[2007年9月3日:掲載]

牛の胎盤が使われていた美顔エステ付き化粧品

 2001年9月、農林水産省から「狂牛病に感染した疑いのある乳牛1頭を確認した」と発表された。厚生労働省からは11月21日には2頭目が、12月2日には3頭目の感染が発表されている。

 今回は狂牛病に関連した相談で、あっせん解決をみた事例を紹介する。


相談概要

 「100人限定、美顔エステを格安で」と書かれた広告を見て店に行き美顔サービスを受けた。化粧品を購入すれば無料で美顔エステが受けられると説明され、化粧水、パック、美容液等を購入した。化粧品はサロンで美顔エステを受けるときに使うものと自宅用である。

 その後、狂牛病に関する報道で化粧品に牛の胎盤(プラセンタ)が使われていることがあると知った。購入した化粧品の表示を確認したが成分が表示されていなかった。エステサロンに置いてあったカタログを見て、牛の胎盤が使われていることを知った。お客様相談室に電話したところ、安全性が確認された牛の胎盤を使っているといわれたがやはり不安だ。開封していない化粧品を解約したい。

(40代 女性 家事従事者)



処理概要

 当センターがお客様相談室に確認し、購入した化粧品のうち3つは牛の胎盤が使われていたことが分かった。牛の胎盤が入っているなら返品したいという相談者の希望を伝えたところ「現在、豚またはアメリカの牛を使っている。自主回収するような商品ではないと考えている」という回答であった。

 当センターは、これはエステティックサービスとそのサービスを受ける際に必要な化粧品(関連商品)の契約で特商法(特定商取引に関する法律)の特定継続的役務取引に当たると考えられるため、中途解約を主張した。

 これに対して事業者は、化粧品の契約でエステは無料で提供している。したがって「特定継続的役務取引」ではないと考える。未使用分の化粧品の返品・返金には応じられない。牛の胎盤が使われていない商品と交換するとの回答であった。

 一方、当センターで契約書等を経済産業省に送付し見解を求めたところ、「契約書は化粧品の販売になっているが実際、役務が提供されており無料であっても、役務の提供期間が1ヶ月以上、支払いが5万円を超えるので特定継続的役務に当たる」ということであった。
 同時に当センターが厚生労働省の資料(注1)を入手したところ、この化粧品の原材料は牛の胎盤であり、牛の原産国はドイツであることが判明した。また同資料によれば当該事業者の化粧品は自主回収等のリスクのクラス分類が「区分(ロ)」(注2)であるにもかかわらずまだ回収に着手されていないことも分かった。

 経済産業省の見解と厚生労働省の資料の内容を伝えたところ「経済産業省に以前、尋ねた際には(「特定継続的役務取引」に該当するかどうか)微妙である」といわれたことを理由に、中途解約には応じなかった。しかし、牛がアメリカ産であると回答したことは間違いだったと訂正した。

 当センターは、狂牛病が社会問題となっている現在、単なる間違いだったでは納得できない。なぜ、アメリカ産と答えたのか質したところ、「試験部門に問い合わせ『アメリカ産』と回答した。申し訳ない。今回については相談者の希望どおり未使用分については返金する」。これを相談者に伝え、相談は終了とした。



問題点

  • 格安の美顔エステサービスで消費者を勧誘し、実際には化粧品を販売していた。しかし、広告には化粧品の販売であるとは明確に書かれていない。
  • 化粧品の購入金額により美顔エステサービスを受けられる期間は異なるが、無料であれ実際に美顔サービスが提供されているので「特定継続的役務取引」であると考えられる。
  • 消費者に渡されたクレジット契約書には中途解約についての記載がない等、特商法で定める「特定継続的役務取引」の書面ではなかった。当センターは相談内容と経済産業省の見解を信販会社に伝え、特商法で定める書面の交付等について加盟店指導するように依頼した。
  • 薬事法が改正され、2001年4月1日以降、化粧品については全成分表示が義務付けられたが、問題となった商品は薬事法第2条でいう"化粧品"ではなく"医薬部外品"であるため、表示は指定成分だけでよい。相談者が表示を確認したとき、牛の胎盤入りかどうか分からなかったのは、このためである。「ウシ等由来物」が原料に使われているかどうかなどについて、消費者が情報を入手できるように、「ウシ等由来原料」(プラセンタエキス、コラーゲン等)を医薬部外品の表示指定成分に加える必要があろう。
  • 今回は、原材料の牛の胎盤が原因で危害が発生してはいない。しかし、事業者が不安を抱いている消費者や当センターに正しい情報を提供しなかった点が大いに問題であることを追及した。
  • 公的機関である当センターや消費生活センター等に対する回答はそれなりの重みがあるはずである。こうした信頼関係の中で苦情相談処理を行っているのであるから、こういったケースでは、事業者の回答を信じるしかない。正しい情報を早く提供することは、事業者の責務であろう。

 なお、その後、当該事業者の商品が「回収に着手」されたことが確認された。

(注1)「BSE(牛海綿状脳症)に関するリスクのクラス分類表に基づく報告及び回収の状況」=「ウシ等由来物を原料として製造される医薬品、医療用具等の品質及び安全性確保の強化について」(医薬発第1069号2001年10月2日)の通知に基づく回収状況が10月29日に公表された。

(注2)区分(ロ)に該当する品目とは(1)BSE発生国またはBSE発生リスクの高い国を原産国とし、かつ2000年12月の局長通知に基づき、原料としての使用が禁止されている部位を使用した品目であって、製造工程を経た最終製品の段階で当該部位が希釈される等により、低曝露の状態にあるもの。(2)BSE発生国またはBSE発生リスクの高い国を原産国とし、かつ、2000年12月の局長通知に基づく「使用禁止部位」以外の部位を使用したもの。




※当相談事例は2002年2月に掲載し、一部加筆・訂正を行い、再掲しました。



ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。