ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 Death Game Ⅰ2017年4月23日 20:21このお話は実在する全ての団体人物と関係ありません。お名前だけ借りた激しい妄想です。テレビから今日も流れるのはどこかの国が戦争を始めたとか、新たに軍人雇用を増やした、だとかつまらないものばかり。いつの間にかバラエティやアニメは教育上宜しくないとお偉いさんがかなり減らしてしまった。だからこの小さな箱はいつだって戦場しか映さない。そのまま画面の中に飛び込んでいけそうなリアル感、が謳い文句のテレビを見ても思う事は特にない。誰々さんが死にました、父が殺された、子供たちを救ってください─。そんな声を聞いて心動かす人がこの世界のどこにいようか。きっとよほど正義感が強い奴か理想主義者しかいないだろう。ちなみに俺はそうなんだ、頑張ってね、それだけの感想しか浮かばない。だけど俺の仲間は感情豊かで。例えば床に胡座をかいて座るサングラスの男。彼はニュースを見ながら「かわいそうだねぇ」と口にする。真面目に画面を見ながらの時もあれば、スマホ端末でゲームをしながらの時もある。本気でそう思っているかは分からないけど、人が死ねばいつも「かわいそうだねぇ」と言った。例えば俺の隣で偉そうにサンドイッチを食べてる小柄な男。頭にはトレードマークの般若のお面が斜めにかかっている。そんな彼は「ぴーぴーうるせぇんだよ糞が」と苛立ちを表している。助けてください、弱いものを大切に。そう言った言葉が聞こえる度に彼は大きく舌打ちをした。例えば床に寝転がって微睡んでいる男。彼はニュースに対して何も言葉を発しない。俺と一緒かと思えばそうではない。深く被ったフードから覗く目は悲しみに染まっていた。特に子供が大量に死んだ話だとか新たな軍用動物の話だとか。以前涙を静かに流しているのも見た事がある。そんな仲間の名をFB777、aromahot、eoheohという。「きぃっくん〜」「何だよ気持ち悪い呼び方すんなや」「俺ゲームしたい〜!」「……時間、ないんじゃないの」「まぁなんとかなるべや?もし遅刻しても大将様が責任を取ってくれるそうなんで」「いやいやあろま待て!?俺まだ何も言ってねぇぞ!?」FBの言葉に俺はにやりと笑ってテレビのチャンネルを変えた。昔よりかなり厳しく制限されたテレビより面白いもの、それがゲームだ。どんな世界にでもすぐ旅立てる凄いツールだと思う。俺たち4人はゲームが大好きで、ほぼ毎日集まってはコントローラーを握る。俺はファンタジーの横スクロールゲームやカート系が好きだし得意だ。FBとeoheohは戦闘系FPSをよくやっている。正直リアルでもやってるのに、ゲームの中でまで銃で戦って飽きないんだろうかと思った事はある。あろまは結構雑食で、何故かパーティーゲームは毎回勝つとかいう意味分からない特性を持っていた。最近ハマっているのは世界を自由自在に作れるゲーム。四角の箱で出来た世界は子供の頃遊んだレゴブロックを思い出す。俺が知る中で一番自由度が高く、いくらやっても飽きないゲームがこれだ。最新アップデートで魔法や新たなモンスターが加わり更に面白くなった。「森を燃やすの楽しー」「やめろよ重くなるだろ!」「砦壊すのさいこー!!」「なにこれ新生物?…送っとこ」「お前ら好き勝手にあしょびちゅぎだぞ!!」広い世界で俺たちはめいいっぱい遊ぶ。この時間が一番好きかもしれない。こんな風にずっと、コイツらと遊び続けたいっていつも思ってる。だけどそういう時間はすぐ過ぎるもので。「あっ」突然テレビの画面が黒に染まった。その後すぐ赤字で“緊急招集”の文字が浮かぶ。あろまが大きく舌打ちをした音が聞こえた。俺はというとセーブちゃんとしたかった、と思った。お偉いさんもすぐ切り替えるんじゃなくて、予告してからして欲しい。部屋から出て行きたくない。三十分くらいの楽しい時間が泡となって消えたのを惜しんで、俺はテレビのスイッチを消した。「電気消してけよ〜」「お前は俺らの母さんか」「えふびが母親とか死んでもやだわ」「ぶえええええ!?隊長酷くないですかあ! ?」「FBパソコンは切っていい?」「あぁ駄目!