アタマではわかっていても、つい自分にとってラクな方へと流されてしまう...。ヒトは、大なり小なり感情の生き物ですから、当たり前のことかもしれません。そこで必要なのが「自制心」。こちらでは、このテーマについて詳しく採りあげてみたいと思います。
■そもそも自制心は、どのように働くのか?
日々サバイバルだった時代、自制心の鍛錬は必要ありませんでした。食べたければ狩りをし、生きるために獲ったものを食べるだけです。次第に、これは効率的な方法でないことに気づき、農業という人類最大の「ライフハック」が発明されました。必要なときに食料があり、サバイバルのための戦いは、それ以前と比べるとシンプルに...。食料に余剰が生まれ、食べすぎといったことも起こるようになりました。このような生活スタイルのシフトにより、ヒトに自制心が必要となったのです。
もちろん、セックスや富、権力といった欲求は、ヒトに生まれつき備わっているものですから、それ以前にも、自分を制御する術は必要だったのですが、これらの欲求は、実際に現れてから結果にいたるまで、それほど時間がかかりません。たとえば、強盗目的で誰かを殺せば、自分を殺してやろうという敵をすぐ作ってしまうでしょう。
一方、より現代的な欲求は、すぐに結果が出ません。たとえば、コンピュータなどの技術によって、あらゆる仕事がラクになりましたが、ハイテク中毒やハイテク疲れ、座りっぱなしの不健康な生活など、「副作用」が現れています。テクノロジーは私たちの欲求を満たし続けていますが、これゆえに、私たちはこれまでとは違った新しい方法で、自制心を鍛錬しなければなりません。そして、問題は「言うは易し行うは難し」という点です。
では、なぜ自制心を生み出すのはそんなに難しいことなのでしょうか?
その主な理由は、欲望のままにいるほうがずっとカンタンからです。たとえば、健康的な食生活を望むなら、自炊するのがベターですが、料理するという手間がかかり、デリバリーを注文する方がラク。もちろん、これは賢い選択肢ではないかもしれませんが、短期的な効果として、食事を楽しみたいという現在の欲求を満たすことができます。しかし、欲望のままでいるとどうなってしまうのか? については、あまり気にしません。
ヒトは未来のことを予測できないので、いまこの瞬間、自分が心地いい選択をしがちです。たとえば、料理が好きでない人が料理をするとなると、多大なエネルギーを出さねばならず、ずっと不快なはずです。大きな課題は、刹那的な欲求による悪い選択を避け、より賢いものを選ぶよう、自分をモチベートすること。これは、カンタンなことではありませんが、不可能なことでもありません。
そこで、自制心を養うための具体的なコツをご紹介しましょう。
1. 訓練、訓練、また訓練
もっともシンプルな方法は、訓練すること。テレビを観るのをやめる、外出をやめる、寝室でパソコンを使わないなど、普段やりすぎていることを、まずは、1週間やめてみましょう。
1週間では習慣を断ち切るのに十分ではないですが、これくらい短期間ならカンタンですし、これをクリアできれば、自信にもつながります。1週間やめられたら、もう1週間と、さらに続けていきましょう。1ヶ月クリアできれば、習慣が変わっているはずです(このテーマについては、ライフハッカーアーカイブ記事「Google社員が伝授する、退屈な日常から抜けだして自分をポジティブにするコツ」もご参考まで)。これは、目新しい方法ではないですが、大いに役に立ちます。「1ヶ月、やめてみよう」と自分に言い聞かせて、1ヶ月経ったら、振り返りを行いましょう。たとえクリアできなくても、「1ヶ月やめ続けられなかった」ということがわかっただけで、まずは一歩です。
2. うまく気を紛らわす
ライフハッカーアーカイブ記事「『マシュマロテスト』から意志力のコツを学ぶ」でも詳しく採りあげたとおり、自分の気をうまくそらすことも、自分を律するのによい方法かもしれません。衝動に駆られれば、これを抗することは難しいもの。気をうまく紛らわして、その衝動について考えないようにすれば、衝動のままに悪い選択をするのを防げます。つまり、ココロとカラダを別のものに向ければ、その分、自分の裁量の幅が狭くなり、悪癖に戻るということも少なくなる、というわけです。たとえば、物理的に動きを制限するために手の上に座るとか、気をそらすためにおしゃべりする、といった方法は、カンタンで効果があります。
4. 自制しない場合のデメリットをでっち上げる
ヒトは、納得できないことはなかなか実行しづらいもの。そこで、自制しない場合のデメリットをでっち上げましょう。たとえば、経済的に苦しければタバコを買うことはできず、ゆえに、喫煙という悪習慣に陥ることもありません。もし、タバコを一服した瞬間に死んでしまうなら、あえて吸おうとは思わないでしょう。
このように、自分を経済的に苦しい、もしくは、強度のニコチンアレルギーだと思い込めば、禁煙を続けられるかもしれません。また、あえて障害を設けるのも一法。タバコを手の届かないところに置けば、これに手を出すのに手間がかかります。基本的に、ヒトは易きに流れやすいので、自制するよりも、元の悪習慣に戻るほうがカンタン。ゆえに、悪い方向にたやすく戻れないような工夫が必要です。
5. 不安を持つ
不安は、自制のための効果的な手段です。死んでしまうかもしれない、もしくは、すぐに害が及ぶかもしれないと思えば、悪い習慣を断ち切ることができるでしょう。もし、自分がピーナツアレルギーだったら、食べたらどんなことが起こるかわかっているので、どんなに食べたくても食べないはずです。
たとえば筆者は、お酒の量を難なくコントロールでき、ドラッグにも興味がありません。これは、依存経験を持つ家族がいるからだとか。お酒を飲んだり、一般用医薬品を飲む前に、どんな結果が起こるかを思い出し、これによって悪い選択が避けられているそうです。吐くまでドーナッツを食べ続ければ、二度と食べたくないと心底思えるようになるでしょうが、これはちょっと極端な手段...。「これをやり続けるとどうなってしまうのか?」少し時間をとって考えてみれば、不安感が湧き、自制に役立つでしょう。
ときに厳しく、ときになだめ、ときに励まし、自分が自分の応援団になって、自分の衝動や欲望と賢く付き合う術を身につけていきましょう。
Adam Dachis(原文/訳:松岡由希子)