商業地区の活性化に必須なのは、今いる人達だけでやらないこと。
衰退局面ではどんどん廃業して店が減る。残った店も決して今の時代に即した商売上手な人たちばかりではない。これが商業地区の競争力をどんどん低下させていく。
これを解決するためには、新たな人たちが商売を始めようと入ってくる入り口を作り、新陳代謝を生み出していくことが生き残りの重要な要素になっている。いまいる人が全てではないのです。
以前、上のようなエントリーを書きましたが、この実例の一つである大阪府枚方市「枚方宿くらわんか五六市」(※ 東海道56番目の宿場町にちなんで五六市なのです)をやっているSARTOの加藤さんたちとも連携してAIA関西の取り組みを開始するに辺り、関西にいってきた。そこで、実物をみて、話をきいて気づいた点を以下に簡単にまとめる。
<五六市の4つの狙い>
一般的なマーケットとは全く異なる4点が指摘できる。
(1)所謂フリーマーケットとの差別化 単に誰でも出てもらうマーケットとは全く異なる。狙いはあくまで新たな店舗を生み出す店の候補者を発掘する、もしくは育成するものとして位置づける。手作り、こだわり、フェアトレード、エコロジーといったポイントを重要視する。
(2)補助金依存型イベントとの差別化
儲かるイベントにして継続性を確保する。そのため出店料の徴収とボランティアスタッフ、行政の協力を引き出していく。予算依存であると予算がなくなればそれで終了。稼げば利益ができて、利益ができれば事業を新たに展開する人たちに融資をすることもできる積立基金を生み出せる。
(3)メインターゲットは枚方市民
年1回ではなく、毎月1回地元の人にきてもらえるイベントで定着化を図る。
初期段階の広告費を削減するためにも、毎月第二日曜日というカタチで定期開催にする。一度認知してもらえればあとは自動的に毎月お客様が来てくれる。
さらに、五六市に出店している人たちは地元のお客様を常連客に変えていくことができ、実店舗を出した際にも売上の基盤を五六市を通じて形成していくことができる。
(4)集客イベントではなく、地域商業に新陳代謝をビルトイン
多様な商売のあり方を市を通じて生み出し、商売人を発掘し、儲かるイベントにすることで基金づくりで投資していく流れを生み出す。実際に、この5年間の間に25店舗の店が創業してきている。
<五六市から分かる市開催の5つのポイント>
(1)まちなかの民有地を活用したミニマムマーケットからの出発(低コスト体制)
いきなり広大なスペースを借りて開催するのではなく、土日に空いている店先の空間や駐車場スペースを無料で借りて開催するところからスタートした。だから初期投資がほぼゼロ。だからこそ最小規模でも運営が回る仕組みになった。
結果として、今後店を出すことを考えている人たちが、まず試しに出してみるという選択肢が低コストで地域に生まれたのである。
(2)1回目は誰でも、2回目からは要審査(取捨選択)
五六市は最初は誰でも出せるが、その時に商売のレベルを審査し、二回目以降に出せるかどうかが変わる。工夫をし、自分なりの方法でお客さんを惹きつけていける力のある人を発掘していくためにも、市に出ている人のレベルを常に上げていくという向上心がある。補助金が入ると「万人が出れる」という仕組みになりがちだが、自主事業であるからこそできる重要なポイント。
どうしようもない人ばかりが集まる市に、いい人は出てこようとは思いませんからね。
(3)エリアマネジャー制度(育成)
優れた店には周辺の店の指導にも入ってもらう制度を五六市では備えている。全体の水準を毎月どんどん改善していく上で、全て専門家コンサルを入れていくとかではなく、自主的な品質改善の仕組みを埋め込んでいる。
(4)リノベーション店舗への出店(出口戦略)
五六市では、市で実績を上げていった店と共に、周辺の物件に出店していく試みに発展している。その代表例が「鍵屋別館」。元宿泊施設であった遊休不動産を活用して、リノベーションを行い、五六市から出店希望を示した、もしくは五六市の繁盛っぷりに刺激された新規出店希望者たちが出店している。市だけで終わらず、新たな地域を支える店舗に発展させている。
(5)エリアバリューの創造による、投資拡大(波及効果)
鍵屋別館のような直接的に関与したリノベーションだけでなく、周辺の遊休不動産に続々と新規店舗が現在集まってきている。五六市を繰り返し行い、質の良い店がどんどん出てくることによってエリアの持つイメージが改善することによってエリアバリューが再認識されたり、向上している証拠でもある。投資が促されているのだ。
繰り返しになるが、今後の商業地区活性化に必要なのは「新陳代謝」である。
そしてこれは不動産保有者たちが考える「高い家賃を支払う、都合のよい借主」ではなく、あくまで新たなまちにとって魅力を生み出す店を育て、家賃を支払える金額にコントロールしていくリノベーションなどの効率的な投資方法の開発にある。
実は市をテコに地域内での新たな店が育っていく仕組みは、イギリスでも、アメリカでも、南アフリカにでもどこにでも実はあるのである。市から始まったチェーン店も沢山ある。つまり、市から始まる商業というのは原点なのである。日本でも楽市楽座によって競争が生み出されたことで、商売上手な商売人が続々と発展していったことで、経済活性化が図られた。
五六市の試みは今、関西圏に拡大していっており、AIAとしては全国へ拡大させたいと思っている。