回で1/10になり、びっくりされていました。写真7
ニキビの範囲が広ければ、それに応じて、2本の指をえらびます。そして、1本目の指のツボ、肩関節のツボ、2本目の指のツボの順で施灸します。
基本的に上衝の症状なので、手順は陽明で終えたほうがよいので、2本の指の1つが示指なら、示指で終えます。示指が2本の指になければ、示指に近い指で終わるようにします。中指と親指なら親指で終わるようにします。
(7)カゼの初期は、左右の親指小指の井穴
カゼの初期には、左右の親指と小指の井穴が効果的です。親指の井穴は、上衝や前頭部まわりの症状に効果的です。小指の井穴は、後頚部、大椎まわりなどのコリに効果的で、結果的に熱を下げます。スタイラスなどで押してみて痛さなど反応を感じたところに施灸します。よくわからなければ、8か所の全部に施灸してもよいです。手順は、小指を先にし、親指を後にします。
写真8 写真9
灸と粒鍼で、一晩でカゼが抜けてしまうこともおおいです。そういうときは、銀色だった粒鍼が、サビて赤茶色になっていることがおおいです。
(8)おわりに
今回取り上げたような症状を自分で施灸などして改善する経験を増やしていきましょう。内科系の症状を鍼灸で改善するコツがつかめるようになっていきます。繰り返しになりますが、他人の体の中のことよりも、自分の体の中のことのほうが分かりやすいです。施灸前、施灸中、施灸後の自分の体の中の変化をよく味わうことが大切です。 カゼやニキビなどでは、次の日の朝くらいまで、体の中で変化が続くことがおおいです。それもよく味わってください。そういう体の中の変化を味わうことが、他人の体の中の変化が分かるようになる「初めの一歩」です。
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