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2003年03月25日
久しぶりに戦争以外の話題でもしてみます。
たまには面白い話もないとね!

フランス人の清潔感に関する話。

2/16の日記で、僕は頬と頬をくっつけあう
フランスのビズに関する習慣を紹介し
何故そのような肌と肌をくっつけあう挨拶が存在できるのか
分析した。
僕は、欧米人は清潔感・身だしなみに気を使う人が
多いため、人と人との間の肉体的接触に違和感を抱かないで
済むためだ、と考察した。
一般的に日本人は、欧米人は体臭が強いと考える傾向が
あるがそれはむしろ逆であろう、と僕は考えていた。

しかし!
最近、この考察に疑問を持つようになっている。
欧米人とひとくくりにして、アメリカ人の清潔感と
ヨーロッパ人の清潔感を論じるのはおそらく間違っている。

先ず、アメリカ人は日本人以上に清潔感に気を使う人が
多い、というのはハワイ市場さんも日記で書かれていたが
それは僕も正しいと思う。
僕もフランスでアメリカ人の友達がほんとにたくさんできたが、
ほぼ全員が清潔感という点において非常に気を使う人々である。
特に臭い。
彼らと一緒にいる際に、変な臭いを感じることは先ずない。

フランス人に関して。
清潔感に気を使う人は、おそらくマジョリティだと思う。
ただ、体臭を撒き散らしている人も少なくない。
最近、続けざまにスーパー・図書館で鼻がひん曲がるほどの
体臭を持つ人に出くわした。
あまりの凄さに言葉もなかった。

とにかくびっくりしたので、同じ日本人の留学生仲間に
「フランス人にも体臭凄い人いるんだよ」って
話したところ、全然驚きの反応を示さず、
「フランス人って一般的に体臭とか口臭とかに
気を使わない民族だと思うよ!」
って返された。

びっくりした。これまで特にフランス人の体臭に
問題を感じたことはなかった僕の鼻は鈍いのか?
というか性格上あんまりそういうのは気にならない
というのはあると思うけど。
僕の鼻は常に鼻炎の傾向があり、
臭いに関しては非常に鈍感なのもあるが。

さて次の日。意識的に鼻に神経を集中させて、
フランス人の体臭・口臭を感じてみた。
確かに僕が今まで普通に接していた人の中に、
敏感な人には不快感を感じるかな、という程度の
臭いを感じることができた。
僕には全然気にならないレベルだったけれど。
(いやな体臭が全然しなかったしなかったフランス人も
多かったとここで付け加えておこう)

次に、臭いに一番敏感だと思われるアメリカ人の
友人達に、「フランス人の臭いに関してどう思う?」
と聞いてみたところ、
彼らは「フランス人は少なくともアメリカ人に
比べ、体臭とか口臭とかに全く気を使わない人々だ!」
と断言していた。

なるほどぉ・・・。そうなのかぁ。
なんとなく少なくとも臭いのspecialistとして、
彼らの言ってることは正しい気がする。
やっぱり僕の鼻はいかれているのか。
でもそんなに気にならないけどなぁ。

ところで、歴史的にフランス人というものは
臭い・清潔感に関してどういう感覚を有する
人々だったのだろうか。
興味がわいてきて、色々調べてみた。

すると面白いことがわかった。

やっぱり、中世以降近代にかけてフランス人は
少なくとも現代日本人が考える意味での清潔観と
いうものを持ち合わせていなかった。

例えば19世紀半ばまでフランスでは入浴習慣が
全く一般的ではなかった。
フランス革命当時には半数のフランス人が
生涯一度も入浴したことがなかったという説もある。

利用可能な水源が限られており、
入浴に多量の水を使用する余裕がなかったこと
また、垢がペストなどの伝染病から
身を守るための被膜として作用すると信じられてきた
ことなどがその理由だとされる。

勿論貴族の間でも清潔感というものが
全く存在しなかった。
ルイ13世など初めて入浴したのが7歳
顔を洗ったのが9歳だという
信じられないような逸話も残されている。

歴代王の中には、近寄ると「馬のような臭い」が
するという王もいたそうだ!
馬の臭いって凄いですよね。
僕ちょっと爆笑してしまった。
というか馬の臭いを嗅いだことなんてないので
あまり想像できないけれど。

そのような背景の下、例えば体臭は自然なもの
として受け入れられるようになった。
というより受け入れられざるをえなくなったんだろう。

体臭は性的魅力の一つとしてまで捉えられるようになった。
興味深い逸話として、ナポレオン・ボナパルトが
エジプト遠征から帰る前に、妻ジョゼフィーヌに
「身体を洗うな。まもなく帰る」と書き送った話もあるらしい! 

勿論体臭に対する抵抗感が薄れていったとはいえ
何も処理しない状態での人間の生物学的臭いは
いくら当時のフランス人といえども
耐えるに忍びなかったに違いない。
結果的にフランスでは香水の製法が非常に発達することとなった。
現在でもフランス製の香水は世界中で有名である。

ここで重要なのは、香水は体臭を消すものとして
使用されるものではないということ。
ベースはあくまで体臭であり、香水は「補助的な」
役割のみを果たすということである。
この傾向は、一部の現代のフランス人にも見いだせそうだ。
例えば現代フランスにおいて、シャワーを毎日浴びる人は
3割程度というデータがある。
それでいて香水がスーパーの棚にところ狭しと並べられている
様子を重ね合わせてると、自ずと結論は導き出されそうだ。

話を元に戻そう。ビズの習慣と体臭との間の関係に関して。
要するに、逆説的ではあるが、フランスでは
歴史的に体臭に代表される人間の清潔感というものに寛容
悪く言えば鈍感であったからこそ
ビズという習慣が受け入れられてきたというべきなのだ。

確かに考えてみればそうかもしれない。
体臭に気を使う、清潔感を大事に考える人々が
わざわざ他人の肌にすり寄るような習慣
受け入れられるはずがない。
人間の体臭というものは生きている以上
完璧に消すのは不可能であろうし
人によっては臭いというものは気になると
微かな臭いでも気になるものである、らしい。

僕は臭いに鈍感な人間なんで
そのあたりよくわからないけれど。

でも面白いですよねー。同じ欧米人でもアメリカと
フランスでこうまで臭いに関する感覚が違うなんて。
どうして、大西洋の西側と東側でこうまで違いが
でてきたんだろう。誰か分析してくれないかなぁ。

各国の臭い・清潔感に関する感覚の歴史を比較して
研究してみたくなったりした。

といいつつ今は自分の頭の上の蝿を追い払わないと。
修論、危機的状況・・・。
まあ、なんとかなるでしょう。






最終更新日  2003年04月01日 08時37分15秒