アトピー性皮膚炎の治療法は人によって千差万別、その原因やメカニズムを知ることで自分にとって最適な治療法を見つけることができます。

アトピー性皮膚炎の原因と治療

◆ステロイドの作用機序

副腎の構造

副腎皮質ホルモン(広義でステロイド)はその名のとおり、副腎皮質から分泌されるホルモンです。副腎というのは腎臓の上にある小さな臓器で、主にホルモンの分泌に関与しています。

上は副腎の図です。副腎は皮質のほうが厚い構造を持っています。簡単に言えば、皮の方が厚く、実が少ないみかんのような感じです。副腎皮質ホルモンは、このみかんの皮の部分から分泌されるホルモンです。

副腎皮質といえど3層に分かれているということは上の図を見てもらえればわかると思います。球状層では鉱質コルチコイドが、束状層では糖質コルチコイドが、網状層ではアンドロゲン(男性ホルモン)が合成されます。

脳下垂体から分泌されるACTHにより分泌が促進され、ACTHの分泌は視床下部から分泌されるCRHにより調節されています。

ステロイドホルモンの産生・分泌は強力なフィードバック機構により調節されており、血中の糖質コルチコイド濃度の上昇はACTHの分泌を抑制します。ただ、ステロイドホルモンの分泌には日内リズムというものが存在し、深夜から朝にかけて多く、それ以降は徐々に下がり夕方ごろ最低となるという一定のリズムがあります。

フィードバック機構は分泌が多い深夜から朝にかけて起こるので、このとき血中のステロイドホルモン濃度が高いと、脳が「もうホルモンを分泌する必要はない」と判断し、CRHによる通常のホルモン分泌を妨げることになるので、副腎皮質の萎縮が起こってきます。このため、ステロイドホルモンの外用、内服はフィードバックが外れた朝にあわせると、自分の副腎への負担が少ないといわれています。

糖質コルチコイド(いわゆるステロイド)

別名コルチゾールと呼ばれ、一般にステロイドといったらこのコルチゾールをさすことが多いです。ステロイドはその名の通り、コレステロールから合成されます

合成されたステロイドホルモンは、細胞質内受容体へ結合し、作用が発現します。ステロイドホルモン受容体は、ホルモンが結合していない状態では、細胞質中に存在するタンパク質です。通常はHSP90という熱ショックタンパク質と複合体を形成していますが、細胞内に入ってきたステロイドホルモンと結合すると、HSP90と解離し、ステロイド-ステロイドホルモン受容体という複合体として細胞質から核内へ移動します。

核内に移行した複合体はもうひとつの複合体と2量体を形成します。この2量体が遺伝子の特定の配列を認識してその部分に結合し、その結果、種々のタンパクの発現が調節されます。(調剤と情報2005.6号より転載)

ステロイドホルモンの作用は以下のようなものです。

<糖代謝に対する作用>
コルチゾールは肝臓に働いてアミノ酸やグリセロールから糖新生(アミノ酸からブドウ糖を作る過程)を促進し、また、他の器官での糖利用を抑制することで血糖値を上昇させます。この目的は主にストレス時の脳の機能低下を防ぐことにありますが、インスリンの作用と拮抗するということもあり、糖尿病の危険性が増します。

<タンパク代謝に対する作用>
タンパク質を分解・代謝することで、アミノ酸の血中濃度を上昇させ、アミノ酸の糖新生を促進します。また、肝細胞以外の臓器でのアミノ酸取り込みを阻害し、血中アミノ酸濃度を上昇させます。タンパク質の分解により皮膚が正常に再生されず皮膚の萎縮(薄くなる)という副作用が起こります。

<脂質代謝に対する作用>
脂肪組織に作用して脂肪の分解を促進し、血中遊離脂肪酸とグリセロール濃度を上昇させます。ただし、一部の組織では逆に脂肪合成が上昇します。この結果、四肢では脂肪が減少し、背中、頸部、顔では脂肪が増加します。これにより野牛肩や満月様顔(クッシング症候群)が生じます。

<抗炎症作用>
この作用を知るためにはアラキドン酸カスケードを知る必要があります。

炎症部位で誘導されてくるCOX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)の誘導を抑制することでPG類による血管拡張、血管透過性亢進から起こる白血球の遊走→炎症反応やブラジキニン増強作用による痛みを抑制します。また、リポコルチンの産生を促進することでホスホリパーゼA2を抑制し、アラキドン酸カスケードを抑制します。

<免疫抑制作用>
マクロファージの活性を抑制しIL-1を抑制、さらに、IL-2産生を抑制することにより、Th1の細胞障害性T細胞(感作T細胞)への分化を抑制し、マクロファージの貪食能、NK細胞活性に伴う遅延型アレルギーを抑制することで、それらが産生する炎症性サイトカイン(IL-1,6,8、TNF-α)が起こす炎症を止めます。IL-2はB細胞が抗体産生細胞へ分化するのに必要なことから、抗体産生能(IgEなど)も抑制します。

<骨に対する作用>
コルチゾールは骨芽細胞のアポトーシスを誘導するとともに、骨芽細胞の寿命の短縮、機能の抑制により骨代謝マーカーであるオステオカルシン、アルカリホスファターゼ、Ⅰ型プロコラーゲンC末端ペプチドの低下が起こり骨形成能が低下します。加えて、腸管からのカルシウム吸収を抑制し体内のカルシウム量を減少させたり、尿中への排泄を促進する作用を持つ。

<その他の作用>
赤血球増加作用、中枢神経興奮作用、胃酸増加作用。

ステロイドの副作用(まとめ)

副作用原因
白内障・緑内障眼圧上昇、タンパク代謝異常
ムーンフェイス
(クッシング症候群)
糖新生の促進→アミノ酸から糖へ→糖から脂肪へ
高血糖糖新生の促進→アミノ酸から糖へ
皮膚の萎縮
(うすくなる)
アミノ酸の不足→タンパク合成能↓
骨粗鬆症腸管からのCa吸収の抑制→血中Ca低下→骨吸収促進。骨芽細胞の活性低下→骨形成抑制
副腎萎縮血中ステロイドの増加→フィードバック機構が働く→CRH分泌↓
色素沈着副腎皮質ホルモンがメラニン分泌を刺激することは事実ではあるが、ひどい色素沈着は掻かなければならない。掻くことで表皮基底層のメラノサイトが壊れ、メラニンが分散することによる。皮膚のターンオーバーは若い人では約1ヶ月なので、ステロイドを使用していたとしても、掻かなければ自然とうすくなっていく。

Copyright(C) Wakabagari. All rights reserved.