成人看護学とは

対象を、変動する社会状況にかかわりながら社会生活を営む「大人」と位置づけ、成人に特徴的な健康生活の様相とそれにかかわる看護を学ぶ。人生で一番長く変化の著しい期間の対象者への看護を学ぶに当たっては、対象者の身体的な健康レベルだけでなく、これまでその人が生活していた家庭や社会における役割、生活習慣、価値観や心理的側面を理解することが求められる。

成人期の区分

成人期は大きく3つに大別される。

青年期:15~30歳 身体機能の発達、社会的自立の準備
壮年期:30~60歳(更年期を含む)成熟した身体の維持、社会・精神活動を図る時期
向老期:60~65歳 身体的衰弱の受容、精神活動の充実、退職・老年期への準備

成人期の身体的特徴

青年期
身体機能が安定、20歳頃に心臓・肺・腎臓・肝臓の重量が最高になる、
性成熟、行動体力と防衛体力はピークになる、近年は成熟前傾現象により早まっている
健康問題:15~29歳は1位自殺、2位不慮の事故、3位悪性新生物* 15-19歳では交通事故死が7割を占める

壮年期
身体機能低下、特に40歳以降に循環器の変化、
感覚機能低下(水晶体の弾力性低下)(聴覚、味覚の低下)
生殖機能低下(男性:ホルモン低下、女性:卵巣機能低下、ホルモン分泌低下)
自立した存在で子どもの養育、両親の老後の自立を支援する立場
健康問題:40-59歳は1位悪性新生物、2位心疾患、3位脳血管疾患
* 壮年期の男性の自殺が急増(経済的問題や病苦、精神的問題)

向老期
老化に伴う身体機能の低下への適応、 地位役割の変化への適応
精神的には総合判断力や人間関係の調整力に優れている、同一性と自己概念の再構築
健康問題:40-59歳は1位悪性新生物、2位心疾患、3位脳血管疾患*循環器疾患の受療率が増加

成人期における身体的特徴で押さえておかないといけないポイント

ライフスタイルが形成され、習慣的な飲酒や食べ過ぎや運動不足等の積み重ねが誘因となる生活習慣病が問題となる

健康状態に問題を抱えていても仕事の遂行や家庭の役割を優先せざるを得なくなり、セルフケア不足から疾病を悪化させていることもある

青年期の心理的特徴

青年期の発達課題・・・ (アイデンテティ vs アイデンテティの拡散)

丁度、中学時代から大学時代位までの期間を示していて、子どもから大人になる時期だと言えます。 “思春期”と言う言葉を用いると分かりやすいかもしれませんね。

この時期の危機は 「 同一性 」 と 「 同一性拡散 」 。

「同一化」とはこれまでの見てきた段階 ・・・ 「 肯定的側面 対 否定的側面 」 を心の糧としながら乗り越え、統合してゆくことを示しています。
そして青年期の段階にはいると、その同一化されたものを土台にしながら、自らの自己を作り変えてゆく ・・・ つまり、 「 同一化 」 → 「 同一性」 を経ながらに自己価値を見出してゆく段階であると言えます。

この時期は、 「自分とは何か?」 「自分は何がしたいのか?」 「自分には何が合っているのか?」 「自分は何になりたいのか?」 ・・・ と言う様に、自分自身に気持ちが向けられる時期でもあります。 
また、 「自分が自分であると感じている自分」 を意識しつつも、 「自分が周りにどう映っているのか?」 とか、 「周りからどのように見られているのか?」 と言った事が気になり始める時期でもあります。

◆例えば・・・、

・家族の一員としての自分
・長男長女としての自分
・男としての自分/女としての自分
・友達としての自分
・部活動を通じた自分(キャプテンとしての自分や、それぞれの役割の中での自分)
・クラスメイトの一員としての自分
・会社の社員としての自分  等々。

そうした周囲の人達との関係性の中から、自分とは何者なのか?との問いに意識を向け、その葛藤を乗り越える事で、自己を確信してゆくのです。

「自分が自分であるという意識」 や 周りからどのように見られているのか?」 言った意識は、これまでに獲得してきた課題(第1~4)の段階において 「 同一化 」 されてきた事を土台にしながら、 「 ・・・としての自分 」 を感じ始める時期。ですので、同時にそれは、 「 他者からどう見られているのか? 」という“認識に差”を大きく感じる時期でもあるのです。