つけぽあなしでだいちょうぶ!デス!」「日本語喋れや」「ちょっと噛んだだけでしょ〜!!」各自自分の持ち物を持って部屋を出る。俺が持っていくのは音楽プレイヤーだ。ソファから立ち上がり俺は空を浮く。背中から機械の羽が生えるのは未だに慣れない感覚だ。「よし、消すぞー」部屋の電気をパチっと切る。光っているのはFBのパソコンだけ。その画面に映っていた広告が目に入った。“貴方も不老不死になりませんか?”まだ募集してたんだって思う。もう何人もの犠牲者を出しているのに呆れた事だ。「きっくん行くよ」「今行く!」えおえおに呼ばれて我に返り、部屋の扉を勢い良く閉めた。頭でチラつくあの広告を払う様に首を振る。頬を両手で軽く叩いた後、ヘッドフォンを耳に当てて3人を追った。*****俺たちはただの人間じゃない。戦闘用プログラムをインストールされたいわば機械人間だ。信じられないかもしれないが、脳みそ以外の身体は全部機械で出来ていると言ってもいい。眼球も腕も脚もみんな機械だ。それに俺たちは心臓を持っていない。身体のコントロールを全て脳みそで行ってるから必要ない…らしい。詳しい事は分からない。もっと博士とやらに話を聞いとけば良かったなと思う。まぁFBが殺しちゃったから叶わない望みだけれども。こうなった経緯を話すのは結構簡単だ。小さい頃、不老不死の意味も充分に理解出来てなかった頃。ゲームのキャラみたいに強くなりたい!という気持ちだけで政府の実験に参加したのだ。あの、“貴方も不老不死になりませんか?”という広告を見て。だけどひとりじゃ怖かったから仲良しな3人を呼んだ。FBはノリノリで、あろまは嘘だろと馬鹿にしてて、えおえおは眠そうだった。俺が巻き込んだ。目が覚めたら身体はもう自分のものじゃなくなっていた。見た目や肌触りは変わらないのに、胸に手を当てたらすぐに理解した。心臓が動いてないのに生きてる、俺はもう人間じゃないんだ。機械になったんだ、と。そして決定的に違う事がある。俺は機械化の副作用で歩けなくなっていたのだ。博士の話によると設計自体は完璧だったけど、俺の脳みそとの融合ができなかったとかなんとか。正直よく覚えていない。けれど偶然か必然か。サッカーが出来なくなるのは少し痛かったけど、それは大した問題にならなかった。なぜなら俺は脚を失った代わりに翼を得たから。シルバーを基調としたゴツイ翼。見た目とは裏腹にゲームのキャラみたいに羽ばたくことが出来る。しかもたまに羽みたく部品が落ちる謎仕様付きだ。普段は身体の内部にしまっているが望めばいつでも生やすことが出来る。だから移動する時だけ生やして飛んでいく、みたいな事が可能なのだ。『MSSP班、目的地に向かってください』女の機械音声がヘッドフォンから聞こえて、俺たちは互いを見合って頷き合う。FBはサングラスをかけ直し、あろまは食料をリュックに詰めて、えおえおは上司から渡された資料をたたんでポケットに。俺はポケットの中に入れた黄色の音楽プレイヤーのボタンを押した。軽快なギターの音が頭を回る。俺が大きく羽ばたいたと同時に3人は出撃した。一番戦闘を走るのはあろまだ。彼はスピード特化型戦闘アンドロイド。とにかく動きが速く俺らですら目が追いつかないほどだ。それを武器に突撃して前線を切り開いていく。持っている武器はキラリと白銀に光る日本刀。たまに落ちてた敵のナイフとかも拝借してるらしい。あまりの速さに焦点を合わせる余裕が無いためいつも近接武器を使って戦っている。しゃがみこんで足首の靭帯を斬って動けなくしたり、ナイフを眼球に突き刺したり。首をバッサリはねたりもする。一番華やかな動きをするのは彼だろう。返り血一つ浴びないでどんどん前に進む。狙われた敵は自分が殺された事を理解する前に死ぬだろう。けれど俺と同じ様に欠点がある。それは大量のエネルギーを一気に消費する為スタミナがすぐに足りなくなるという事だ。まぁ一般人よりは普通にあるんだけど。だからあろまは食べ続けなければいけない。そうじゃないと動けなくなるどころが痩せていってしまうからだ。リュックに詰められた食料はどれも専用に作られたハイカロリーなものばかり。片手で日本刀を握って敵を殺しながらパンを頬張っていた時は味方ながら戦慄した覚えがある。