Varix Op of HALクリニック

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下肢静脈の解剖と静脈瘤

 下肢の静脈は深い部分を走る「深部静脈」と表面近くを走る「表在静脈」の二つの系統があります。「静脈瘤」は表在静脈の拡張・逆流によって生じます。表在静脈は、足首の内側から下肢の内側を走って太ももの付け根の内側に入る「大伏在静脈」とふくらはぎの後ろ側から膝の裏に入る「小伏在静脈」の二つがあります。これらの表在静脈は、「穿通枝」と呼ばれる静脈の枝で深部静脈とも交通しています。そして、このいずれかの表在静脈(あるいは両方の表在静脈)に逆流が起こることが静脈瘤の原因になります。これら大伏在静脈、小伏在静脈の本幹に繋がっている枝の細い静脈が逆流によってだんだん太くなって、「静脈瘤」として外から見えるようになります。
 大伏在静脈の方が長いため、逆流を生じやすく、多くの患者さんでは膝下のふくらはぎの内側の静脈瘤が見られます。ただ、静脈の枝の広がりによっては内側だけでなく、外側や後ろ側にも出来てきます。小伏在静脈の逆流が起こった場合は、ふくらはぎの後ろ側を中心に静脈瘤が出来てきます。
 大伏在静脈の逆流は、最初は膝のあたりから始まってだんだん太ももの部分に広がってきます。「膝の下の静脈瘤で様子を見ていたら、だんだん太ももの内側の静脈が太くなって足の付け根まで広がった。」という患者さんが多くいらっしゃいます。


下肢静脈エコーによる基本方針の決定



 昔は静脈瘤の診断には静脈造影という血管撮影が行われました。現在ではエコーの機械が進歩したため、血影の流れをエコーで観察し、診断することができるようになりました。このため、静脈瘤の診断のために静脈造影を行うことはなくなりました。
 静脈のエコー検査を行って、静脈の太さや逆流の程度、穿通枝の存在を診断して、手術をする必要があるかどうかを決めています。

硬化療法

  比較的軽症で、静脈瘤が小さい場合に行います。保険診療上は「手術」に分類されていますが、実際には「注射による治療」という感じです。麻酔をしたり切ったりするわけではなく、静脈瘤に細い翼状針を刺してポリドカスクレロールという薬剤(硬化剤)を注射するだけなので、短時間で終わります。ポリドカスクレロールは、従来使用されていた硬化剤に比べて、注射に伴う静脈の痛みがほとんどないという利点があります。硬化剤を注入した後は、弾性ストッキングを履くだけで終了です。
 硬化療法では、重症の静脈瘤を治療するのは無理であるため、術前に静脈エコーでしっかりと診断する必要があります。また、硬化療法は伏在静脈自体をつぶすことが困難なので、伏在静脈の逆流が高度の場合は直ぐに再発する可能性があります。こうした場合は、高位結紮術を行う必要があります。硬化療法を併用すると、静脈瘤を広い範囲でつぶすことができます。
 外来で硬化療法を追加することは容易であるため、軽症の場合には有効な治療法です。また、伏在静脈の高位結紮術の手術治療後に小さな静脈が徐々に拡大してきた場合は有効性が高い方法です。女性でスカートを履くと静脈瘤が目立つことを気にされる場合も有効な治療手段です。


高位結紮術・静脈瘤切除

 静脈瘤の逆流の原因である表在静脈の本幹の根本の部分を縛って、逆流を防ぐのが「高位結紮術」です。手術といっても、局所麻酔で小さな皮膚切開で治療できる利点があります。ただし、大伏在静脈を足の付け根(ソケイ部)で縛るだけでは、交通枝と呼ばれる静脈の枝を通って深部静脈の血液が太ももの大伏在静脈に流れ込んで大伏在静脈の逆流を起こすので、再発が多いとされています。このため、膝の周囲で大伏在静脈を縛る方法をとっています。また、穿通枝が太い場合はこれも縛ります。大伏在静脈が太い場合は硬化剤を注入して太ももの大伏在静脈を確実につぶします。こうすることによって、下記のストリッピングと同等の効果が得られます。また、ストリッピングのように静脈を引き抜かないので、細かな皮神経を障害せずに皮膚の知覚異常が生じることが少ないという利点もあります。
 さらに、ふくらはぎの静脈瘤を切除したりすることを追加して行います。静脈瘤の状態によっては硬化療法も併せて行います。こうした手技の組み合わせることによって、日帰り手術が可能であり、入院の必要がないという利点があります。手術後は通常通りに歩いたり仕事をすることが可能です。特に自宅での療養も必要ありません。日常生活での制限も、手術直後の入浴以外はありません。


ストリッピング

 逆流している大伏在静脈を引き抜いて取ってしまう手術です。図のようなストリッパーという道具を大伏在静脈に通して、この道具ごと静脈を引き抜きます。大伏在静脈を縛ることに比べて取り去ることでの確実性があります。従来は足の付け根(ソケイ部)から足首に渡る大伏在静脈全長を引き抜いていましたが、最近は足の付け根から膝の部分だけを引き抜く手術を行うことが主流になりました。全身麻酔や下半身麻酔が必要なことが多く、入院が必要でしたが、最近は1日入院や日帰り手術が可能になってきました。ただ、上記の「高位結紮術」に比べると、手術規模が大きく、麻酔も広範囲にかける必要があり、出血等の危険があるため、慎重に行わなければなりません。重症な静脈瘤ではストリッピングを行うことが必要ですが、高位結紮術にいろいろな操作を組み合わせることが出来るようになったので、従来に比べて「ストリッピング」が必要な場合は減少しています。


治療方針の決め方

 静脈瘤の治療方針を決めるときには、静脈瘤の範囲や太さだけでなく、静脈エコーのデーターを参考にします。「足がだるい」「立っているとむくむ」などの自覚症状は治療方針を決める上で重要なポイントになります。特に、うっ血によって色素沈着や皮膚炎、潰瘍が出来ている場合は重症なので手術を行うのが良いと思われます。
 静脈瘤は「いちどなると自然に治ることがない」という特徴があります。軽症から重症までいろいろな段階がありますし、画一的な治療ではなく、そのひとに一番適した治療を行うことが必要です。また、長い経過なので、症状の推移を見ながら治療方針を決めていくことも必要です。
 当院では、患者さんごとに静脈瘤の状態を的確に判断して、患者さんと相談しながら治療方針を決めていきます。治療だけでなく、日常生活における指導や長期にわたる経過の観察を行っています。