また、この時期は第二次性徴を迎え、身体的にも大きく発達してゆく時期でもあります。
「思春期」とも言われているこの青年期は、性的な変化の時期を意味していると言えますが、自分の性への自覚と、異性に対する興味が広がる時期である為、心と体のアンバランスさに対して、 「自分が自分であっていいんだ!」 と思える “自己を肯定できる心の育み” も、 同一性の育みに繋がりえるのです。そして、この変化に対する心理的な克服として、友達や仲間との出会いが重要になると言うことがよく分かります。

そうして、子どもから大人へと、大きく変わりゆく自分に後押しされながら、大人として実社会に出ていく為の準備・・・意識の大人化を自ら図ろうとする時期なのです。

その過程においては、

・自分にとって「望ましいもの・望ましくないもの」
・自分自身の理想に「添うもの・添わないもの」
・自分にとって「大切だと思えるもの・そうでないもの」

と言った価値基準を選択したり、そぐわないものを放棄したりしながら、友達同士や、クラスメイト、そして、社会的に自分は自分であるという自信を持ち始めながら 「 同一化 」 → 「 同一性 」 を図る大切な時期。

この時期には、 「 自分で選択する(決断する) 」 と言う、必然性が強いられていく時期でもありますので、当然、悩み事も増えていきますね。 進路についての悩みを始め、異性を意識し始める初期段階でもあるので、恋についての悩みや相談事も増えていきます。
この時期に、何でも相談できたり、打ち明けられたりできる親友や友達を持つことが大切だとされる理由もここにあり、そうした悩みを一つ一つ解決してゆく過程そのものが、実は、この青年期を乗り越え、同一性を獲得してゆく上で大切な時期でもあるのです。

そうして、自分自身の自己価値を育んでいくのです。


しかし、この時期に 「 同一性 」よりも 「 同一性の拡散 」 が上回ってしまうと、心身に不安定な心を残しまう場合があるのです。
同一性の拡散」とは、その名のごとく、安定しないこと。定まらないこと。


つまり、自分自身の考え方や価値観・・・、もっと分かりやすく例えるなら、

・「自分はどういう人間なのか?」
・「自分は何がしたいのか?」
・「自分には何が合っているのか?」

と、言うこと分からないまま、不安定な状態のままで次の段階を迎えてしまうと言う事でもあります。
また、 「自分が自分である」 という心の育みが弱くなってしまうと言うことは、 “自分の欠点の認め” ができなかったり、“自信のなさ、自分を愛せない” と言った心の育みに繋がってしまうことにもなります。

少し余談になりますが、最近ではこの 「 青年期 」 を30歳位までとされる見方も出始めています。もちろん、段階年齢は人によって環境が違う為に様々なのですが、昨今のフリーターやニーとと呼ばれる人達が増えてきているのも、実は、この時期の仲間集団などを通じた親密性の育みの希薄化がもらたしている現象であるのかもしれません。

そうして、 「 同一性の拡散 」 が大きくなりすぎてしまうと、精神的不安さも大きくなり、自分自信が何者なのか分からなくなってしまう病になることも往々にしてあるようです。

つまり、この時期に必要となるものは、
※第二次性徴を迎える自分の身体への認め
※同年齢の仲間やクラスメイトとの親密さ、仲間作り
※相談者となりえる、お兄ちゃんお姉ちゃん的存在となりえる場の提供
※異性との関わり環境の場の提供 

が、とても大切になります。

成人期の発達課題・・・ (親密 vs 孤立)

「成人期」とは、おおむね20~30歳代までの期間を示しています。

◎この時期に克服が必要とされている“課題”は ・・・ 「親密性 vs 孤独」
◎この時期に必要とされる “重要な出会い” は ・・・ 「友情・パートナー・協力関係・異性」


