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「構成要素が置き換えられても同一性は保たれるのか」
最も有名なギリシャ神話の1つにミノタウロス伝説があります。
詳細は省きますが、クレタ島に住む牛頭人身の怪物をアテナイ王・テセウスが退治するという冒険譚です。
いまや神話となった遠い昔話です。しかし、話はこれだけでは終わりませんでした。
クレタ島から脱出する際に乗っていたテセウスの船はその後も長きにわたって保存されました。そして、歴史として記録が残っている紀元前317年の時点でも船は存在していたというのです。
ここで1つの問題が起こりました。
テセウスの乗っていた船には30本の木でできた櫂が備え付けられていました。木は時とともに朽ちるため、人々は古くなった木材を少しずつ新しいものに置き換えていったのです。こうして長い月日の末に全ての木は置き換えられてしまいました。
Ship of Theseus
画像:http://site.douban.c
果たして、元の船を構成する要素が徐々に置き換えられていった場合、それは元の船と同じといえるのでしょうか。それとも別のものなのでしょうか。
テセウスの船はアイデンティティー(同一性)にも絡む思考実験です。
どこからどこまでを「同じ」とみなすのか、という複雑な問題を孕んでいます。
他の有名な例として、イギリスの思想家・ジョン=ロックの挙げた「靴下の話」があります。
お気に入りの靴下に穴が空いてしまった場合、あなたはその穴に布を当てて継にするかもしれません。それでもまだあなたのお気に入りの靴下に変わりは無いでしょう。では、また別の穴が開いてしまったら。その次は。
これを繰り返していくと、そのうち当て布だけで出来た靴下が出来上がります。はじめのお気に入りの靴下の繊維はほとんど残っていません。元の構成要素が完全に置き換えられてしまった場合でも、果たして同じものだということができるのでしょうか。
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テセウスの船と似たような話はいくらでも考えることが出来ます。
自動車のパーツを壊れた場所ごとに交換していった場合。砂漠の砂粒が風で飛ばされていった場合。GP01が宇宙で大破した際にフルバーニアンとして換装どころじゃない大幅パワーアップを行った場合等々。(この場合名前はほとんど変わりませんでしたが)
このことは私たち自身についてもいえます。人の細胞の平均寿命は長く見積もっても10年以下です。細胞は常に代謝を繰り返すため、ある時点で人体を構成していた細胞が完全に入れ替わる日が必ず来ます。人の体を細胞単位で見た場合、1~6年という周期で全くの「別物」に生まれ変わっていることになります。
しかし、人には6年前の自分とは完全に生まれ変わったという認識があるでしょうか。
6年前とは全く異なる細胞(パーツ)で構成されていたとしても、人の同一性は途切れることがありません。(これが途切れてしまった場合が解離性同一性障害、通称多重人格障害です)
それでも、当て布で出来た靴下はお気に入りだった靴下とは別物だ、と感じる人が多いのではないでしょうか。これがテセウスの船がパラドックスと呼ばれる所以です。
昔からこの問題に対する解決策はたくさん考えられてきました。
・四原因説
アリストテレスの提唱した哲学では、事象の原因として4つの原因を規定しています。それに当てはめてみた場合...
・物事が「何であるか」を示す形相因は設計として受け継がれている
・その材料を表す質量因が別物(別の木材)になっていたとしても、
・「人が乗るものである」という目的因は変わっておらず、
・「どのようにして形成されたか」を表す作用因(動力因)は「船大工が行った」という点において同じ
よってテセウスの船は同一のものである、というのがアリストテレス哲学の立場です。
・属性の形而上学
船はそれを構成する低位のパターン(部品)の集合体であり、船自身という高位のパターンは変化しない。よってテセウスの船は同一のものである。
・「同じ」の定義
属性が等しいことを示す質的に「同じ」と、数的に「同じ」であることは別であるという考えです。船という属性は同じであっても、存在する場所や構成する要素が異なります。よってテセウスの船は以前とは別物。
他にも4次元主義による空間的広がりと時系列の関係などを含めた解答などが考えられています。
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アメリカ合衆国初代大統領として知られるジョージ=ワシントンには様々な逸話があります。中でも桜の木の話は有名です。
ジョージが6歳の時、誤って持っていた斧で父親が大事にしていた桜の木の枝を折ってしまいます。彼は正直にそのことを父親に話したところ、怒られるどころかかえって褒められた、というお話です。
これは「嘘をついてはいけない」ということを子どもに教えるために繰り返し語られている有名なお話です。しかしどうやら作り話のようです。斧を手に入れたジョージがどうしても切れ味を試したくて桜に切りつけた、というのが実際のところのようです。
真相は何であれ、ジョージ=ワシントンの斧というのは有名になりました。
これを使った有名なジョークがあります。
ドラマ「Night Court」のHarry Andersonが話の掴みとしてよく使っていたものです。
「こちらにあるのが、かのジョージ=ワシントンの使っていた斧です。皆さんご存知ですよね。彼が子供時分に桜の木をちょんぎったアレです ― まぁ何年か前に刃の部分が壊れたので取り替えて、その10年位前に柄の部分も新しいのを取り付けたんですけどね」
ここで観衆は「そんなのインチキに決まってる!」と思います。
そこでハリーは得意げに続けます。
「たとえパーツは取り替えてあっても、ジョージの精神は受け継がれているのですよ」
George Washington`s ax(?)
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まるでテセウスの船の話をしているようです。
テセウスの船には別の問題もあります。
古くて取り外された部品を集めてなんとか別の船を作った場合、新しい部品の船と古い部品を集めて作った船。どちらが本当のテセウスの船なのか、という疑問です。
人の同一性にもかかわる鋭い示唆を、テセウスの船は与えてくれています。
追加:
关于忒修斯悖论(或提修斯悖论)
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テセウスの船
2012-11-29 14:03:26 来自: 喵喵(我的愿望是做一个守财奴~)