患者さんが亡くなった後、エンゼルケア(死後のケア)の際に注意すべきポイントはどんなことですか?

ご遺体の状態の変化を踏まえ、適切な手順で手早く行うことが大切よ。

リコ:エンゼルケアの方法については、なかなか実際に学ぶ機会がありません。
もちろん、患者さんが亡くならないという意味では幸いなことですが、いざというときのために知っておきたいです。

ヨシミ:エンゼルケアは、死後硬直や腐敗が始まる前にできるだけ短時間で行わなければならないし、ご遺体の変化に合わせるためケアの順序が重要な部分もあるわ。
きちんと手順を把握するとともに、それぞれのポイントを学んでおきましょう。

エンゼルケアはご家族の意向を踏まえて

エンゼルケアは、ご遺体の変化を最小限にとどめたり、感染を予防したりといった処置のことよね。
でもそれだけではなく、エンゼルメイクなどの外観を整える行為も含み、ご家族の悲嘆に配慮しながら行うべきケアよ。

ご遺体の状態は刻々と変化していくため、死後1~3時間のうちにはケアを開始できるようにし、複数の看護師でできるだけ短時間に行うことが望ましいとされているわ。
一方で、患者さんとご家族が一緒に過ごせる時間を作ったり、エンゼルケアについての意向(宗教上配慮すべきことなど)をご家族に伺ったりすることは重要で、おろそかにしてはならない部分よ。
また、「よろしければ、一緒にお体を拭いて差し上げませんか?」といった言葉をかけて、どのくらいケアに参加したいか意向を確認してね。
一般的には、ご遺体への処置を一緒に行うことがご家族への悲嘆ケアにつながると言われているけれど、動揺が激しい場合などは無理に勧めないよう気をつけてね。

最初に行うのは、死後に異臭が生じやすい口腔内や鼻孔内、眼球のケアよ。
必ず、「〇〇さん、今からお体をきれいにさせていただきますね」「お鼻の中をきれいにさせてください」といった声かけをしてから始めてね。
死後1時間頃から顎硬直が始まって開口させづらくなるから、口腔ケアは硬直が始まる前に行いましょう。
具体的には、指にガーゼを巻きつけて(あるいは綿棒を湿らせて)清拭してから歯ブラシで磨き、異臭を防止するために消毒用アルコールなどで口腔内を拭き取るのよ。
また、義歯を使っていた患者さんでは、それを装着してから口を閉じてね。
眼球は、眼脂を綿棒で取り除くか、水できれいに洗い流しましょう。
鼻孔内も、綿棒で清拭していくのよ。
なお、体液の漏出を防ぐ根拠がないとされていることから、現在では口腔や鼻腔への慣習的な綿詰めは行われないケースも多くなっているようね。

消毒・冷却でご遺体の変化を最小限に

点滴などのチューブ類を取り外すときは、抜去部の止血を確認するようにしましょう。
死後は血液凝固能が失われるため、出血傾向になっているからね。
また、ペースメーカーが留置されている場合は、必ず摘出しておく必要があるわよ。
そのままにすると火葬の際に爆発し、ご遺体が損傷しかねないわ。
創部は、状態に応じて消毒・縫合(あるいはテープで固定)しましょう。
褥瘡があれば、臭気や滲出液が漏れ出すのを防ぐため、消毒後にラップで密閉してね。
全身清拭では、消毒液は使わないのが一般的だけれど、石鹸やアロマのエッセンシャルオイルを使うのはアリね。

お体がきれいになったら、陰部には紙パッドかおむつを当てておきましょう。
男性であれば髭剃りを行うけれど、皮膚を損傷(表皮を剥離)させると3時間ほどしてから革様化が起こって皮膚が硬く茶色になってしまうから注意してね。
それから、汚れの度合いに応じてドライシャンプーなどを行い、髪をとかしましょう。

衣類の着付けを行う際は、ご家族の意向をきちんと確認してね。
一般的には

  • 着物を左前にする
  • ひもを縦結びにする
  • 白装束を着せる

といった儀礼的な処置をすることが多いわ。
このとき、手は両脇に置くか腹部で軽く合わせて、自然に整えておきましょう。

エンゼルメイクは普通のメイクと基本的な手順は変わらず、クレンジングで汚れを落とし、化粧水や乳液で肌を整えてから始めるのよ。
死後3時間ほどで蒼白化が顕著になるから、血色がよく見える赤みの強いファンデーションを使うといいわね。
パウダーで仕上げてから、耳たぶ、まぶた、頬、顎などにチークを入れ、唇を保湿してから口紅をつけるのよ。

最後に、きちんとご家族に必要性を説明したうえで、死後4時間を過ぎないうちにご遺体を冷却しましょう(保冷剤などを使って下腹部・上腹部・胸部を冷やす)。
生前に敗血症だったなどハイリスクのご遺体であれば、さらに頸部や鼠径部、腋窩も冷やして細菌の発生を抑える必要があるわ。

短時間で手早く行う必要がある一方で、ご家族はもちろん、ご遺体にも声かけしながら、その人らしさを尊重したケアを提供すべきなんですね。

血液などの付着した物品がご家族の目に触れないようにするといった細やかな心遣いも大切よ。
ご家族ときちんとコミュニケーションをとり、その心に寄り添ったケアができるといいわね。

【監修】安田 洋 先生

目黒通りハートクリニック院長
医学博士/総合内科専門医/循環器専門医
東京内科医会理事

平成25年、目黒区鷹番に目黒通りハートクリニックを開院。
生活習慣病・心臓病のスペシャリストであるが、AGA/ED治療やピル外来・プラセンタ注射などあらゆる悩みに対応できるクリニック院長として活躍中。被曝が全くないエコー超音波検査による診断・治療がクリニックの特長。