本オーガニック検査員協会(JOIA)はオーガニック検査員の技術向上、検査員の養成、オーガニック関連の皆様へ
のタイムリーなセミナーの提供を行っている団体です。セミナーは検査員向け、オーガニック上級者向けのものが
多いのでオーガニック初心者の方々には少し高度な内容かもしれません。
今回は長野の有機農業生産者さんで有機JAS規格検査員の志野さんが講師とし招かれ、有機JAS規格認定野菜の検
査方法や種に関する内容の講座でした。
日本では在来種、固定種、有機の種が不足しており、国産有機の種は家庭菜園用が主です。それにはいろいろと事
情がありまして、1990年代では国産の種は大手商社で扱い流通していました。しかし、人件費等がコスト高の
日本では採算が合わず海外へ売却したことから国産の種の流通が少なくなっていきました。
加えて、1998年に新種苗法が施行、2003年に改定され、新品種の登録によって植物の新品種を育成する権
利である育成著作権を占有出来ることが定められました。種苗法は私の解釈が正しければ、海外で特に中国や韓国
等で日本国内で開発された新品種が無断で栽培され逆輸入された事件を発端に、新品種を保護するための目的で制
定され育成者権の侵害対策強化のために制定されました。
この種苗法では自家増殖(自家採取)が認められている品種は多いのですが、禁止されている品種、育成者権者との
契約により自家採種に許諾が必要な場合もありかなり複雑です。登録品種の生産(自家採取)・販売に関しては品種
登録を受けた人である育成者権者の承諾を受けなければなりません。
らかですが、その他の種はそれがどこからきた種か曖昧です。このことを踏まえて、在来種を守るためシードバン
ク設立や種の交換会が各地で開かれています。
種自体の話はこれくらいにしまして、有機JAS法では基本的に種も有機でなければいけません。しかし、ナチュラ
ルな種が無い場合は有機以外の種いわゆるF1種でも良いと記載があり、その他のF1種を使用するケースが大半な
のが現状です。
それでは国外産有機の種を使用すればいいのではとお考えになる方も多いと思いますが、コストがかかるためF1種 を使用せざるを得ないのが実情です。日本で流通する外国産も含めた種の95%が非ナチュラルの種で、参考まで
にフランスのオーガニック認証農産物の70-80%が在来種・固定種・有機の種です。
現在長野の有機農家さんの間でなるべく薬剤使用の種を使用しない動きがあるそうです。しかし、危険な薬剤を使 用しない種でもナチュラルな種の入手が難しくF1種です。自家採取している農家さんもいらっしゃるそうですが 前年と同じ品質が保証されているわけでもなく、自家採取には熟練した経験と技術が要求されるそうです。
ここで言う薬剤使用の種はF1種に殺菌剤や着色剤を加えた水溶性ポリマー溶液で種子をコーティングしたフィルム
コート種子、発芽障害改善のために種の皮を薬剤で除去したネーキッド種子、種子の代謝活動を人工的に進めた発 芽のスピードを早めたブライミング種子などのことを指します。
なぜこのような種をなるべく使用しない方がいいのでしょうか。薬剤を使用した種に関しては明らかですが、F1種
の中でも例えば放射線をあててミニ野菜にしたり、雄性不稔と呼ばれる雄しべに欠陥があり種が採れない種がある ことも理由のひとつと言えます。例えば、ミニカボチャはこの放射線で品種改良された種ですが、これを食べ続け
ると3代目で癌などの疾患の影響がでる可能性があるということは一部の農家さんの間では知られた話しだそうで
す。
ナチュラルな種で栽培した農産物のニーズが消費者から求められれば、有機農家でも有機の種で作るようになりま
す。消費者の意識が変わらないとニーズに合わせて作る生産者も変わらないということです。
自然栽培推進派の方で有機JASは良くないとおっしゃる方も多いのですが、自然栽培は確かに理想です。しかし、
自然栽培でも近くの圃場から農薬や殺虫剤が自然栽培の圃場に飛来している可能性もあり、管理はされておらず完
全な自然栽培ではない可能性もあります。また、栽培方法は自然栽培だとしても残留農薬のある圃場(畑や田んぼ)
で栽培しているケースもあります。
有機農法も自然栽培もどちらも良い点悪い点はあり、有機JASを悪者扱いはできません。有機JASは種が有機では
ない場合が多い、一部農薬使用が認められている、家畜糞を有機処理した非有機資材(ここでは肥料のこと)が一部
認められているなど、海外のオーガニック認証と比較すると完全なオーガニックではありません。これは日本の国
土面積や気候や実情が絡み合っての結果です。
理想である自然農法の農産物の流通はかなり低く、少しでも安心できる食品となると有機食品を選択することが現
状です。完全なオーガニック農産物が入手困難な日本では、有機JASを悪者扱いするのではなく、有機農法の農産
物が少しでも国際基準に達するように消費者が現実を知り、意識を変えていくことが必要だと感じました。
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