この時期に重要となるのは、上記のように、 「友情関係・パートナーとの出会い・異性」 との出会いになります。

社会の一員として就職して働き、恋愛をし、結婚するまでの期間とも言えます。
この時期に、現実生活を通じて愛する大切な他者を見つけます。

自分を愛してくれる大事な他者を見つける事によって、特別な魅力と愛情を経ながら親密な関係・相互的なコミュニケーションを形成する時期でもあります。

この段階は、前段階である 「青年期・思春期」 で育まれてきた 「同一性」 ・・・ “自分が自分であっていいんだ!” と思える自己肯定できる心の育みを土壌にしながら “親密性” を育んでいきます。「前段階 がスムーズにが獲得できていればいるほど、自分自身にある程度の自信が持つことができて、他者との自分の関わる事柄に親密さを感じることができると言われています。

そして、親密性」 とは、時のごとく、他者と親密な関係を築いてゆく事。

もう少し分かりやすく言うと、 「自分は何かを失うんじゃないか?」と言う不安を持つ事なしに、“自分自信の同一性” と、 “他者の同一性” を融合し合うことのできる能力の育みを示しています。

様々な “出会い” を通じて、相手の価値観や自分とは異なる異質な部分を認め、尊重しながらパートナーを選び、関係を築いていく ・・・ そして、就職・恋愛・結婚というこの頃に起こる人生のイべントに対応しながら人生がより充実感を育んでいくのです。

そして、この時期の危機は 「親密性」 vs 「孤独」 であることは掲げました。

「親密性」 は男女関係に限らずに 「他者の欲しているものや関心を示しているものを感じ取れるようになったり」 、 「不安なしに自分の持っているものを他人に分け与えることができる事」 などもそれに値します。

しかし、この段階において、自分の気持ちを素直に伝えられず、相手を受け入れる事ばかりに心を向けすぎてしまったり、それとは反対に、自分の気持ちを一方的に伝え続けるような 「関係性」 が強く育まれたしまったなら (相手への支配欲が強くなりすぎたり、相手に服従してしまう場合などの場合には) 、どちらか片方の “親密性” しか育まれない事になり、そうなってしまうと、その心を防衛しようとして 「孤独感」 を強めてしまう場合もあるようです。

また、前段階で獲得すべき 「自己の同一性(アイデンテティ)」 に失敗していたり、確立されていないような場合にも、「相手に依存しすぎてしまったり・・・」、「頼りすぎたり・・・」「あるいは支配したり ・・・」 と、対等な関係が築けずに孤立感を強めてしまう場合もあるのです。

そしてそれは、異性に対しての出会いを通じて現われやすく、人間関係を親密に育もうとしても、自己表現が上手く出来ないでいたり、自分の気持ちを素直に伝えられず、表面的で形式的な人間関係しか結べなくなることもあるのです。


「親密性」 の形は、同性や異性、友情、性的なもの ・・・ 等々、様々にありますが、やはり、異性との関係の中における 「親密性」 は重要な意味を持つと言うことになります。

この 「成人期」 の段階では、 「親密性 」 > 「孤独」 となることが望ましいとされていますが、もし、仮に、 「親密性 < 孤独」 であったとしても、これから様々な “出会い” を通じて表現したり、経験したりする事が出来たなら、それらの危機を克服することにより “愛” が育まれ心豊かにし、次の段階への以降をスムーズに後押してくれるのです。

そうして互いの “自己同一性(アイデンティティ)” を尊重し合いながら 「親密性」 を育てることができたなら、 「親密性」 が 「孤独」 を上回る事ができ 「孤独」 を癒してくれるのです。

壮年期の発達課題 ・・・ (世代性 vs 停滞性)

壮年期」とは、おおむね “結婚 ~ 子育て期” までの期間を示しています。

◎この時期に克服が必要とされている“課題”は ・・・ 「世代性 vs 停滞性」
◎この時期に必要とされる “重要な出会い” は ・・・ 「仕事・家庭・子供や後輩達」


この時期に重要となるのは、上記のように、 “仕事・家庭・子供や後輩達との出会い” になります。

「世代性」とは、 “次の世代” を育むという事に積極的に関与したり、関心を高めるというような意味があります。

・子供がいる家庭においては、自分の子供を育てると言う経験が当てはまります。
・職場などの場合では、後輩達の教育や伝承などが当てはまります。

「家庭」の中での子育てはもとより、「職場」などを通じて、 “自分自身がこれまでに経てきたもの・深めてきた事” を 「次の世代」 に託すといった意味が含まれていて、自分の経てきた事を身近な存在に伝承(指導したり・関心を占めす)することによって、親密な存在を自分たち自身でつくり出していきたいという心の育みの時期でもあります。
その過程の中では、自分を犠牲にしながら成長を援助してゆく場面も見られます。

