「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 こうした「慢性頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 片頭痛は血管の拡張との関連性があります。
 血管を拡張させる”入浴”のときの注意点として現在では以下のように勧められます。
少し短めにしておいた方がよいです。というのも入浴時間が長ければ長いほど血管も拡張してしまうからです。あっさりした入浴、をモットーにしてあまり長く入らないように注意してください。また、お湯が熱いと時間の割に体が温まり血管が拡張します。
40℃以下のぬるめのお湯に浸かりましょう。
 そして、片頭痛発作中は、入浴はよくないとされています。
 このように、片頭痛の方々には、指導されます。


 ところが、最近、興味ある頭痛患者さんの相談をお受け致しました。

 それは、お風呂に入って洗い場でシャワーをかけると激しい頭痛があるというのです。
毎日同じことが起きるので怖くてお風呂にも入れないと大変お困りで相談に来院されました。

 これは良性入浴関連頭痛(Benign hot bath-related headache)といわれるものです。この方の特徴はさほど熱い湯をかけたわけでなく、湯船に入らなくても風呂場で顔を洗っただけでも頭痛が生じたことです。入浴せずに体を拭くだけでは生じず、朝、洗面台で洗顔しても起きません。温熱刺激がトリガーになっているわけではないことの証拠です。
「では」と思い立って、診察室で洗い場で体を洗う動作をしていただきました。もちろん着衣のまま。残念ながら頭痛は誘発されませんでした。
文献によると皮膚の刺激がトリガーになっているのではないかとも書いてありますが推測の域を出ません。水着や下着をつけたまま入浴して誘発されるかどうかを確認すれば良いかもしれません。
文献では、入浴を避けることが一番と書いてあります。医者から言われなくても雷が落ちるほどの頭痛(先程のクモ膜下出血のような”雷鳴頭痛”です)が起きますので、患者さんは経験的にそのようにされます。1ヶ月程度持続して治っていくようです。


可逆性脳血管攣縮症候群 reversible cerebral vasoconstriction syndrome (RCVS)


 突然の激しい頭痛で、嘔気嘔吐を伴います。第一に考えなければならないのは、くも膜下出血です。このほかに、脳出血、動脈解離(特に椎骨動脈解離)、静脈洞血栓症、下垂体卒中、未破裂脳動脈瘤、低髄液圧症候群などを除外しなければなりません。
 これらの二次性頭痛が除外されたら、一次性雷鳴頭痛ということになります。
 鑑別しなければならない頭痛に、RCVSによる頭痛が加わりました。
 これまで、RCVSは、6.7.3 中枢神経系の良性アンギオパチーによる頭痛に含まれていましたが、2013年6月の「国際頭痛分類第3版β版」の中に、6.7.3 Headache attributed to reversible cerebral vasoconstriction syndrome (RCVS)として新しく分類され、診断基準も明記されました。

 その診断基準を紹介します。


Headache attributed to reversible cerebral vasoconstriction syndrome (RCVS)


Diagnostic criteria:


A.Any new headache fulfilling criterion C
B.Reversible cerebral vasoconstriction syndrome (RCVS) has been diagnosed
C.Evidence of causation demonstrated by at least one of the following:
1.headache, with or without focal deficits and/or seizures, has led to angiography (with‘strings and beads’appearance) and diagnosis of RCVS
2.headache has either or both of the following characteristics:
a.recurrent during _1 month, and with thunderclap onset
b.triggered by sexual activity, exertion, Valsalva manoeuvres, emotion, bathing and/or showering
3.no new significant headache occurs >1 month after onset
D.Not better accounted for by another ICHD-3 diagnosis, and aneurysmal subarachnoid haemorrhage has been excluded by appropriate investigations.

