目の回りがどんよりと暗く見えるくま。実年齢より老けた印象を与えたり、疲れて見えたりするので何とかしたいという人は多い。くまを完全になくすことは難しいが、マッサージや運動などである程度改善できるので、気になる人は試してみてはどうだろう。
くまがあると印象はどう変わるのか。ポーラはパソコンで作成した24歳の女性の合成顔と、同じ合成顔にくまを加えた顔をふたつ並べて印象の違いを男女30人に聞いた。その結果「実年齢よりも15歳も老けた印象になった」(ポーラ商品企画部課長の菅千帆子さん)。
くまとは何なのか。資生堂スキンケア研究開発センター主任研究員の舛田勇二さんは「くまの原因は目の回りの毛細血管のうっ血と色素沈着」と話す。うっ血とは毛細血管の中で血液が「渋滞」している状態。同社が約60人の女性を対象に目の回りの皮膚の状態を調べたところ「くまがある人はない人に比べ、目の回りの血流が遅いことが分かった」と舛田さん。
血液は毛細血管を流れる間に運んできた酸素を周りの細胞組織に送り込む。血流がスムーズだと酸素を持つ血液が常に流れ込んでくるが、渋滞を起こしていると、とどまっている間に酸素を使い果たしてしまう。酸素を手放した後の血液は鮮やかな赤色から暗い赤に変化するため、血流が滞っていると皮膚の色が暗く見えてしまうのだという。
もう一つの原因が皮膚に蓄積したメラニン色素の沈着で、茶色がかったくまになる。「20代ではくまの有無とメラニンの量はそれほど関係がないが、年齢を重ねるとメラニンが原因のくまが増える」(舛田さん)
うっ血と色素沈着というふたつの原因に加え、目の回りの皮膚の薄さも要因の一つ。目の回りの皮膚は0.6~1ミリとほおの皮膚の2分の1~3分の1の薄さ。そのためうっ血や色素沈着など、肌の内側の状態が表面に現れやすい。
うっ血によるくまは青みがかった血管の色が透けているため、青いくまになる。このタイプのくまが気になる人は、血流改善を意識してみよう。「血流改善にはマッサージが効果的。目の回りだけでなく顔面、首筋など静脈全体の流れを良くすることを意識して」とポーラの菅さん。
顔面で大事なのは「顔面静脈」。目と鼻の間から鼻と口の横を通り、あごの付け根に向かう静脈で、目の回りなど顔面の多くの静脈を集めている。ただ、静脈の流れを良くしようとこするのは厳禁。指先を使って軽く押して離すだけで効果があるという。
首筋にも2本、太い静脈が流れているので、手のひらで温めつつ優しくもむとよい。「10分間マッサージを続けると目の回りの肌の温度が0.5~1度上昇し、ほんわりと温かく感じる」(菅さん)。10分のマッサージが面倒なら1分程度でも続けることが肝心だ。
運動習慣見直しも
「くまが気になるなら、体力をつけて全身の血のめぐりを良くして」と話すのは西葛西井上眼科クリニック(東京都江戸川区)の勝海修所長。「特に女性は心臓の拍出力が弱く、酸素が少ない血液がたまりやすい。なるべく歩くようにしたりジムに行ったりして運動習慣をつけることが、結果的にくまの改善につながる」と指摘する。
色素沈着は肌のこすりすぎや紫外線などの刺激でできるといわれるが、肌の新陳代謝が正常なら自然に改善されるという。
このほか、目の回りに乾燥や小じわ・たるみがあると、光がうまく反射されず、くまが目立ちやすくなる。目の回りはもともと保湿能力が低く乾燥や小じわが現れやすいので、保湿効果があるクリームを使うなどするといい。それでもくまが気になる場合は、しみなどを隠す化粧品のコンシーラーを使う手も。ほおの色に合わせたベージュのコンシーラーを選びがちだが、菅さんは「実は青いくまを隠すにはオレンジ系が向く」と、アドバイスする。
色素の沈着、真皮層でも
茶色っぽいくまの原因となるメラニンの色素沈着。メラニンは通常は表皮にのみ存在するが、最新の研究から表皮の下の真皮層でメラニンの色素沈着が起きているケースがあることが分かってきた。
帝京大学医学部の渡辺晋一教授(皮膚科)が目の下のくまに悩む十数名の患者の皮膚を調べたところ、「全員に真皮層にメラノサイトがあった」。メラノサイトとはメラニンを生成する細胞で、通常は表皮の基底層にある。「真皮のメラノサイトが原因の疾患には顔の青あざの太田母斑などがある。目の下のくまもこうした『あざ』と近いものなのでは」
表皮のメラニンは肌の新陳代謝によってはがれおちるが、真皮のメラニンは「自然に消えることはまずない」。塗り薬や美白剤などは表皮のメラニンにしか効かないので、真皮にできたくまを薄くしたい場合は、レーザー治療が必要だという。
[日経プラスワン2010年9月4日付]
本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。