[2017年5月29日:掲載]

HIFU(ハイフ)技術を用いたという美容機器で、顔に熱傷を生じさせたエステサロン

エステサロンにて、薬機法*1違反の可能性のある機器を使用し、医師法違反の疑いのある施術を行い、危害が生じた事例における、販売運営会社とのあっせん交渉について紹介する。

  1. *1 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)

相談内容

 結婚式を間近に控え、小顔にするために、クーポンサイトで「高密度焦点式超音波」(HIFU)*2という新しい技術を用いた機器の施術を受けられるエステサロンのクーポンを見つけ、2,500円で購入し、店舗に出向いた。施術前に「腫れては困るが大丈夫か」と尋ねると、「大丈夫」と言われ、そのほかのリスク説明もなかったため施術を受けた。エステティシャンから「急ぎなので出力100でやりましょう」と言われた直後、顔面が急に熱くなり痛みが走った。施術後、頬に熊の爪で引っかかれたような3本のミミズ腫れができた。エステティシャンに傷について尋ねると「腫れはすぐにひく」と言われたが、不安になりすぐに病院に行った。医師から「熱傷になっている。赤みはひくが傷は残るかもしれない」と言われ、ステロイド剤をもらったが、傷は治らず、悲惨な気分で結婚式を迎えた。その後、エステサロンに「どういう施術をしたのか」と尋ねても、まともな返事がなく納得できない。エステサロンのホームページを見ると、この機器は前立腺がんの治療に用いられる技術を利用していることや、「脂肪に破滅的なダメージを与える」ことが記載されていた。そのような機器をエステサロンで使用してよいのか。

(30歳代 女性 給与生活者)

  1. *2 「HIFU」とは「高密度焦点式超音波」の略で、医療の分野ではがん治療等に用いられている技術である。


結果概要

 国民生活センター(以下、当センター)は当該相談を受け付けた消費生活センターと連携して、相談者からの聴き取り内容や使用された機器、施術内容等を検討したところ、以下の問題点が考えられた。

  • 医療の分野で前立腺がん等の治療に使用しているHIFU技術を用いたという機器を美容機器として使用し、痩身(そうしん)エステ等を行っている。
  • このエステサロンのホームページに「HIFU機器を使用し脂肪細胞に対して物理的に刺激・ダメージを与える」等と記載されており、身体への侵襲行為*3を行うことをうたっている。
  • HIFU機器の販売業者がこのエステサロンを運営している(以下、販売運営会社)。韓国の医療機器を一部改良した機器を使用し、ホームページ上に「脂肪に破滅的なダメージ」等、効能・効果をうたっているが、国内での医療機器としての登録は確認できなかった。
  • このエステサロンのホームページには、施術前・施術後の写真掲載や、「世界最高水準の最新痩身機器を多数取り揃(そろ)え、痩身エステの最高峰としてお客様をお迎え」「ダウンタイム*4のない安全な施術が可能」等、裏付けとなる合理的根拠が確認できない表示が複数みられる。
  • 施術前のリスク説明がなく、危害発生後も医師への受診を勧めていない。また、施術内容を確認しても明確な回答もできず、エステティシャンがこの機器の十分な認識を持たないまま施術をしていたようすが伺われる。

 以上の本件問題点について、関係省庁や都道府県、関係団体、医師、弁護士等に確認したところ、以下の2点の見解が得られた。

  1. (1)HIFU機器は、人体の表面を傷つけずに、超音波を体内の特定部位に集中させることで加熱し、熱変性を生じさせることができることから、HIFU施術は、医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある「医行為*5」に当たると考えられ、エステティシャン等がHIFU施術を行うことは医師法に抵触するおそれがある。
  2. (2)2015年2月「皮下脂肪を燃焼させる効果がある」としてHIFU機器をエステサロン等に販売した卸売会社の社長ら6人が、未承認の医療機器を販売した薬事法違反の疑いで逮捕されていることを踏まえれば、本件HIFU機器の販売等も薬機法違反の可能性がある。

 上記見解を踏まえ、販売運営会社とあっせん交渉を行った。販売運営会社は、「危害の発生はストレスや疲労、体調等の個人差が影響する。返金に関してはクーポンサイト運営会社から2,500円を返金してもらえばよい。それ以上の対応は行わない」と強硬な姿勢であったが、粘り強く交渉した結果、販売運営会社から見舞金も含めて約15万円を支払うとの提示があり、相談者もその金額に同意したため、合意となった。

  1. *3 生体に傷害を与えること(野口忠編『栄養・生化学辞典(普及版)』朝倉書店、2010年)
  2. *4 手術後の腫れや痛みなどがひいて、手術前の生活を取り戻せるまでにかかる時間のこと。
  3. *5 「医行為」とは、「当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」と解釈されており、反復継続する意思をもって行う医業は、医師でなければなしてはならないと定められている(医師法第17条)。


問題点

 エステティックの現状として、施設(エステサロン)や施術者(エステティシャン)に公的な基準や規制はなく、自主規制を設けている業界団体への加盟も義務づけられていない。HIFU施術のように次々と新しい施術が行われているが、その施術の是非の検討も不十分であり、実際に危害が発生している現状がある。

 消費生活センター等でのエステティックサービスに関する相談対応において、エステサロン等で行うことができる行為なのかという問題意識を持ちながら、機器名、施術内容の聴き取りを行うことで、関係機関への情報提供や連携、さらには違法性の判断につながる可能性が高まる。そして、その積み重ねが消費者トラブルの減少につながると考える。




ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。