                    
 RCVSによる頭痛の特徴は、一言でいうと繰り返す雷鳴頭痛(クモ膜下出血のような頭痛)です。誘因として、性交、運動、バルバサルバ負荷、感情、入浴、シャワーなどがある場合があります。
 RCVSは、未だ不明な点が多く、今後解明されていくものと考えられます。


RCVSによる「入浴関連頭痛」


 先程述べましたように、稀に入浴やシャワーなどで、突然の激しい頭痛を訴えて来院される患者がいらっしゃいます。くも膜下出血などの脳卒中や椎骨動脈解離などの二次性頭痛を否定することが重要です。これらが除外されたら・・・・。
入浴関連頭痛という頭痛ということになります。入浴やシャワーなどで突然に激しい頭痛をきたすもので、2000年に根来清先生が発表されました。その後、いくつかの症例報告が発表され、2008年にWangらによって21例が報告されました。
 ここではWang らの論文を紹介します。 この論文での入浴関連頭痛の診断基準は、


1)「国際頭痛分類第2版」の一次性雷鳴頭痛の診断基準を満たす、但し、発作の持続時間は除く
2)入浴時に1)で示した頭痛発作が2回以上ある、というものです。


症例数は21例です。Wangらの頭痛専門のセンターで同時期の治療した症例数は5338例で、21例という症例数は0.4%に相当します。全て女性で平均年齢は54±8歳です。13例が閉経期で、1例が分娩後3ヵ月です。
 入浴が最初の頭痛発作の引きがねになったのは9例(43%)です。18例(86%)では、体に暖かいお湯をかけて瞬時に頭痛が出現しています。この頭痛が起きる期間は、6-34日間(平均14日)で、その間に平均すると5.1±3.6回の頭痛発作が出現しています。
尚、15例(71%)では、入浴時以外にも頭痛を経験しています。つまり、入浴関連頭痛は、入浴により惹起される頭痛ですが、入浴以外でも頭痛が惹起されることがあります。



入浴関連頭痛について


入浴の方法  19名がシャワー、2名がシャワーとバスタブ
タイミング  シャワー開始直後に18名(86%)、中頃に2名(10%)、終わり頃に1名(5%)
お湯は  warm water(11名 52%)、hot water(5名)、cold water(2名)、温度関係なし3名
お湯をかけた場所  胸(11名 52%)、髪(6名 29%)、 顔(2名 10%)
頭痛の性状  爆発するような頭痛18名(86%)、拍動性頭痛14名(67%)
頭痛の部位  両側性13名(62%) 両側後頭部8名(38%)
頭痛の持続時間  平均2時間(30分から30時間)
随伴症状  嘔気6名(29%)、嘔吐5名(24%)、光過敏3名(14%)、音過敏3名(14%)
入浴以外の誘因  運動(9名 43%)、トイレ(9名 43%)、咳(5名 24%)、怒り(3名 14%)、性行為(2名、10%)、歌う(1名 5%)


 MRA(MRIによる血管撮影)は全例に施行され(第2病日から第76病日にかけて)、13例(62%)に多発性分節性脳血管収縮(multiple segmental arterial constrictions)を認めています。最近、雷鳴頭痛の原因として注目されている、いわゆるRCVS(reversible cerebral vasoconstriction syndrome)です。中大脳動脈領域12例(57%)、後大脳動脈9例(43%)、前大脳動脈4例(19%)です。頭痛出現後に徐々に改善していきます。血管収縮が出現した群と、出現しなかった群とでは、MRI施行時期に有意な差はなかったそうです。MRIでは2例でreversible posterior encephalopathyを認めています。
治療は、Ca拮抗剤という降圧剤のニモジピン(日本では発売されていません)が19例に使用されています。その内の16例で発作を抑えられています。平均30か月の経過観察で再発は認められていません。
入浴関連頭痛は、閉経期の中年女性に多くみられることから、女性ホルモンの関与が推測されています。


参考文献


1 Negoro K Benign hot-bath related headache.Headache 2000;40:173-175
2 Wang SJ Bath-related Thunderclap Headache.Cephalalgia 2008;23:854-859


 こうしたことから、入浴関連頭痛は、二次性頭痛と考え、片頭痛とは別の範疇にあるものと考えるべきなのかも知れません



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