ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 雪ノ下雪乃編 after12017年7月13日 00:45 ペラペラと本を捲る音だけが響くこの部屋。目の前には入ってきた際に用意された紅茶入りの湯呑み。喉の渇きを潤すために少しだけ啜る。「ねぇ、比企谷君」「なんだ?雪ノ下」 本校舎から離れた特別棟の一室にて黒髪ロングの美少女と2人きりで本を読む。お年頃の男子高校生なら誰もが羨むシチュエーションだ。流れに乗って告白しちゃうまである。「由比ヶ浜さんは今日来ないのかしら?」「あぁ、何か家の用事で来れないんだと」「そ」 読んでいた本を閉じ椅子ごと体を俺の隣に持ってくる。ふわりと舞う甘い香りが、この前の出来事を彷彿させて心臓に悪い。「あの…」「何?」「何で隣に来たんでしょうか?」「あぁ、いいのよ気にしなくて。比企谷君は読書に集中しててちょうだい」 そう言われてもなぁ…。超至近距離から視線を感じるとか、視線に敏感な俺からすれば全然読書に集中出来ないんですけど。 何て言えるわけもなく、大人しく本を読むことにした。無心だ、無心になるのだ。「へぇ」「……」「なるほど、そういう表現を使うのね」「……」 いつの間にか俺と一緒に同じ本で読書を始めた雪ノ下は、時折感想をもらしつつ文字を見るため徐々に本との距離を近づけてくる。そうなると、自然に密着する事になり彼女のやわらかい肢体が押し付けられるわけで……。「……」 やばい。もう、限界だ。俺は理性の化物から本能の化物へとクラスチェンジするよ……。あ、もう無理。意識が遠のいて――「比企谷君」「……」「比企谷君」「って、痛い痛い。雪ノ下痛い!」 頬を思いっ切り抓られる痛みで、失いかけた意識を何とか保つことが出来た。意識を失いそうになったきっかけを作ったやつに助けられるとはこれ如何に。「比企谷君、これ」「あ?膝枕だが、どうしたんだ?」 雪ノ下が指さしたのは、挿絵で書かれていた膝枕シーン。無理して頑張ってた主人公をヒロインが労る場面で、自分の気持ちを初めて受け止めてもらった場面でもある。「私、これがやりたい」「え?……は?」 突然の申し出に思わず混乱する。 いや、待てよ。そういえばこの間、甘やかせとこの方は申されていたのではないだろうか。という事を前提にすると、この申し出は甘えたいというサインであると捉えられる。「分かった。いつでも来い、雪ノ下」 自分の膝を叩いて準備万端だということを示す。そんな俺を見て、雪ノ下は首を傾げた。「何をしているの?」「いや、お前この間甘えたいって言ってたからてっきり俺に膝枕してもらいたいのかと思って」「……それは後でしてもらうわ。それよりも今は…」 そう言って、雪ノ下は自分の膝を叩く。「私が貴方に膝枕をするわ」 ……この娘はいつからこんなにアクティブな娘になったのかしら。でもまぁ、合法的に雪ノ下の膝枕を堪能出来るのなら、是非も無いよネ!✕ ✕ ✕「なぁ、雪ノ下」「何かしら、比企谷君」「いつまでこれ続ける気だ」 雪ノ下による膝枕が始まってはや十分。 最初は頭に来る柔らかい膝の感触に新鮮さと少しばかりの興奮を感じていたものの、今ではこの状況を客観的に見た場合を想像してしまって早く離れたいと思っている。 校内一の美少女の膝の上で、にやけ顔を浮かべている腐り目の不気味な男。知らない人が見たらすぐさまお巡りさん呼ばれるレベル。「さぁ?」「さぁ?って。お前、俺にいつ終わるか分からない羞恥プレイをさせるつもりか?恥ずかしすぎて明日からお前と顔を合わせる事すら出来なくなるぞ」「ならその豆腐みたいに柔らかいメンタルを鍛える良い機会じゃない」「どうやっても俺を解放しないつもりか…」 口論がヒートアップしていくにつれ、反対に俺の頭を撫でる手は酷く優しいものへと変わっていく。このままでは懐柔されてしまうではないか。「貴方は大人しく私の膝の上でにやけていればいいのよ」「……分かりました」 諦めるが勝ちだ。これ以上口論しても勝てるきしないし、雪ノ下が満足するまで大人しくしておこう。「……ふふ」「何だよ」「いえ、こんなにも人を愛おしく感じたのって初めてだから。何か嬉しくて」「そ、そうか」 そう言って微笑む雪ノ下。やっべ、可愛すぎてドキがムネムネする。ていうか何これ。告白?告白でいいの?告白で受け取ってもいいんですか?「俺もだよ」「………」「……あ」 どうしようもなくドキドキして、気持ちが緩んだ結果がこれだ。やだ、八幡もうお婿に行けない。「あ、ありがとう」「ど、どういたしまして?」「………」「………」 訳の分からない受け答えをして、どちらとも黙り込む。顔を合わせることが出来ず、互いに目をそらす。因みに、未だに俺は雪ノ下の膝の上である。何とかしたい、この状況。何かご都合主義みたいなのがあれば――リーンゴーンリーンゴーン!リーンゴーンリンゴーン! 突然鳴り響いたチャイムに、言いかけた言葉が止まる。 ――本当に起こったよご都合主義みたいなの。下校時間にもなったし、流れに乗じて帰宅するとしましょう。 上半身に力を入れて体を起こし、鞄を担いで出口へと向かう。早い!早いです比企谷選手。目にも留まらぬ早さで最短ルートを突っ走っています!「ちょっと待って」「ぐぇ」 扉へ後1歩のところで後続から首根っこを掴まれる。くそ、あともうちょっとだったのに…。「この後、時間あるかしら?」「……あるにはあるが、なるべく急いでくれ。小町が家で待っている」 兄たるもの、妹を1人で家に待たせるわけには行かない。例えそれが1分や2分であろうとも! という事を理由に早く離脱しよう。 妹よ。可愛いお前をだしに使う悪い兄をどうか許してくれ。「大丈夫よ。小町さんには許可を貰ってるから」「は?」「『全然大丈夫です!今日は家に上げないからと兄に伝えてください!』だそうよ」「いや――は?」 へ?既に売られてたパターン?もう俺に決定権は無いってこと?「だから、今から貴方には家に来てもらいます。異論は認めないわよ?」「……もう好きにしてくれ」 選択権と自由意思を剥奪された俺は、なす術も無く雪ノ下の家へと行く事になってしまった――。続くぞ!