第7回 アヴェダ
「ゆりかごからゆりかごへ」 生物多様性を守る企業ポリシーを徹底的に貫く
CRADLE TO CRADLE認証ロゴとゴールド認証を取得したアヴェダ製品
「ゆりかごからゆりかごへ(CRADLE TO CRADLE)」という言葉をご存じだろうか。モノの「廃棄」という概念をなくし、原材料から作られたモノを再び原材料として戻す、地球環境と生物多様性に配慮したモノづくりを意味する言葉だ。持続可能かつ環境に効果的なデザイン手法を研究しているドイツの経営コンサルタント、MBDC社がこの考え方に基づいて設けたC2C(CRADLE TO CRADLE)認証(※)に、いま各国の企業から注目が集まっている。
「人と環境への配慮」と「ビジネス」を両立し、C2C企業認証・製品ゴールド認証を取得
C2C(CRADLE TO CRADLE)認証マーク
ヘアケア&コスメティックスメーカーのアヴェダ(本社:アメリカ・ミネソタ州)は化粧品会社として世界初、米国で2番目にあたるC2C企業認証を昨年取得した。
アヴェダは、1978年の創設以来、美、健康、地球環境は三位一体であるという企業ビジョンに基づき、数々の先駆的な取り組みを持続的に行ってきた企業だ。「人と環境への配慮」と「ビジネス」の両立を実現する経営ポリシーは、原料開発から調達、生産、パッケージ開発、販売、サプライヤーとのパートナーシップ、社会還元まですべてに徹底して貫かれている。フェアトレードによる持続可能な植物原料調達を20年以上前から行い、原料の約95%がオーガニック認定成分と業界を抜きん出ている。ミネソタの本社工場のエネルギーは100%風力発電で、敷地には土地の固有種の植林を行い、事業全体のフットプリントを極力抑えている。地球に還らないゴミを生み出さないという姿勢から製品パッケージにもガイドラインを定め、再生素材を全面的に採用している。
アヴェダが今回、C2Cの経営および製品ライフサイクル全般にわたる厳しい審査をクリアし、企業認証、そして製品認証として7つのゴールド基準を取得したのは、これまでの全社的な取り組みの積み重ねの結果によるものだ。
製品化まで10年。先住民族とのパートナーシップから生まれた口紅
パブリックリレーションズ部
黒岩典子部長
「アヴェダは創業当初から植物がもつ大きな力に着目し、世界各地からアーユルヴェーダの師、薬草の専門家、森林学者、民族植物学者や文化人類学者を集めて、あらゆる植物を対象に原料開発を行ってきました。そして、美や健康に優れた効果を発揮する成分は健康な土壌のもとでしか生まれないとの考えにより、オーガニック栽培による原料調達を支援しています。私たちが契約農家にオーガニック栽培への切り替えを積極的に支援してきたのは“土壌を守ることは地球を守ることにつながる”という創業者の考えからです」とパブリックリレーションズ部黒岩典子部長は語る。
アヴェダの製品に使われるエッセンシャルオイルや植物原料のほとんどが世界各地の小規模農家や先住民族から調達されており、先住民族が地球の生物多様性の守り手であるとの考えから、先住民族の保護も行っている。中でも、ブラジルのヤワナワ族とのパートナーシップによる口紅染料の開発は、アヴェダのポリシーを最もよくあらわす事例だ。ヤワナワ族がボディメイクに使用するウルクンヤシは優れた抗酸化力をもつ染料となる。一般的な口紅染料は金属化学製品だが、ウルクンヤシを使えば、唇に優しく、食べても安全な口紅ができる。
ブラジルのヤワナワ族。アヴェダの取り組みがきっかけとなり、ヤワナワ族はブラジル政府から広大な土地を返還してもらうことができた。
「私たちは、コミュニティ消失の危機を迎えていたヤワナワ族とフェアで長期的なサプライヤー契約を結びました。世界20カ国で発売される口紅の原料として20haのウルクンヤシ農園を作り、コミュニティの生計を支え、文化や伝統を尊重しながら、持続可能な原料開発を行った結果、10年後に口紅を発売することができました。容器は詰め替え可能で、再生紙のパッケージを採用し、エコリュクスな口紅として発売したこの製品は、既存製品の4倍の売上となりました。コスメの世界にそのような潜在的なニーズがあったことを実証したわけです。彼ら(ヤワナワ族)とのパートナーシップは、企業(アヴェダ)、地球環境、先住民の誰にとってもWin-Winを実現する最初のビジネスモデルとなったのです」
2003年発売のこの口紅は、企画とデザイン性が高く評価されて数々の賞を受賞。ヤワナワ族とのパートナーシップは現在も継続中で、コミュニティの人口は増え、若い世代には大学進学者も出ているという。以降アヴェダは、ヤワナワ族とのパートナーシップに留まらず、長期的な視点から様々なコミュニティとともにビジネスモデルの構築を実現している。
“ビジネスの手法を変えれば、世界を変えられる”
アヴェダが経営ポリシー、モノづくり、マーケット開拓、すべての点で新しいやり方を貫くことができたのは、常に持続的な関係性づくりを前提とした、ステークホルダーとのコミュニケーションを行ってきたからだろう。
「国連の先住民族サミットやCSR関連のシンポジウムに参加すると、中には“おたくは化粧品業界だからできる・・・”とおっしゃる方もいるのですが、決してそうではないと思います。ただ、今の日本の消費サイクルはあまりにも速すぎて、原料開発に10年もかかるアヴェダのやり方は実は合っていないのかもしれません。しかし、私たちは、社長のドミニク・コンセイユが言うように、“ビジネスの手法を変えれば、世界を変えられる”と信じています。皆がビジネスそのものを根本から見直していけば、日本の消費サイクルも変わり、不況から脱する糸口が見つかるのでは・・・」
実際に、何人かのアヴェダユーザーに“購入したきっかけ”について尋ねてみたところ、「理念に共感したからだ」と口をそろえた。消費者は、自らの消費行動が地球環境や社会に与える影響について、想像している以上に敏感になっているのかもしれない。そう捉えると、C2C認証が要求する厳しい基準は、10年先のビジネススタンダードとなることも充分考えられるだろう。