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IWCアクアタイマー・オートマティック 2000
2000メートルという防水性能を誇るダイバーズウォッチ。外装部品のほとんどはチタン製。そのため軽く、錆びにも強い。搭載する自社製ムーブメントも、スポーツウォッチにふさわしく、極めて高い耐衝撃性を誇る。Tiケース×ラバーストラップ(直径46mm)。200気圧防水。106万5000円(税別)(問)IWC 0120-05-1868
時計のケースの話、今回は錆(さ)びにくい素材について、である。
海で泳いだり、水につけなければ時計は錆びない、と私たちは思いがちだ。しかし時計を錆びさせる本当の原因は、水ではなく、汗なのである。
金属にとっての大敵は「酸」である。そして人間の汗は弱酸性だ。人がかいた汗は、時計ケースのすき間からしみ込み、少しずつ蓄積していく。短い期間なら問題ない。しかしその状態を何年も放っておくと、汗のたまった部分からケースが錆びてくる。見た目は問題ないのに、ケースを開けたら錆だらけという時計は、水につけたためではなく、汗にやられたのである。アルミ、真鍮(しんちゅう)、洋銀、銀、こういった錆に弱い素材でできたケースは、必ずと言っていいほど、ケースのすき間から錆びてくる。
ただ現在、時計のケースは昔ほど錆びなくなった。錆びにくい素材、ステンレスのおかげである。しかも今の高級時計が好む316Lと、ロレックスだけが採用する904Lは、以前のステンレス材に比べてはるかに錆びにくい。普段使いならば904Lで問題なし、と言いたいが、この素材は、金属アレルギーの原因となるニッケルの含有率が普通のステンレスよりはるかに高い。理論上は、金属アレルギーを起こす可能性が否定できない。
そこで各社は、ステンレス以外の錆びにくい素材にも目を向けるようになった。一例がチタンだ。この、軽くてアレルギーを起こしにくい素材は、錆びにくいというメリットもある。そのため、海で使うことを想定した時計には、チタンの採用例が増えてきた。そのもっとも優れたサンプルが、G-SHOCKの「ガルフマン」だ。ケース全体を樹脂で覆い、しかも見える外装部品をすべてチタンに置き換えたガルフマンは、価格帯を問わず、もっとも錆びに強い時計のひとつといえる。同様に、IWCのダイバーズウォッチ「アクアタイマー2000」も、やはりほとんどの外装部品がチタン製だ。いわゆる高級時計では、もっとも錆びにくいもの、といえるだろう。
もうひとつの錆びにくい素材は、セラミックである。この素材も、やはり軽くてアレルギーを起こさないうえ、金属でないため決して錆びない。しかもきわめて硬いのである。加工が難しいため採用例は少なかったが、最近はケースに使うメーカーが増えてきた。
ステンレスにも、いっそう錆びにくいものがある。ジンの「Uボートスチール」は、その名の通り、ドイツ軍の潜水艦が用いる素材を、時計に転用したものだ。詳細なデータは公表されていないが、潜水艦向けの素材と考えれば、錆びにくさは普通のステンレスに勝っている。
ただほとんどの金属素材は、多かれ少なかれ、錆びる可能性がある。チタンでも、合金化したものは、やはり錆びる可能性がある。錆びにくさだけを考えれば、純チタンの時計はお薦めだ。ただし素材が軟らかいため、傷付きやすいというデメリットがある。
改めて言うと、錆に対しても、万能の素材は存在しない。しかし気を付ければ、どんな時計であれケースの錆びは予防できる。一日時計を使ったら、かならず汗を拭いておくこと。そして海に潜ったら、一日水に漬けて塩を抜いておくこと。たったこれだけで、ケースの寿命ははるかに延びる。もし時計を長く使いたいのであれば、使った時計を拭く習慣を持つこと。結局、使い手の愛情に勝るものはないのである。
PROFILE
- 広田雅将(ひろた・まさゆき)
時計ジャーナリスト。1974年大阪府生まれ。サラリーマンなどを経て現職。現・時計専門誌クロノス日本版(www.webchronos)主筆。国内外の時計賞で審査員を務める。趣味は旅行、温泉、食べること、時計。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)がある