「健康のために1日1万歩歩こう」という話をよく聞きます。でも、1万歩をクリアするのは大変だと感じる人も多いのではないでしょうか。できれば、1日1万歩を歩かずに健康的になりたいですよね。今回は、ウォーキングの歩数や距離について、「やってはいけないウォーキング(SB新書)」著者のウォーキングの専門家である青栁幸利先生にお話しを伺いました。

どうして1日1万歩といわれるの?


ウォーキングでの健康法として、「1日1万歩歩くと健康にいい」という話をよく耳にします。実際にダイエットやメタボ対策としてウォーキングを始めて、「毎日1万歩は歩いています!」という方も珍しくありません。たくさん歩いて汗を流す運動を続けているので体にはよさそうですよね。

しかし、なぜ1日1万歩がいいといわれるのでしょう?これは以前に「1日1万歩以上歩こう」というスローガンが世界中に広まったことが原因です。これをきっかけに誰もが「歩けば歩くほど健康にいい」と思うようになってしまいました。

歩くことはよいことです。でも、すべての人に「1万歩歩けばいい」が当てはまるわけではありません。歩数だけにこだわって、長い距離を歩き過ぎると、免疫力が下がって逆に健康を害してしまうこともあります。せっかくの運動ですから、元気になれるウォーキングの方法を知っておきたいですよね。

みんなが1日1万歩必要ない!


ウォーキングの歩数と健康の関係を調査した「中之条研究」では、「1日1万歩・速歩き30 分」している人と「1日8,000歩・速歩き20分」している人の健康状態を比較しました。その結果、メタボ解消には「1日1万歩・速歩き30 分」の方が有効だったものの、それ以外の効果は変わらないということがわかりました。

つまり、すでにメタボになってしまっている人にとっては、1万歩以上のウォーキングは効果的といえますが、メタボでない人の健康維持には、8,000歩ほどで十分ということです。ダイエット目的なら、「1日1万歩・速歩き30 分」、健康目的なら「1日8,000歩・速歩き20分」を目安にするとよいでしょう。

また、歩き過ぎてオーバーワークになると、逆に免疫力が下がり、体調を崩しやすくなったり膝や腰を痛めたりする確率も高くなります。過ぎたるは及ばざるがごとし!運動にも当てはまるのですね。

※「中之条研究」とは群馬県中之条町に住む65歳以上の住民5,000人を対象に、青栁幸利先生が15年以上にわたり身体活動と病気の関係を調査した研究。

歩数と速歩きの関係


健康を目的とする場合は、「1日8,000歩・速歩き20分」が効果的であることは先ほどお話ししました。では、「1日8,000歩」だけ、「速歩き20分」だけでは効果が薄れてしまうのでしょうか。

健康に重要なのは、運動の「量」と「質」です。「量」が歩数で、「質」は運動強度となります。運動強度とは、歩くときにどれくらいの強さで地面を踏んだかという刺激の度合いを指します。同じ距離や歩数で歩いたとしても、ゆっくり歩くか速歩きなのかで「強度=刺激」が変わります。そして、もちろん速歩きの方が刺激は高くなります。

つまり、歩数と速歩きのバランスを取ることがとても大切だということなのです。「中之条研究」では、「1日8,000歩・速歩き20分」が適切バランスという結果が出ました。

ウォーキングの時間を確保して、その時間内で8,000歩と考えると、それでも少し大変に感じられますが、実は24時間の生活の中の歩数の合計が8,000歩で十分なんです。日本人の1日の平均歩数は男性が約7,000歩、女性が約6,000歩といわれているので、今より1,000~2,000歩多く歩けばいいということです。これくらいならば、なんだかできそうな気がしませんか。

毎日必ず達成しなくてもOK!


1万歩ではなく1日トータルで8,000歩でいい、1,000~2,000歩の速歩きを生活にプラスすればいい、とはいっても、毎日続けるとなると、さらなる壁が・・・。忙しくて歩く時間が取れなかったり、体調やお天気によって難しくなったりという日もありますよね。

毎日できないと、ウォーキングを習慣にすることを諦めてしまう人もいるかもしれません。ご安心ください。毎日達成できなくても、「8,000歩・速歩き20分」という平均値を保てるように調整すれば大丈夫です。

例えば、平日なかなか歩けない場合は、週末のお休みを利用して1週間の平均で調整するといいでしょう。お天気の悪い日が続くなら、1カ月中で調整すればいいのです。また、夏の暑い時や冬の寒い時に歩く量が少なくなってしまっても、気持ちよく歩ける春や秋に歩数を増やし、1年間の平均で「1日8,000歩・速歩き20分」を達成するというやり方でもOKです。

まずは週単位から始め、慣れたら月単位、習慣ができたら1年単位で調整期間を延ばしていきましょう。

ウォーキングで何キロ歩けばいいの?


ウォーキングをする「距離は関係ないの?」「いったい何キロ歩けばいいの?」という疑問を持たれる方もいるかもしれません。結論からいうと、歩く距離は関係ありません。

ここまでご紹介してきたように、大切なポイントは、ウォーキング時の歩数と速歩き時間のベストな組み合わせを維持することです。健康目的なら「1日8,000歩・速歩き20分」、ダイエットしたい時は「1日1万歩・速歩き30 分」を意識して継続していけばいいのです。でもやり過ぎには注意が必要ですよ。

ウォーキングで目標にすべきなのは、単に距離や歩数を多くすることではありません。距離や歩数の多いことが、必ずしも健康に繋がるわけではないので、健康を目的にする時は1万歩歩く必要はありません。これまでなんとなく歩くことを習慣にしていた人も、今回ご紹介した「1日8,000歩・速歩き20分」をぜひご自身で試してみてはいかがでしょうか。
 

 

この記事の監修

青柳 幸利
医学博士(筑波大学卒業、トロント大学大学院医学系研究科博士課程修了)
東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム 副部長
1962年 群馬県中之条町生まれ群馬県中之条町に住む65歳以上の全住民5,000人を対象に、十数年にもわたり、身体活動と病気の予防の関係についての調査(中之条研究)を実施。高齢者の運動処方ガイドラインの作成に関する研究に従事し、様々な国家的、国際的プロジェクトに主要メンバーとして携わる。
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