そうしながら育まれてゆくのは 「世話する心」 。

そして、子育ての完了を経て、生活スタイルはいよいよ 「家庭志向」 から、 「自分志向」 へ変化し始める時期でもあります。


この時期に 「世代性」 を持つには、自分自身が確立されていなければならない為、“自分を磨いたり、能力を高める為の努力”や“深み” を持っていないと、それを「次の世代」に託せなくなり、場合によっては、社会的にも 「停滞」 してしまう傾向があるようです。
また、次の世代を育成することに関心を持てないでいたり、個人的にも満足感・充実感は得られにくく、それ以前に託そうとする意識も育まれにくくなるようです。

それらは「職業的な意識」「社会的な意識」「家庭的な意識」、もっとも「個人的な意識」もそうかもしれません。


そして、この時期には、 「中年の危機」 といわれるような問題が顕在化し始めていきます。
大きく2つの視点から考えてゆくと・・・、

1.『いろいろな事に限界を感じ始める時期』
・・・ 「体力の限界」「能力や可能性に対する限界」「若い頃描いていた理想像への限界」 ・・・等々、いろんな意味での限界を感じ始める時期となります。
その為に、自分の人生を問い直したり、アイデンティティー(自己の同一化)を再確立しようとしたりする傾向も出始め、その過程で悩み、鬱などの症状を発症する事もこの時期の特徴だと言えます。 また、

2.『自分の内なる異性との折り合いをつける時期』
・・・ 自分が思い描いていたように生きられなかった背景として、自分の心の中の異性としての感情と結びつきやすい反面があるようです。
自分が “置き去りにしてきた部分の生き方” に関心が行き始め、そういった意味では自分の内面的な心の感情と統合していかなければならない部分が出始めていくようです。


そのように 「壮年期」 には、今まで未解決だった 「課題」 が再現されやすくなっていく時期でもあり、そういったものと向き合うことで心が育まれ、次の段階への以降をスムーズに迎えられるようです。


※昨今、大人達による犯罪行為も多くのマスメディアで連日報道されていますが、実はこうした背景には、発達時期の遅延化がもたらす各段階での課題・・・危機を上手く乗り越えられなかった事による発達の歪みからもたらされているようにも思えます。
また、発達障害をもつ子供達が増えつつある今の社会を見ても、そうした大人社会ににって育まれるつつ状況が、少なからず子どもが自分の発達課題を達成に影響を及ぼしているのではないかとも思えます。

成人期看護学実習攻略

前述の成人期の特徴を踏まえ、解りやすくまとめて攻略方法を記述します。


①対象を認める
成人期における対象は、社会的・経済的・家庭的な役割とたくさんの役割を担っています。
例えば会社では管理職、家庭では一家の大黒柱、父親として、夫として、たくさんの役割を持っています。
これが全て他者から承認されている人間というのは、ごく稀な存在です。

仕事を優先すれば家庭が疎かになり、家庭を優先すれば仕事が疎かになる。
全ての役割を充実させることは非常に難しいのです。

そんな多重な役割を背負う対象との信頼関係を築くには、まず対象を承認することが重要になります。

学生の方なら「勉強も部活もアルバイトも、きちんと出来てスゴいね」と言われたら嬉しいでしょう?
成人期の方も同じなのです。


②依存出来る関係がベスト
老年期では依存させない事が重要と記述しました。しかし、成人期では依存させる(くらい)が丁度いいのです。
あくまでも依存させるのではなく、依存できる環境を整えてあげるのが大切です。

成人期の方は社会的・経済的・家庭的役割と多重な役割を担っている事、社会的に自立している方が多いので心理的に、なんでも自分でしなければならないと思ってしまいます。
同様に疾病に罹患し、入院加療が必要であったも「仕事に早く復帰しなければならない」「家に早く戻らねばならない」といった心理的葛藤が生じるため、なんとかして早く退院しようと考えます。
しかし、身体的にも機能的にも衰えが生じる時期でもあるため、事を急いでは疾病の悪化やセルフケア不足に陥ります。
そうならないためには看護者を信頼し、軽く依存できる気持ちが生まれる方が良いのです。

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