炭水化物抜きダイエットと心臓病・動脈硬化

炭水化物抜きダイエットにはリスク・副作用がある可能性があります。

このリスク・副作用は、炭水化物(特に食物繊維)の不足そのものを原因とするほか、炭水化物の不足分のカロリーを肉類(飽和脂肪酸とたんぱく質)によって補う場合に生じる可能性があります。

ここでは、低炭水化物ダイエットのうち、炭水化物の不足と肉類の摂取過剰に関わる心臓病、動脈硬化のリスクについて、紹介しています。


動脈硬化、心血管系疾患

低炭水化物、高タンパク質は動脈硬化や心臓病に対するリスクが上昇する可能性があります。

この低炭水化物、高タンパク質と心血管系疾患に関して、現在分かっていることは以下の通りです。

低炭水化物、高タンパク質と心血管系疾患
■デメリット
  1. 食物繊維(炭水化物に含まれる)が不足すると、心血管系疾患に繋がるリスクがある
  2. 肉類の脂質(飽和脂肪酸)は心血管系疾患に繋がるリスクがある
  3. 赤肉に含まれる成分が心血管系疾患に繋がるリスクがある
■メリット
  1. 適度な低炭水化物は、心血管系リスクを減少させる可能性がある
  2. 低炭水化物の不足分を野菜や魚で補う場合、心血管系リスクを減らす可能性がある


そのため、動脈硬化、心血管系疾患に関しては、「低炭水化物ダイエットそのものが悪い」という訳ではなく、
  • 炭水化物の量をどの程度(量および期間)減らすのか
  • 炭水化物の不足を何で補うのか
により、リスクとなったり、メリットになる可能性があります。

リスクの可能性①:食物繊維の不足

厚生労働省は炭水化物の食事摂取基準を50~65%と定めており、「炭水化物に含まれる食物繊維の摂取不足で影響のある生活習慣病は多義に及ぶ」と述べています。

その中で、「食物繊維の摂取量と心筋梗塞のリスク(発症率又は死亡率)に関して、ほぼ直線的に負の関連が示されている研究(※1)もある。」と発表しています。


また、食物繊維の目標摂取量を20g/日(女性は18g/日)としているものの、平成22年、23年に行われた国民健康・栄養調査では、食物繊維摂取量の中央値は男性12.6g(30歳~49歳)、女性11.6g(30歳~49歳)と大幅に不足しています。

そのため、低炭水化物ダイエットにより、食物繊維が不足すると、心血管疾患のリスクが上昇する可能性があります。

参考:
※1:2013年イギリス Threapleton DEなど「食物繊維の摂取量と心血管系のリスク」

リスクの可能性②:脂質の取り過ぎ

農林水産省は低炭水化物ダイエットに対して、「低炭水化物の食事では脂質(の摂取量)が多くなる傾向がある」と警告しています。

そして、この脂質が多い食事は、冠状動脈性の心臓病にかかる可能性を増やし、アメリカ心臓協会(AHA)は、「お肉の脂質は冠状動脈性心臓病、高血圧を含む多数の心血管系の直接の原因である」と述べています。

お肉の種類と脂質
お肉(部位)脂質%
牛(バラ)50%
牛(サーロイン)47.5%
豚(バラ)34.6%
豚(ロース)19.2%
豚(もも)10.2%
鶏(手羽)14.6%
鶏(もも)14.0%
鶏(むね)11.6%
鶏(ささみ)0.8%

リスクの可能性③:お肉

ハーバード大学ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのマウスを使った研究では、「低炭水化物/高タンパク食では、動脈硬化の有意な増加があった」と述べており、血管の健康は従来考えられていた脂肪だけでなく、低炭水化物と高たんぱく質によって影響を受ける(リスクになる)可能性があると、述べています。

また、肉食と心血管系疾患に関わる研究(※1)により、これまで健康に良いとされ、多くの医師が摂取を推奨していた赤肉に含まれるカルニチンが、アテローム性動脈硬化を進行させる可能性があるとわかりました。

この研究では、腸内細菌の分布状態(人によって異なる)によって、赤肉がアテローム性動脈硬化を進行させる可能性が指摘されており、結果、全米で「カルニチン論争」が起こりました。

この論争には様々な機関(食肉業界、医療業界、各研究者、スポーツ業界など)が意見を発表しており、未だ明確な答えは出ていないものの、「食事によるコレステロールの摂取と同様の歴史を繰り返してはならない」とし、更なる研究が必要である、とされています。

参考:
※1:ネイチャーメディスン:「赤肉に含まれる栄養素であるL-カルニチンは腸内細菌叢の代謝によりアテローム性動脈硬化を促進する」

メリットの可能性①:適度な低炭水化物

一方、適度な(極端に行き過ぎでない)低炭水化物は、動脈硬化の予防・改善に効果がある可能性も示唆されています。

肥満の国際ジャーナルに寄せられた研究(※1)によると、肥満患者43名(途中脱落者を除く)において、68週間(前半の12週間は30%カロリー制限期間でその後約1年間研究が継続された)の低炭水化物、高たんぱく質の食事により、体重、トリグリセリド、LDL(悪玉)コレステロールの減少などが見られました。

低炭水化物/高たんぱく質による影響
たんぱく質低めグループ
たんぱく質:15%
炭水化物:55%
脂質:30%
たんぱく質高めグループ
たんぱく質:30%
炭水化物:40%
脂質:30%
体重-2.9%(±3.6)-4.1%(±5.8)
トリグリセリド+2.3%(±7.2)-10.6%(±8.6)
総コレステロール+9.1%(±3.9)+1.3%(±4.3)
LDL(悪玉)コレステロール+11.3%(±5.6)-0.20%(±6.1)
HDL(善玉)コレステロール+15.4%(±2.4)+16.1%(±4.0)


参考:
※1:アデレード大学、オーストラリア 肥満の国際ジャーナル
「肥満、高インスリン血症患者における高タンパク質/低炭水化物ダイエットの(中略)長期的影響」

メリットの可能性②:野菜や魚で補う

2013年ユネスコの無形文化遺産に登録されたダイエット方法(食事方法)が、地中海式ダイエットです。

この食事方法は、主にスペイン、南イタリア、ギリシャなど、地中海に面した人々の食生活が、健康面において様々な良い影響を与えることが医学的に証明された結果、世界で注目されているダイエット方法です。

この食事では、野菜、オリーブオイル、魚、貝、未精製の穀物(食物繊維が多い)を多く摂取することを特徴とします。

インドなど南アジアにおける冠動脈疾患の上昇を危惧した研究者らが、499名の患者に対して、αリノレン酸が豊富な地中海式ダイエットの心臓保護効果を試したところ、心血管疾患に関わる死因(心血管、心筋梗塞、心不全など)と心臓突然死が有意に減少していました。

この結果を受けて、研究者らは「全米コレステロール教育プログラムよりも地中海式ダイエットの方が優れているのでは」と発表しています。

詳しくは地中海式ダイエットの効果をご参照下さい。



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