全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

まちづくりは「ひとづくり」 若手の活躍の場をつくり、 活性化の原動力に~商店街の現地マネージャー育成事業(平成23年実施)~

商店街名 黒崎中心市街地の商店街(福岡県北九州市八幡西区)
商店街タイプ 地域型
店舗数 430店舗(2012年9月現在)

JR黒崎駅前は南口から放射状に商店街が広がり、かつては、小倉をもしのぐにぎわいを見せていた。2000年を境に集客の核となる店舗が相次いで撤退、商店街などは大きな影響を受け、シャッターを下ろす店舗が目立つようになった。

「家賃の高止まりで新しい店も入って来づらい、あるいは、連合会にしても中心メンバーが高齢化していて、若手がいない。いろんな意味で新陳代謝が悪くなっているというのが課題でした。かつてのようにエネルギッシュなまちにするためには、若い人たちが入りやすい環境をつくり、新陳代謝を高めていく必要があると考えていました」と語るのは、これまで黒崎地域のさまざまなまちづくり活動に取り組んできた経験を生かして、外部から商店街の活性化に関わっている入江真一さん。

黒崎よさこい祭りを立ち上げ、ひとづくりの基礎づくり

8年前に着手したのが「黒崎よさこい祭り」の立ち上げ。エネルギーあふれる地元の若者たちを組織し、商店街との関わりを深めるのに一役買った。

「ほかの商店街ではイベントといえば若い人たちが主導しているのに、黒崎では相変わらず50代・60代が音頭とりを担っていました。そこで、よさこいを立ち上げ、そこから商店街のこれからを担っていく若い人たちが一人でも二人でも出てくれればと考えたんです。活性化の前に活性化を担う『ひとづくり』が先決という思いがありました」(入江さん、以下同)

黒崎よさこいチームは、10代・20代のいわばやんちゃざかりの地元の若者たち数十名で組織される。イベント時に限らず、月1回の商店街の清掃活動を行うなど、日常的に商店街と関わっている。チームの存在は商店街に広く認知され、行政や商店街の依頼を受け、さまざまな催しやイベントに参加、エネルギッシュな若手の機動力として活躍している。

"ちびっこ商店街"を通して、次世代のリーダーを発掘

黒崎よさこい祭りに続く、入江さんのチャレンジは商店街に親子連れを呼び寄せるための"ちびっこ商店街"だった。

「駅前には年間50万人もの親子連れが集まる人気の施設があるのに、その人たちは商店街には流れてこない。その人たちに商店街の魅力を知ってもらうために、子どもたちに職業体験してもらう『黒崎版キッザニア』をやろうと構想しました。それぞれのお店で子どもたちがお客様を接客するといった『リアル版お店屋さんごっこ』といってもいい楽しい試み。さっそく商店街に働きかけてみたのですが、『うちの店ではちょっと難しい』と難色を示す店が多くて、最初は弱りました」

それでも粘り強く呼びかけ、各商店街組合理事長などにも協力を求めたところ、徐々に賛同者が増え、生花店、洋菓子店、時計店、中華料理店、ペットショップなど2商店街27店舗の賛同を得て、2010年に1回目を開催。220人の子どもたちとその親や祖父母なども参加し、大成功を収めた。企画段階には難色を示した商店主たちも、イベント終了後は、「楽しかった」「来年もやりたい」と気運が高まった。

「人集めのためのイベントを開催することに狙いがあるのではなく、イベントを通して、商店街活性化の核となる若手を発掘し、育てることが狙いでしたから、こうした声は『まさにわが意を得たり』で、うれしかったですね」

2年目のちびっこ商店街は、30代の商店主がリーダーとなって、実行委員会が組織され、入江さんはサポート役にまわった。3年目には、入江さんは報告を受ける立場をとり、完全に実行委員会が主導するという形で進められている。

ちびっこ商店街

黒崎よさこい祭り

新たなイベントを立ち上げることで、商店街のこれからを担う若手のリーダーを発掘し、育成。

若手のアイデアを現地マネージャーがサポートする仕組みを構築

「かつては、全部自分でやらなければ気が済まず、人に任せられない性格だった」と振り返る入江さんは、2011年、全国商店街支援センターの「商店街の現地マネージャー育成事業」の研修を受け、人に任せることの大切さとそのノウハウを学んだという。

「一人だけでできることはたかが知れている。アイデアを実行できる若手を商店街の中にたくさん育ててこそ、活動が波及効果を生む。若手の『やりたい』という声を聞き、実施に向けてのサポートという立場を貫いています。それが、現地マネージャーとしての私の役割だと考えています」

巨大商店街の横のつながりを促す拠点づくりを目指す

入江さんの活動により、若手リーダーが確実に成長していることは大きな成果。こうした活動と連動するように、2012年、黒崎駅前新天街協同組合は株式会社まちづくりくろさき(2012年5月設立、入江氏が代表を務める)と連携した事業計画が中小企業庁の「地域商業再生事業(うち地域状況調査分析事業)」に採択された(詳細は14ページ参照)。地域ニーズ調査の後、くろさきまちなか交流拠点、情報発信拠点等の整備を行う予定だ。今後も商店街と地域住民の交流を促進していくとともに、商店街関係者の横のつながりをも構築したいと入江さんは考えている。

黒崎駅前は新天街、熊手銀天街、藤田銀天街、カムズ名店街など、11の組合で構成される巨大商店街。

プロフィール

入江真一 ・ (株)まちづくりくろさき代表

北九州青年経営者会議に在籍し、広く黒崎地区のまちづくりに携わってきた経験を生かして、黒崎駅前商店街の活性化にも取り組む。今年、(株)まちづくりくろさきを設立し、代表を務める。
「いろいろ『やってほしい』とお願いされることもありますが、それは私の役割ではないと思っています。『やりたい』という声があれば、それを積極的にサポートする。『黒崎よさこい祭り』も『ちびっこ商店街』もそうですが、そう仕向けていくことで、主体的に動く若い世代が育っていくんです」