最新サプリメント事情

運動パフォーマンスにおけるベタインの役割

【ベタインとはどんな物質か?】
"ベタイン"というのは、多くの人々にとって聞き慣れない物質だと思います。しかし、ベタインは微生物、植物、動物の中に広く存在しています。ベタインは19世紀にビーツ(砂糖大根、Beta vulgaris)のしぼり汁から初めて発見され、続いていくつか他の有機物でも発見されました。ベタインは小麦、甲殻類(カニ、エビなど)、ほうれん草、ビーツ(砂糖大根)を含む多くの食べ物の重要な成分です。ベタインにはいくつかの別名があり、トリメチルグリシン(TMG)、グリシンベタイン、リシン lycine(注:必須アミノ酸の一つであるリシンはlysine)、オキシニューリン(オキシノイリン)としても知られています。サプリメントの中には"トリメチルグリシン(TMG)"として表記されているものもありますが、これはベタインと同じ物質と考えてよいでしょう。ベタインは(CH3)3N+CH2COO-という化学式で表される「第四アンモニウム化合物の双性イオン」です。この化学式はアミノ酸のグリシンのメチル基誘導体、つまりグリシンにメチル基(‐CH3)が3つ付いていることを表します。この化学的に反応しやすい3つのメチル基があるために、ベタインはメチルアミンとしてみなされています。

【主な役割】
ベタインの主な生理学的な役割は浸透圧調節物質とメチル基供与体としてのものです。浸透圧調節物質として、ベタインは環境ストレス(例えば、浸透圧変化、温度変化)から細胞、タンパク質、酵素を保護します。生物が環境ストレスから身を守るためにベタインを蓄えていると考えると、ベタインが生物に広く存在しているのもうなずけます。その作用に着目して、浸透圧の変化というストレスから守るためにサプリメントとして養殖魚のえさに加えられることもあるようです。そして、メチル基供与体として、ベタインは主にヒトの肝臓や腎臓にあるメチオニンサイクルに関与しています。こちらの「メチル基を他の物質に与える」役割の方がヒトにおいては深い意義があると思われます。

【DNAにも影響が!?】
ベタインのメチル基供与体、つまり「他の物質にメチル基を与える」という役割から、ベタインは「DNAにメチル基を与える」と考えられています。「DNAメチル化」は、S‐アデノシルメチオニンという物質をメチル基の供与体とし、DNA中のC(シトシン)にメチル基を転移させ、5‐メチルシトシンに変換する化学反応です。メチル化は書類を書棚へ入れよというインデックス(付箋)のような目印といえます。書棚に入った書類を使うことができないように、メチル化されたDNAは転写されません。DNAメチル化は単なる目印ではなく、それ自身に転写を抑制する働きがあります。転写とは、DNAの遺伝情報をmRNAに写し取ることです。これは、大事な書類のコピーをとることに例えられます。このDNAメチル化は遺伝子スイッチのオン・オフを探究する学問である「エピジェネティクス」において代表的な機構です。エピジェネティクスは「DNAの配列には変化を起こさないで遺伝子の機能を調節する仕組み」のことで、個体の特徴に影響を与える要因の一つとされています。エピジェネティックな仕組みは私たちの全ての細胞で働いており、発生、老化、がんなど、さまざまな生命現象と関わっています。よって、不完全なDNAメチル化は遺伝的な不安定、老化、癌を引き起こすかもしれません。ベタインを含んだ最適な"メチル化食"は様々な病気の予防や治療に対して提案されています。

【運動パフォーマンスにおけるベタインの役割】
ベタインが運動パフォーマンスを向上させる可能性はクレアチンとの関係から考えることができます。クレアチンは肉や魚を食べることで体内に摂取できますが、アミノ酸のグリシン、アルギニン、メチオニンから体内で生合成することもできます。生合成の経路は、まず、腎臓でグリシンにアルギニンのアミジノ基が転移してグアノジノ酢酸が生じます。次に、グアノジノ酢酸が肝臓で活性メチオニンのメチル基の転移を受けてクレアチンが合成されます。この経路で、ベタインは新たにクレアチンを作り出すために、メチオニンを媒介として、グアニジノ酢酸にメチル基を供与します。つまり、ベタインは「メチオニンへのメチル基供与体として働く」ことにより、クレアチンの生合成を増加させると考えられます。クレアチン量が増加すると、ATPの再生を加速させることができます。ATPはおよそ10秒以内の高強度の運動の持続に重要なエネルギーの基となります。このような生化学の視点から、ベタインをサプリメントとして摂取することは骨格筋内のクレアチン量を高めて、筋力とパワーを増強すると考えられます。

【摂取方法】
多くの人々のベタインの摂取量は平均1g/日から高くて2.5g/日だと推測されています。これはベタインを含む食べ物だけでなくコリンを含む食べ物も考慮されたものです。ベタインはコリンの代謝で生じるためです。また、ベタインの安全な上限量は9~15g/日と考えられています。ヒトでの研究で、ベタインを摂取すると、急速な吸収と分配が起こり、血清中において1~2時間でピークに達すると分かっています。これらのことから、運動前に摂取することで、ベタインのエルゴジェニック効果を得られ、ベタインのサプリメントとしての一般的な摂取量(約2.5g/回)は安全だと考えられます。

【クレアボルBLACKでベタインを体感】
生化学の経路から、ベタイン単独の摂取ではクレアチンの生合成を加速させることはできないことは明らかです。それに加えてアルギニンなどのアミノ酸の存在が必要となります。クレアボルBLACKにはそれが含まれていますし、高品位のクレアチン自体も含まれています。クレアボルBLACKによって、筋力やパワーがさらにブーストするのを体感できるでしょう。

【参考文献】
・Stuart AS Craig. Betaine in human nutrition. Am J Cli Nutr 2004;80:539-49
・佐々木裕之.エピジェネティクス入門.岩波書店(2005)
・田川邦夫.からだの生化学.タカラバイオ(1993)

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