ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 匙の福淡雪 トド松は相棒に泡を食わせるので2016年11月26日 19:26いい材木(1126)の日に何かあげてみたかった…材木は、なんとなく自然に距離が近くて安心感があって、兄弟だったり相棒だったりするといいなと思います。イメージピッタリの表紙をお借りしました書いているうちにおそカラ&○○トドっぽくなってしまったのはなぜなのか…「カラ松にいさーん」「ん?どうしたトッティ?」「トッティいうな!」「ンー?キュートなニックネームだと思うが?」「はー、まあいいや。ね、ショッピング付き合ってよ」[chapter:匙の福淡雪 トド松は相棒に泡を食わせるので]「はー、ちょっと疲れちゃった」「たくさん試着したからなぁ」松野家から少し離れたショッピングモール。トド松お気に入りのショップ中心にあーでもないこーでもないと、試着に2番目の兄を引っ張り回し、半日ほど試着に続く試着を重ねて買ったものはカットソーとカーディガンのみだった。カラ松の手にある2つの紙袋も、わざわざ持ってやるほどの重さでは決してないが、自然と流れで荷物持ちにされている。「ね、ちょっとカフェ寄ってこうよ」肩にちょんと触れて、モール内のカフェに誘われれば、おごらされることは目に見えているが、カラ松も笑顔で席についた。「僕は冬限定のザッハトルテが食べたいんだけど、カラ松兄さんはチーズケーキでいいよね?」「ああ」「すいませーん、ザッハトルテとチーズケーキ、ドリンクセットでー。カフェラテとブレンドでお願いします」かわいい店員さんに、あざとくメニューを指さしながら注文を終えると、トド松はふぅ…とため息をついて、先日の友達とのおでかけの際に聞かされた愚痴の愚痴を話始める。「いつもはいい奴なんだけどねー、ニートの僕にも普通に楽しく接してくれるしさ…」「そうか、イイ子だなぁ」「うん、そうなの。ってあ、カフェラテ僕でーす」店員さんには、笑顔で。にっこり笑って、カフェラテを自分のところに。ブレンドコーヒーは兄の前に。「けど、たまーに溜まってることがあるとずっとマイナスな話を聞かされて…ちょっと疲れちゃうんだよねー」「ずっと聞いてやったのか、えらいなぁ」とカフェラテに口をつけようとしてトド松は気付いた。たっぷりの、白い泡がカップを覆っている。「あー…」これじゃ、カプチーノじゃん!僕、牛乳の泡苦手だからカフェラテ頼んだのに…でもたまに、区別してないお店あるし確認しなかった僕が悪いかな…トド松は一瞬口を尖らせたが、口には出さずにスティックシュガーを手に取ってそっと泡にまぶした。「もー、そうなの。僕えらかったよぉ。」「はは、今の言い方ちょっとおそ松と似てるな」話は止めずに、泡にまぶした砂糖がとろけて沈む前に、甘ったるい泡をスプーンで掬って、カラ松の口に持っていく。「もう!やめてよね!」さっき誰かさんの名前を出した時から、甘い笑顔を浮かべているカラ松も、会話をしながら口元に運ばれるままに、砂糖がシャリシャリとした甘ったるいミルクの泡をぱくりぱくりと食べ続けた。「ね、泡おいしい?」「ああ、ふわふわですごく甘いぞ!」自分で食べさせておいて我ながら無責任な質問だなとちょっとだけ思ったけれど、カラ松がとてもうれしそうな顔をしていたからつい口に出てしまった。兄弟たちの中でも、元相棒のカラ松にしかこうして愚痴なんか聞かせられないし、嫌いなものを押し付けたりもできない。今日は、いつものクソイタファッションでなく、出かける前にトド松がコーデしたスキニーのブラックジーンズに、青いVネックセーターといういで立ちのこの兄は、こうして妙なセリフも吐かずにそっと自分の愚痴を聞いてくれている。ようやく泡の少なくなったカップをスプーンで混ぜると、残りの泡がコーヒー色に染まって溶けた。「トド松は、その子に安心してもらってるんだな」「ふ…ぇ、何突然」「でないと、お前にそんな愚痴なんか聞かせないだろ?」動揺して、泡のなくなったカフェオレにようやく口をつければ、少しだけ溶けた砂糖のほんのりした甘さが残る。釣られてコーヒーを一口飲んだ目の前の兄の口元が、ちょっとだけ引き攣った。「ん…そうだね。そうかも」砂糖まぶし泡のすぐ後に、かっこつけてブラックコーヒーはさぞ苦かったに違いない。トド松は、目の前のザッハトルテの皿からひとかけら分をフォークで削りとる。「苦いんなら、砂糖とミルク入れなよ、イッタイねぇ」「むぐ…甘い」言いながら、ザッハトルテも兄の口にねじ込んだ。自分が、目の前の兄に安心しているように、もしかして自分も相手にとって安心できる相手なのだろうか。そうだと嬉しいと思った。「だからね、今度別の日に会って、デートしてもらおうかなって…思って…」「なるほど、その日のためのデートファッションを買いに来たというわけだな」兄のチーズケーキは、勝手に何口かもらいながら、トド松は話し続けた。「そ、まああんまりピンとくるものなかったけど…」「そうか?あのネイビーのカーディガンは、いつものイメージと少し違っててなかなかイカすぞ?」「そう思う?」「ああ、トド松ガールもきっとお前の魅力に溺れて甘美なる…」ずっと、おとなしく話を聞いてくれていた兄のクソ顔とクソイタイ台詞を阻止すべく、片方の紙袋を指さした。「これ、カラ松兄さんにあげる奴だから」「ふぇ?」不意を突かれてきょとんとする顔は、先ほどまでゆっくりトド松の愚痴を聞いてくれていた兄とは思えないほど、幼く見える顔をした。「今日のお礼!それにいつも愚痴聞いてくれるでしょ!」上目遣いにぱちん、とウィンクをするトド松に、カラ松は戸惑いながらふにゃりと笑った。「いいのか…?」「ん、いいの!それ着てさ、カラ松兄さんもたまにはデートしてきなよ」「なっ…あ、そんな俺はデートなんか…そのっ…」とたんに泡を食ったように慌てるカラ松が、誰を思い出したかなんてことはわざわざ口には出さない。「いいからいいから!あ、ここのお会計はお願いね、カラ松にーさん♪」(ま、僕がデートしたいのも「女の子」じゃないんだけどねー)ちょっと眠そうな目のイチグンサマを思い出しながら、トド松は残りのザッハトルテとチーズケーキをぱくぱくと平らげた。