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国際通貨研究所理事が国際経済の仕組みを解説します。
国際経済を知ることで、為替市場の見方が広がる!
この機会に、一歩踏み込んだ分析力を身に着けるために
勉強してみましょう!
 



第1回「『中国経済と日本経済』」

 先日、米FRBが量的緩和第三弾(QE3)を実施したことに続き、日銀も量的緩和の実施を決定し、日米の景気回復の停滞を改めて確認することとなった。
 一方で、GDPにおいて日本を上回り世界第2位となった中国は、果たして今後もこの急成長を続けることが可能なのだろうか。
 そこで今回は、中国経済と日本経済にスポットライトを当ててひとつの見方を紹介しようと思う。今後の中国経済を考察する上での3つのポイントから、日本経済については経済の新陳代謝というポイントから考えてみよう。


 チャールズ・キンドルバーガー( Charles P Kindleberger, 1910~2003, 米経済・歴史学者)の国際収支発展段階説について、読者の中にはご存知の方もいるのではないだろうか。彼の国際収支発展段階説に、現在の中国をあてはめるとその3段階目に位置し、また、日本は現在4段階目に位置し、5段階目への移行途中にあるとされている。
 新興国の台頭や各国の経済発展を見ていく上で、改めて確認しておくと、参考になる部分があるのではないかと考える。
 ① 未成熟な債務国:
      国内産業は未発達。資本収支の流入超で経済発展を補う段階
 ② 成熟した債務国:
      資本収支は引き続き流入超。しかし、輸出の発達により貿易収支は黒字となる段階
 ③ 債務返済国:
      貿易、サービス収支が大幅な黒字となる。一方で、債務返済が進み資本収支は赤字の段階
 ④ 未成熟な債権国:
      対外純資産が増加し所得収支は黒字となる。
      よって資本収支も赤字幅が大きくなる段階
 ⑤ 成熟した債権国:
      対外競争力が低下し、貿易・サービス収支は赤字に。
      一方、所得収支の大幅な黒字に支えられ、
      経常収支の黒字を維持する段階
 ⑥ 債権取り崩し国:
      貿易、サービス収支の赤字幅が拡大。
      経常収支が赤字になるため、
      対外債権の取り崩しが必要になる段階
2012年1月27日 日本経済新聞より


  「人口ボーナス」とは、人口構成のうち、子供と老人が少なく生産年齢の人口層が厚い状態を指す。豊富な労働力による高い税収を期待することが出来る一方で、医療や年金などの社会福祉費を低く抑えることが出来る。また、豊富な労働力を背景にした高い経済成長も可能となることから人口ボーナスと呼ばれている。多産多死社会から少産少死社会へと変化する過程で現れる。
 ちなみに、各国の人口ボーナスが終了する時期は、日本が1990年頃なのに対し、中国2015年頃、韓国は2015年頃インドは2040年頃とされている。

(引用:著・西村陽造 「老いる中国は経済成長のエンジンを持続できるか?」国際通貨研究所、April 4, 2008)

反対語を「人口オーナス」という。この状態では、一国の人口構成のうち、高齢人口が急増する一方で、生産年齢人口が減少し、少子化で生産年齢人口の補充が出来ず、財政、経済成長の重荷となる状態を指す。
  日本では、バブルが崩壊して長い経済低迷期に入った1990年代が、この人口ボーナスの終了した時期にあたる。中国や韓国が、2015年~2020年に人口ボーナスの終了に伴い人口オーナスを迎えると、日本と同様に経済成長の転換点を迎える懸念が充分にあると考えられる。2030年頃には、中国の従属人口比率(※)は、現在の日本と同じ水準になると考えられている。


 名目ベースで、一人当たりのGDPが5,430ドル(2011年)に達した中国。2006年の段階では、2,070ドルであったので、僅か5年で2.6倍となったといえる。このペースを維持できるのであれば、先進国の仲間入り目安とされる1万ドルを越える事も、数年で可能になるといえる。
 これまでは、先進国となることを目標として前進するだけであった中国経済は、他の先進国同様、経済体制の変更が必要不可欠になると考えられる。すると、現在の中国のように、共産党一党独裁の政治・経済中央指導体制のままでは、変化に対し対応できるか考えると疑問を感じる人もいるのではないか。

  日本が不況に見舞われている要因に、先に取り上げた人口オーナスも考えられる。昨今では、大手の電機メーカーが苦戦する一方で、アメリカや韓国の電機メーカーのここのところの躍進には目を見張るものがある。いったい何が明暗を分けてしまったのか。要因のひとつとして、「新陳代謝の悪さ」が考えられるではないか。つまり、日本では一つの業界にひしめく企業の数が多すぎるということである。
 典型的な例が、自動車業界だ。自動車業界においては8社がひしめいているのに対し、アメリカでは僅か3社、韓国においても、GMの傘下となったデーウーを入れても3社である。



 確かに世界10位である、約1億2000万人口の市場であればそれなりの収益は確保できる。そのため、他国のように整理淘汰が進まず、それぞれが職人のようにニッチなサービスを展開しながら小さな市場を作り、棲み分けをすることとなった。一方で、日本企業が進化を拒む中、諸外国では吸収合併を繰り返すことで、国内一業種一企業に近い環境を作り上げ、さらなる拡大のための資本力を蓄えることを可能としたことにより、競争力を維持しているのである。こうした企業は、自国内で磐石な地位を築き上げると、更なる市場の拡大を海外に求め、それまで蓄えてきた資本を使って進出先の企業買収を繰り返しながらグローバル企業へと成長した。

 日本では、それぞれの分野で世界的な技術を持つ企業が数多く存在する。また、かつての都市銀行が統合することで現在のメガバンク3強を作り上げたように、それぞれの資本を統合すれば、海外企業にも十分な競争力を持つグローバル企業を誕生させることは可能なのではないだろうか。


Author
本田 敬吉(Keikichi Honda)

1959年東京大学法学部卒業後、東京銀行入行、常任参与チーフエコミスト。サン・マイクロシステムズ株式会社など数社で会長を務めた後、日本経団連OECD諮問委員長を引きうける。現在、財団法人国際通貨研究所理事として、為替市場の分析を行う。