新適応の薬剤を用いた多剤併用療法が登場
B細胞性リンパ腫の治療薬 R-CHOP療法(リツキサン+エンドキサン+アドリアシン+オンコビン+プレドニン)/VR-CAP療法療法 (ベルケイド+リツキサン+エンドキサン+アドリアシン+プレドニン)
多くの種類がある悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、病理学的には非常に多くの病気に分類されています。大きく「ホジキンリンパ腫(HL)」と「非ホジキンリンパ腫(NHL)」に分けられますが、日本人の悪性リンパ腫は、その90%以上が非ホジキンリンパ腫です。
適切な治療を行うためには、きちんと病理学的な診断をつけなければなりません。それと同時に、実際の治療で使いやすい臨床分類も必要になります。
一般的には、無治療の場合にどのような経過をたどるかによって、悪性度を次のような3つに分類します。年単位で進行するものを「低悪性度(インドレントリンパ腫)」、月単位で進行するものを「中悪性度(中等度アグレッシブ・アグレッシブリンパ腫)」、週単位で進行するものを「高悪性度(高度アグレッシブリンパ腫)」とするのです。B細胞性リンパ腫も性リンパ腫も、この悪性度によって分類できます(表1)。
悪性リンパ腫の中で日本人に最も多いのは、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫です。この病気に対しては、療法(*リツキサン+*エンドキサン+*アドリアシン+*オンコビン+*プレドニン)という多剤併用療法が標準治療となっています。
*リツキサン=一般名リツキシマブ *エンドキサン=一般名シクロホスファミド *アドリアシン=一般名ドキソルビシン *オンコビン=一般名ビンクリスチン *プレドニン=一般名プレドニゾロン
どんな治療?❶――療法
リツキサンで治療成績が向上
リツキサンが登場する以前、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対しては、療法が標準治療として行われていました。療法からリツキサンを除いた4剤による併用療法です。
この病気には抗がん薬がよく効くため、強力な多剤併用療法がいろいろ考案されました。しかし、それらを比較する無作為化比較試験によって、効果には差がないことが明らかになりました。それならば、最も副作用の軽い治療がよいという理由で、療法が標準治療となったのです。
この療法に、その後、新たに開発されたのリツキサンが加えられ、療法となります。
リツキサンは、細胞膜にCD20という分子をもつ悪性リンパ腫に対して、治療効果を発揮します。リツキサンがCD20に結合すると、免疫細胞がその細胞を異物と認識できるようになり、攻撃を始めるからです。つまり、リツキサンは免疫力を利用して治療する薬なのです。
通常の抗がん薬とは全く異なる作用をもつため、抗がん薬と併用することで効果が上乗せされます。また、副作用も異なるため、特定の副作用が増強されることはありません。
療法と療法を比較した臨床試験では、はっきりした差が現れました。5年は、療法では45%でしたが、療法では58%と向上したのです。リツキサンはCD20が陽性の場合に使える薬ですが、B細胞性の悪性リンパ腫はほとんどがCD20陽性であり、リツキサンを使用できます。
療法が標準治療となったことで、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の治療方針が変わりました。療法が標準治療だった時代は、再発する可能性が高い進行期は療法を行った後、可能ならすぐに自家移植が予定されていました。
療法が標準治療になると、それでに入り、リンパ腫が消えた状態が長くなる人が多くなりました。そこで、療法を行った場合は、再燃したら自家移植を検討する、ということになっています。
療法の投与方法
療法は、3週間を1コースとして治療が進められます(図2)。1日目にリツキサン、アドリアシン、エンドキサン、オンコビンを点滴し、1~5日目にプレドニンを内服します。医療機関によっては、リツキサンを1日目、他の4剤を2日目に投与することもあります。
病巣が限局していて放射線の照射が可能な場合は、療法を3コース行ってから、放射線療法が行われます。病巣が限局していない場合は、療法を6~8コース行います。
療法の副作用
療法で使用される薬剤では、次のような副作用が現れることがあります。
リツキサンの副作用で最も問題なのは、薬を投与した時に起こるインフュージョンリアクション(輸注反応)です。発熱、悪寒、皮疹、喉の違和感、鼻づまり、呼吸困難などの症状が現れます。予防薬を投与するとともに投与速度をゆっくりにし、症状を観察しながら、段階的に投与速度を上げていくようにします。
もう1つは腫瘍崩壊症候群です。治療により急激に多くのリンパ腫細胞が崩壊し、尿酸やカリウムなどの物質が一気に血液中に放出されます。それにより、不整脈や腎障害などが起こることがあるのです。これに対しては、電解質のバランスをとり、十分な水分の点滴と尿酸を減らす薬などで対処します。
エンドキサンは、出血性膀胱炎を起こすことがあります。代謝された薬が膀胱内に溜まると、膀胱の粘膜が傷害されるためです。水分をしっかりとり、排尿をがまんしないようにします。
アドリアシンは、心臓への毒性が問題になります。治療前に心電図検査や心臓超音波検査で、心臓の機能を調べます。
オンコビンは、末梢神経障害を引き起こします。手足のしびれがひどくなると、ボタンをかけられなくなったり、歩行に不自由が生じたりします。そうなる前に、薬を減量したり中止したりします。
プレドニンはステロイド薬なので、感染症にかかりやすくなる他、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などを引き起こしやすくなります。