あろまの後ろを付いていくのがFBとえおえおだ。FBは防御とパワー特化型戦闘アンドロイド。とにかくあいつは硬い。銃で撃たれてもナイフで切りつけられても傷一つ付かないのだ。戦車でドカンと撃たれてもそのまま前を歩いて行く。ある意味一番人間っぽくないのがFBかもしれない。最後まで死なないのは誰かと問われたら全員迷わずFBを指差すだろう。博士は不老不死を謳っていたが実は少し違う。脳みそを破壊されたら死ぬからだ。俺らにとって脳みそが心臓なんだ。例えば俺は空を飛ぶため部品の一個一個が軽く薄く作られているから、耐久力が少し低い。それはあろまも同様だ。少しでも早く動けるように洗練されている。もし最高威力の大砲で頭を吹き飛ばされたら、間違いなく俺とあろまは死ぬ。えおえおも耐久力はあるが死ぬだろう。FBだけが無傷で笑って立ってるはずだ。そんな圧倒的硬さを武器にしてFBはあろまが壊せない戦車を破壊したり、俺らの盾になって進むことが多い。それにあいつは長距離攻撃が得意で、戦場の真ん中で突っ立って敵のスナイパーを撃ち殺したりもする。殺される心配がまずないから隠れることなんてしないのだ。そんな彼の欠点はあろまと対照的にスピードがない事。説明せずとも分かると思う。実はあともう一つある。戦闘中でも日常でもあまり関係ないかもしれないが、あいつは涙が流せない。感情が普通の人間より拙いと言うべきか。その代わりと言ったらなんだが笑顔を見せることが多い。それこそ、戦場でだって笑ってる男だ。数え切れない弾丸の雨をくらいながら明日出るゲームの新作を業者並に詳しく、キラキラとした目で語るなんてザラだ。あとよくピザ食べたいと口にする。そういう日常会話を血塗れになりながらしてる時、少し怖いと思った時があった。えおえおは情報処理特化型戦闘アンドロイド。俺らの中で唯一の頭脳派だ。視力と聴力がずば抜けて良く、記憶力も良い。資料に目を通すだけで内容を全部記憶する事なんて赤子の手を捻るようなもの。戦場においても見えたモノと聞こえたモノから即座に判断して、敵を効率的に潰す指示を出してくれる。守られるべき存在であると同時に、FBの遠距離攻撃と相性が良いのもあり大体あいつらは2人でセットだ。またハッキングなども得意で敵軍に乗り込み情報操作もできる。えおえおの凄いところは戦闘能力も高いということだ。元々のセンスもあったのだろうがコツコツと努力をして、戦闘する為だけにプログラミングされたアンドロイドより強くなった。びっくりするとナイフが出る、というレベルまで発達した反射神経を駆使して、主に近接武器で戦うことが多い。そんなえおえおの欠点は痛みと温度を感じない事。戦闘でそれらを感じないなら有利じゃないかと思ったら大間違いだ。確かにその場一瞬ならある意味最強と言えるだろう。だけれども気付かない傷が身体を蝕み急に動けなくなる、熱中症になっているのに気付かず敵前にしてパタリと倒れてしまう。そうしたらとても怖い。もう死んだも同然だ。だから彼は単独行動の許可がおりていない。けれど本人はその時はその時じゃない?とゆるく考えていて、何度か一人で戦場を走り出した事がある。自分を大切にしていないというか、どーでもいいという姿勢が俺は恐ろしいと思う。そして俺は、飛行特化型アンドロイドだ。空を飛んで上から爆弾を落としたり銃で撃ったり好き放題している。欠点は地面を自分の脚で歩けないこと、だから地上戦と接近戦が苦手ということ。それだけだ。しばらく空中で音楽を聴きながらふわふわしてると、音が止まった。通信だ。「きっくん、目標を確認したら教えて」「りょ〜かい」「なぁ俺突っ込んでいい?」「ちょっとくらいまっちぇなしゃい!!」「なんだハゲ殺すぞ」「ハゲは俺だ……えおえお、一番奥にそれっぽいの見つけた。いちにーさんしー…十人?」「ん、データによると」「流石に多過ぎだろ、パチモンじゃねぇの?」「かもしれないね」「きっくんちなみにそれ以外は?」「ざっと50くらいかな〜、結構散らばってる」今日の任務は一つの小隊の殲滅だ。どうやらその隊の中に俺らと同じ機械人間が生まれたらしい。そいつを殺すついでに全員殺してこい、と要はそういうことだ。今のところ把握出来ている機械人間は俺らだけだ。博士曰く人間の細胞とアンドロイドの細胞の融合がかなり難しいらしい。どうしても拒絶反応が出てしまうため、身体がグチャグチャになってしまうんだとか。俺らが今生きている…のは本当に奇跡で、何度か敵軍に拉致されそうになったこともある。まぁ全部殺しちゃったけど。拉致を諦めた敵軍はどうにかして機械人間を生み出そうと頑張っているとは聞いていたが、まさかそんなに誕生しているとは思わなかった。「ってかずるくね!?俺ら四人だぞ! ?」「いいなぁ俺敵軍にはいりたい」「なんてこというのえおえお!めっ!」「俺もあっちふぁいいふぁー」「食べながら喋らないっ!!」「だってお腹空くんだもん」「そうだな、とっとと殺っちまおうぜ」「じゃあ…きっくん撃って隠れてるの炙り出して?その後俺ら行くわ。あと一応一人尋問用に残しておいて」「はーい!」「了解ですっ!」「はいよー」えおえおからの指示が通って通信が切れる。途端に広がるのは豪快なギターの音とピアノの音。空を飛びながら音楽を聴くのが好きだ。開放感があって良いし、テンションが上がる。「いきますか」俺は翼の形状を変化させて、大きく羽ばたかせた。落ちていくのは羽じゃなくて爆弾だ。落ちていく爆弾を見送って俺は鼻歌を歌った。*****結局その部隊を殲滅させるのにかかった時間は十五分もなかった。機械人間がいるという話も全くの嘘。弱くて笑い出してしまうレベルだった。 「喧嘩売ってンのかテメェらは」 そうぶつぶつ呟きながら敵の頭を踏みつぶすあろまが視界に入った。おにぎりをもぐもぐ咀嚼しながら、足下でグチャグチャ汚い音のステップを踏む。アンバランスな光景に俺はやっぱり笑うしかない。他の二人はどうしていたかというと、FBはスマホを取り出しゲームをしていて、えおえおは真面目に上司に報告をしていた。ごくろうさま。俺もふらふら周りを飛んでみたけれど肉片だらけでつまんなかったから、結局スマホを開いてtwitterを見る。しゅっしゅと慣れた手つきでスワイプをして、情報の海を泳いだ。好きなアーティストの新作情報で心を躍らせ、服の新作を眺めて何を買おうか考えたり、可愛い犬の写真を見て癒された。後は定期的に流れてくる今の時代を皮肉ったツイートを見て無駄だなぁと思ったり。お金をかけて広告欄に「今の世はこのままで良いのでしょうか?」だとか言う奴はよっぽど暇で裕福なんだろうなって思う。戦争なんて人間が全員死なない限り無くならない、絶対。そう思う俺が捻くれてるのかもしれないけれど。でもどこかでみんな気づいてると思う。綺麗な願い事は叶わないって。イヤホンから不吉なヴァイオリンの旋律が流れた時に、通信が入った。 「きっくん今どこいるのお」「上で飛んでる!なに帰る?」「報告終わった」「死体は燃やしとく?」「俺らが退散した後に頼んだきっくん、先帰ってるわ」「えっ」「俺眠いし早く帰りたい」「えっ」「じゃあきっくんよろしくでちゅ!!」「えっ、ちょ、ま」 ブチっと通信が切れて今の俺の心境を表すような悲しく暗い音楽が流れた。少し高度を下げて下を覗いて見ると、FBがあろまとえおえおを抱えて帰っている姿が見えた。ちょっと本気で寂しい。腹いせに転がってる死体めがけて無駄に爆弾を落としてスッキリしてから、もう一度空高く飛んで見下ろした。真下で死体が燃えて黒い煙と一緒に焦げた匂いも空に舞う。けれども今日も空は真っ青で綺麗だ。白い雲とのアクセントとか、太陽の光だって綺麗だ。俺らが何をしようが世界は変わらない。任務が終わった後いつも俺はそれを再確認している。ふわふわ浮かびながら帰ろうと翼を動かしていると、またブチッと音楽が消えた。 「きぃっくんはやくぅ」「お前らが追いてった癖にそんなこと言うなや!!っていうかずるいぞあろまにえおえお!!FB俺もおんぶしてぇえ」「流石に無理!!」「うぇーい楽ちん楽ちん」「全自動運び機」「うるしゃいっっ!!今すぐ落とすぞお前ら!!」「今すぐ降りて乗っかるから待ってろよFB!!」「ぶえええええ!?」さっきまでの鬱屈した気分はスッと消えた。こいつらと話している時間が宇宙一楽しい、だなんて柄にもないことを言ってみる。俺は今日一のスピードで飛んでアイツらの姿が見えた時、イヤホンを外して飛びついた。